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アートを軸に人が集い、
宮古の文化を感じる場所に

ギャラリー「PALI」
石川直樹、新城大地郎

宮古島にゆかりのある写真家、石川直樹と宮古島出身のアーティスト、新城大地郎。2人が中心となって宮古島に5月14日(土)、ギャラリー「PALI(パリ)」がオープンする。変化の激しい宮古島にあって、アートの周りに島の内外から人が集い、文化や歴史を見つめ直すきっかけをつくる。それがこの場所での彼らの新しい表現だ。

06/15/2022

ー 宮古島にギャラリー「PALI」をつくろうという話はいつ頃から始まったのでしょうか?

新城大地郎(以下、大地郎) 僕が2019年夏頃にロンドンから宮古島に戻ってきて、拠点にしようと思った時から考え始めました。その頃、宮古島には展示をする場所がなかったんです。PALIの場所の前身は僕のアトリエだったんですが、借りる前にそこを一度、簡単なギャラリーにしたんですよ。そうするといろんな人が来てくれたし、石川さんともその時に初めて会いました。アトリエとして使い始めてからも、友人やいろいろな人が訪ねてきて、その場所がサロンみたいな感じになりました。宮古の文化や歴史、アートや音楽の話もしたり、すごく楽しかったんですね。僕もそこで作品をつくっているので、エネルギーの交換ができるというか。建物がなくなると決まった時に、今後もそういったサロンのような場所が欲しいな、という思いがありました。石川さんも宮古島に美術館をつくれればという構想をかなり前から持っていたので、石川さんともやりたいねって話していました。

石川直樹(以下、石川) 大地郎君がアトリエとして借りる前は、ウエスヤというギャラリー兼カフェだったんです。僕はそこで2015年頃に個展をしました。そのずっと前から、写真家の東松照明さんを始め、いろんな人が展示をやっていて、歴史がある場所です。それが今、PALIとして生まれ変わって、さらなる発展を遂げようとしているっていう流れが面白いと思っています。

ー PALIという名前の意味は?

大地郎 パリは、宮古の方言で「畑」という意味です。みんなで耕していこう、循環させていこうよ、といった意味を込めています。展示を見にくる人以外でも来やすい振れ幅を持った場所にしたくて、ギャラリーに併設するスタンドでコーヒーとワインを出して、定期的にマーケットもやっていきます。


ー 石川さんも宮古にゆかりがあるそうですね。よく訪れるようになったのはいつ頃からですか?

石川 初めて訪ねたのは15年近く前だったと思います。写真集「ARCHIPELAGO」(2009年発表)を出した頃とかも頻繁に宮古島に通って写真を撮っていました。島の中は本当にいろんなところに行ったし、最近は旅人と住む人の間ぐらいの目線で見られるようになってきたかな。そういう視点でいろんな人をつないでいけたらいいなと思っているんです。

ー 2人がアーティストでありながらギャラリーもやるというのは、なかなかないケースですね。

大地郎 アーティスト・イン・レジデンスが、軸になるかもしれないです。僕自身がいろんな場所に行って、現地の風景やカルチャーからインスピレーションをもらって、その場所で作品をつくることをしているんですが、現地に行くと知らないことだらけで、新しい自分を発見させてくれるというか。その逆もしかりで、他の土地から来たアーティストが、僕たちが見ているようで見ていなかったところを宮古で切り取って表現することは、僕にとってもすごいエネルギーになるし、宮古の人にとってもいろんなきっかけと気づきを与えてくれるだろうという、確信があったというか。バブルと言われるほど今すごく変化が激しい宮古の環境について、立ち止まって考えるきっかけを与えられる気がしたんです。


ー 石川さんはこのギャラリーをやっていく上で、どんな希望や期待を持っていますか?

石川 いろんなアーティストが来て、宮古島にみんなが抱いているイメージをひっくり返していくような新しい作品が生まれるのをすごく楽しみにしています。やっぱり内地の人は宮古島に対して、海と自然と、みたいな感じのイメージを持っていますけど、もっと複雑で多様な、しかも響き合う歴史や文化があって、いろいろ動いている人たちがいるんだということをここから発信できたら、とてもいいですよね。

大地郎 宮古島もシティって言われる場所と、田舎のところに若干分かれるんですけど、ギャラリーの場所は本当にその中心部です。いろんな人が交差する場所にあるので、地元の人もビジターも触れることができる可能性があるのがいいなと思っています。

石川 あと、宮古から東京の距離よりも宮古から台湾の方が近いですし、アジアに向けて発信できる場所になったらいいなあ、と思っているんですよね。台湾やフィリピン、海洋アジアの国々とのつながりの中で宮古を考えていく場所にもなると思います。日本の中だと南の端なんですけど、海洋アジアの中で言うと宮古は本当に上下左右あらゆる流れの中の面白い位置にあるんじゃないかって。

ー 展示についてはアイディアを出し合いながら決めていく感じでしょうか?

大地郎 あまり作品のジャンルにとらわれずに、写真やペインティング、彫刻とか、いろんな表現ができたらいいなという話はしています。作品の展示以外にもライブやブックフェア、トークイベントを開催したりしていきたいですね。


ー 2人でギャラリーをやる面白さは、どういうところに感じていますか?

石川 それぞれのジャンルの人脈もあるし、目線もちょっとずつ違うし、そういうのをミックスしていければいいかなと思っています。

大地郎 そうですね。それぞれが表現者であるっていうのは、面白いかなって。キュレーションするけどキュレーターではないし、その分野の人から見たらクエスチョンマークもあるかもしれませんが、そこはそこで面白がってほしいなと思います。

オープニングエキシビションは、新城大地郎の祖父で、宮古島の歴史・民俗学の記録編集に尽力している禅僧、岡本恵昭の写真展「SUDERU」を開催

ー 最後に、お二人から伝えておきたいメッセージはありますか?

石川 僕はぜひ島に来てほしいっていうのがまず一番。ギャラリーを見にきて、宮古島で、それぞれの時間を過ごしてほしいです。

大地郎 来てほしいかな、本当に。沖縄という一つのくくりではなくて、宮古という場所をPALIを通して違う角度から文化を感じて、それぞれ持ち帰って、視点を増やしてほしいなと思っています。


石川直樹 Naoki Ishikawa
1977年東京都生まれ。2008年、『NEW DIMENSION』『POLAR』で日本写真協会新人賞、講談社出版文化賞を受賞。2011年『CORONA』で、土門拳賞を受賞した。著書に開高健ノンフィクション賞を受賞した『最後の冒険家』ほか多数。近刊に『アラスカで一番高い山』(福音館書店)。2020年、写真集『EVEREST』『まれびと』で日本写真協会作家賞を受賞した。
http://www.straightree.com


新城大地郎 Daichiro Shinjo
1992年沖縄県宮古島生まれ。静岡文化芸術大学空間造形学科卒。禅や仏教文化に 親しみながら幼少期より書道を始める。2017年に初個展『Surprise』でアーティスト活動を開始。沖縄の精神文化を背景にオールドファッションな書道を飛び越え、身体性、空間性を伴ったコンテンポラリーな表現を追求する。
https://www.daichiroshinjo.com/


PALI Gallery(パリギャラリー)
宮古島にて、国内外問わず様々なジャンルのアーティストをキュレーションした展示会を行う。写真、彫刻、工芸、絵画、音楽などジャンルや思想にとらわれない表現の場。アーティスト・イン・レジデンスでは島外アーティストを招へいし、滞在制作から作品展示までを行う。2022年5月14日(土)オープン。
PALI Stand (パリスタンド)
PALI Gallery の入り口に併設したコーヒー/ワインスタンド。
www.paligallery.com