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Equilibrium Cycleworks

エクイリブリウム サイクルワークス

絶えず進化を続けるオーダーメイドの自転車工房

多摩川沿いの奥まった裏通りには、たくさんのまち工場が軒を連ねている。大田区周辺の街並みは目まぐるしく変化しているが、今でも昔ながらの職人たちが働くまち工場は元気一杯だ。このエリアで異彩を放っているのが、オーダーメイドの自転車工房、エクイリビリウム・サイクルワークス。ラトビア出身のオーナー、ウラジミール・バラホブスキーが営むこの工房は、なんともユニークな存在だが、ウラジミール自身が日本でフレームビルダーになった経緯も、この工房に劣らずユニークなものだ。

10/28/2020

ウラジミールがハンドメイド自転車のクリエイターになったのは、度重なった偶然の出来事からだった。ビンテージのイタリア製レース用自転車を復元することから、自転車のカスタマイズにははまった彼は、日本でフレームビルディングのコースの受講を希望したが、当時は人気が高く、数年先まで予約がいっぱいの状況だった。しかし、ウラジミールは、めげずにチャンスを求めてリサーチを続け、独学で技術の習得に没頭していた。そんな日々が続いていた頃、地元で開催されていたワークショップでNJS(日本自転車振興会)認定フレームビルダーとしてリスペクトされていた大瀧政美と出会い、おそるおそる彼に教えを乞うことはできるかと尋ねた。意外にも大瀧氏はウラジミールの申し出を快諾し、レッスンに必要な道具を伝えた。ウラジミールは、大瀧氏の仕事を何時間も見つめながら、ツールの使い方をつぶさに観察し、その細やかで、美しい仕事ぶりに魅了された。

手始めに2人は共同でフレームを完成させた。その後、ウラジミールは独力でフレームの製作を開始したが、当時は金銭的に余裕がなく、作業に必要な道具をすべて揃えることができなかったので、実践面でテクニックを存分に発揮できないストレスを抱えていた。それでも、パイプの溶接など、何時間も同じ作業を繰り返すうちに、徐々に自分の技術に自信を持てるようになり、ついに最初のフレームを完成させた。独力でフレームの製作を始めた当初は、すべてのパイプを手作業で切断していたので、鉄の特徴をダイレクトに感じることができたことは、彼にとって貴重な経験となった。

自らも筋金入りのサイクリストであるウラジミールは、ワークショップをスタートした際、サイクリストの意見は何よりも重視するべきであると感じていた。彼はさまざまな意見を参考にしながら、独自のフレーム・ビルディングのスタイルを構築し、店名の「エクイリブリウム」(平衡の意味)のロゴが誇らしくフロントのパイプに取り付けられている通り、バランスの取れた、パーフェクトなサイクリング・エクスペリエンスを提供できる自転車をクリエイトできるようになった。ウラジミールは、絶えず成長を続けながら、過去の体験を反芻し、自らに疑問を投げかけながら、これまでの仕事に対する改善ポイントを探し、ルーティーン的な仕事を避けるように心がけている。彼のこのような性格は、自転車作りに見事に反映されている。

2018年、ウラジミールは数ヶ月間、自転車の受注を一時中断し、さらにハイレベルなビースポーク自転車を製作するためにTIG溶接の習得に努めた。全身全霊で仕事に臨み、飽くなき情熱を持った向上心の塊のようなウラジミールは、現在自転車の究極の素材であるチタンのフレーム作りに取り組んでいる。

「びっくりするような乗り心地だよ。この素材はサイクリストにとって、とても魅力的だ。なんとも軽やかに漕ぐことができて、足をペダルにかけると自然に走り出す感じ。サイクリストのわずかな動きをすべて反映してくれるので、まるで空中遊泳しているようなサイクリングが味わえるんだ。僕がこの仕事でずっとサイクリストに届けたいと思っていたことは、最高に気持ちのいい、思わず感動するようなサイクリング体験なんだよ」 。

ウラジミールは、絶えず新しい発見を求め、同じ自転車は二度と作らず、一台一台にビルダーとしての彼が学んだことを投影させて、サイクリストがこれまで味わったことのない、素晴らしいサイクリング体験ができる自転車を今日も作り続けている。

EQUILBRIUM CYCLE WORKS
クラシックなラインと最新のテクノロジーを組み合わせ、一生ものの、完璧なパフォーマンスの自転車をつくり上げる。