雲南ではキノコは単なる食べ物ではなく、この世界を見せてくれる存在でもある。夜中に芽を出し、朝には姿を消し、季節が巡ってくればまた姿を現す。現れては、消えて、再生する。彼らは、それが生命のリズムだと教えてくれる。今号では、「みんげい おくむら」の店主・奥村忍さんと、中国・雲南省のキノコの山々を巡る旅に出た。市場を歩き、ありとあらゆる形や色をしたキノコを味わい、森の賢者たちとともに生きる人々に出会った。

昆明から大理、麗江から香格里拉へ。僕らは自然と文化が美しく溶け合う風景に遭遇した。
昆明の24時間営業のキノコ市場では、籠から溢れんばかりの干巴菌が並んでいた。その側には、切ると白い液体を出す奶浆菌、鮮やかな青色で、生食は危険だが調理すればおいしい見手青、肉厚で燻製のような香りを放つ鶏縦。特に汚れを落としにくい鶏縦は、根っこが絡まったように山積みになっていた。売り手はキノコの傘をひとつずつ磨き上げ、屋台はさながら森のアートギャラリーのようだった。
山のキッチンでは、鉄鍋のなかでこうした宝物が煮立っていた。竹蓀と繡球菌から出るクリーミーな出汁と、松と雨が混ざり合ったような香りが漂う。しかし、キノコが満たすのは食欲だけではない。低カロリーでありながら高タンパク質、ミネラル、ビタミンB群を豊富に含み、免疫システムを強化し、炎症を抑え、心と身体を養う。その成分は医薬としても用いられ、民間伝承と現代科学が結びつき、医食同源が最高の食であることにも気づかせてくれた。

3人の“キノコの女王” —小麗女王、登舟女王、真好女王が、僕らをこの生きたネットワークへと案内してくれた。彼女たちは、キノコ狩りや料理、キノコ色素を使った染色など、それぞれに異なるクリエイティビティをもっている。そしてともに、森と文化、工芸をつなぐ、目には見えないイマジネーションの網を編み上げているのだ。
魔除けとして木版に刻まれた甲馬が目に見えない世界を守護しているように、森のなかに隠れた菌糸の網も、目には見えないところで根と木々を結び、人々と土地をつないでいる。そして、刺繍が施された布や銅鍋、籠といった手仕事にも、こうした叡智が宿り、深いところですべてがつながっていることを思い出させてくれる。
アーティストのマエダユウキによる今回の表紙は、この世界観を完璧に表している。上海発のアウトドアブランド「An Ko Rau」を身にまとった奥村さんが、キノコの森に分け入り、目に見える世界と見えない世界の狭間を歩いている姿だ。
ようこそ、雲南の森とキッチン、イマジネーションを巡る魅惑のキノコの旅へ。一歩、また一歩と踏み出せば、すべての生命をつなぐ目には見えない世界へ、キノコが僕らを近づけてくれる。
