“ロングトレイル”革命が起きている。世界中のハイカーや旅行者は、もはやチェックリストを完成させるために最高峰を目指すのではなく、“ロングトレイル”を歩くマインドフルな探検を求めている。今でもアメリカのパシフィック・クレスト・トレイルやニュージーランドのテ・アラロア、スペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路など、世界有数のロングトレイルを目指す日本人ハイカーは少なくないが、一歩先を行くトラベラーは、ここ日本が「ロングトレイルの国」であることを発見し始めたばかりだ。

僕が考えるロングトレイルとは、徒歩で少なくとも3日を要するトレイルで、その土地の自然と文化、両方に触れられる道であること。日本のロングトレイルには、いくつかのバリエーションがあって、旧東海道や中山道、鯖街道や山の辺の道など、人や物資を運ぶ生活道として整備された道もあれば、松尾芭蕉の「奥の細道」のように、東京から東北地方への放浪の旅から生まれた道、坂本龍馬が歩いた「脱藩の道」といった道もある。
また、新たなロングトレイルのカテゴリーとして、海外で見かけるリクリエーションルートに、日本的な要素を融合させたトレイルもある。あまとみトレイル、みちのく潮風トレイル、僕が今、構想しているカツオトレイルなどがそれにあたる。そして、もうひとつ、最後に紹介するのが、巡礼の道である。歴史と伝統を誇る熊野古道や四国遍路などのトレイルだ。長く人々に歩かれてきた道を、僕らは現代のULハイカーや旅行者のために「禅トレイル」と名づけた。

今号では、1,250年前に弘法大師・空海によってつくられたといわれる1,200kmにもおよぶ周回ルート「禅トレイル」を、歌人の伊藤紺さんと歩く。四国八十八ヶ所霊場(寺院)は、ハイカーが悟りを開くまでの道のりにある88のチェックポイント。四国4県は「徳島=発心」「高知=修行」「愛媛=菩提」「香川=涅槃」とされ、ハイカーが涅槃に到達するまでにたどり着かなければならない旅の過程を表している。
このトレイルには、伝統的な巡礼の道のあらゆる側面とすばらしい自然、身体的なチャレンジに加え、日本の食、歴史、地域文化への深い探求も含まれている。本物の日本と、精神的に満たされた自分を持ち帰ることができる旅。それこそ、日本のロングトレイルを歩く醍醐味というわけだ。
