豪快な大地の営みを、体の底から感じて
海中の巨大プレートがぶつかり合うことで火山活動が生まれ、陸上の地形は形成されていく。ここ霧島錦江湾国立公園でそんな大地の営みを感じるハイクに挑戦した。大きく山麓、山岳のふたつに分かれた幾多のトレイルコースのなかで、僕らが歩いたのは山岳コースの「えびの高原池めぐり」。山間盆地であるえびの高原にある3つの火口湖を巡る緩やかなコースだ。

火口周辺に噴出物が溜まったことで形成された六観音御池、以前はスケート場として開放されていた白紫池、初夏には紫色のミヤマキリシマが一面に咲く不動池などを次々と巡る、飽きさせない道中だった。歩く途中では粟野岳や桜島を望むこともでき、この一体を形成する豪快な大地の隆起を存分に味わえる。同時に植物の植生も興味深い。
通常であれば時間の流れとともに火山噴火から裸地、ススキの草原、アカマツ林、ブナやミズナラ、アカガシの林などへと遷移していくはずの植生が、活発な噴火によって裸地に逆戻りしてしまった場所などが目につく。春には、このえびの高原にしか自生しないノカイドウの淡いピンク色が見ものに。火山活動によってリセットされてしまう植物たちも懸命に命をつないで歴史を重ねている事実を、ほんの少しのウォーキングでも垣間見ることができる。


六観音御池展望台のウッドデッキからは、ひときわ存在感を放つ霧島山の最高峰、が見渡せる。その青々とした山肌はコバルトブルーの湖面と絶妙のコントラストを演出し、歩く者の記憶にその彩りを刻む。この池巡りのコースは林野庁「森林浴の森百選」にも選ばれ、静謐な森の雰囲気と荒々しい大地の起伏、美しくなめらかな湖面が印象的な極めてアーティスティックな道程だった。
地産のおいしいものを食べ、そこに暮らす人とコミュニケーションするのに加え、「静かに歩く」ことでようやく、その土地を知ることができるのだと、つくづく僕らは痛感した。


合計2時間、総歩行距離約5.2km。3つの火山湖を楽しみながら、四季の変化に富む周囲の自然を堪能できるコース。季節や時間によって色彩を変化させる湖面が最大の見もの。秋には紅葉が湖に映し出され、得も言われぬ美しさに。
えびのエコミュージアムセンター
宮崎県えびの市大字末永1495-5
TEL: 0984-33-3002

道中のエネルギー補給には、厳選したカカオときび砂糖だけでつくられる「kiitos」のチョコレートとそばまんじゅう。旅の最後に、国立公園の壮大な景色を眺めながら、黒木本店・尾鈴山蒸留所の「OSUZU GIN」で乾杯!