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DANNER × PAPERSKY

OUTSIDERS

あらゆるカルチャーが交差する町、軽井沢のNEWガイドマップ

外遊びを楽しむ人々のフィルターで町を捉え直したら、いつもの風景はガラリと変わるかもしれない。その土地の風土がアクティビティの視点で浮き彫りになり、新しい文脈で文化や歴史、地域の人々が姿を現すからだ。DANNERとPAPERSKYがコラボレートする「OUTSIDERS」とは、エピソードごとにさまざまな土地を訪れ、外遊びを楽しむ人々の目線で旅をし、オリジナルのマップを制作していくプロジェクトだ。

10/23/2023

キャベツやレタスなどの高原野菜の産地である浅間山の山麓。潔と萌の畑は自然農法によって、野菜から雑穀類まで多くの作物を育てている。

浅間山の山麓、標高約1,000mの高原に広がる長野県軽井沢町。国際的な避暑地であり、日本有数の観光地として独自の文化を築いてきたこの町は、近年、都市部からの移住者や二拠点生活者の新しい住処として、脚光を浴びている。この地は古くから宣教師や別荘人、移住者など、ある種のアウトサイダー的な人たちがローカルと混じり合いながら形成されてきた。再びその流れが起こることで、新旧が融合した新しい町づくりが加速している。

今回の旅の案内役であるアーティストの船山改(あらた)と、クライマーの船山潔(いさぎ)。そして、船山潔のパートナーであるアーティストの中瀬萌の3名のアテンドによって足を運んだのも、まさに軽井沢の新しい側面を垣間見させてくれるような場所だ。

日本の伝統的なモチーフであり、クライミングにおいて命を預ける「縄」をモチーフにした作品などが古道具とともに並ぶ、改の自宅兼アトリエ。


暮らす人のフィルターを通して見た軽井沢という町の魅力


「子どもの頃は、自分たちが暮らす土地の特異性にあまり気づいていませんでしたが、大人になった今、改めて軽井沢を捉え直すと、歴史的にも外国の文化と日本の文化、都会的なものと郷土的なものが混在していて、どの方向にも往来できる町なのだと感じるようになりました。フィールドをみても、自然と町中はクイックに移動できる程よい距離感にあります。“対照的なカルチャーを縦横無尽に行き来できる町”、それが軽井沢のユニークなポイントなのかもしれません(船山改)」

上信越国立公園内にある標高1,200mの立地にあるキャンプ場『ライジングフィールド軽井沢』。アスレチックや川遊び、自然散策などキャンプ以外の自然体験も充実している。

長野県内のフィールドを中心に、山のアクティビティをフルアテンドするガイドサービス〈Gen.〉を主宰する弟の潔は、このエリアの自然についてこのように語ってくれた。

「アウトドア・ガイドという職業柄、軽井沢町単体ではなく、浅間山の山麓一帯としてエリアを捉えているのですが、まずこの地域全体の最大の魅力は、活火山である浅間山が生み出した自然の豊かさ、そのバリエーションだと思います。軽井沢は涼しくて霧深く、幻想的な森に囲まれた町です。一方、車で浅間サンラインを御代田、小諸方面に抜けていくと、わずか10分程度で視界が開けてくるのと同時に、空気が切り替わる瞬間があるんです。実際に広大な佐久平に近づくにつれ、晴天率も上がっていき、隣り合わせの町なのに気候が違うんです。この地域に3,000m級のアルプスはないですが、独特な地形の変化に富んでいるんです。軽井沢を拠点に、車やローカル電車に乗り、近隣のエリアへの移動を楽しむのもこの地域ならではの楽しみ方かもしれません(船山潔)」

遊び慣れたフィールドのひとつである、小浅間山に登る一行。標高は1,655mで、峰の茶屋登山口から約50分程度で登頂できる。

この土地で育った彼らとは境遇が異なる、もう一人の案内役である中瀬萌。神奈川県藤野町で生まれ育ち、現在は藤野と長野の二拠点で生活を送る彼女はこの地で暮らすようになり、軽井沢という土地が持つ独特の魅力を発見することになったという。

「私はこの地域に住むまで、ある意味では軽井沢を誤解していたのだと思います。都会から来るお金持ちの人たちを相手にしている町で、それにまつわる文化が集中している場所、というのがもともと抱いていた印象でした。その先入観が邪魔をして、本来の軽井沢の魅力に気づけていなかったんですね。確かに地方の小さな町としては都会的なお店は多いんですけど、それは自分の感覚次第で全方向に選択肢を持てる町であるとも言える。つまり私の視点によって、いろんなものと出合うことができるんです。その懐の深さは、とても豊かだと感じるようになりました(中瀬萌)」

現代美術家で彫刻家でもある父を持つ萌。溶融した蜜蝋に色素を混ぜ合わせる絵画技法を独学で習得し、自然の中で得たインスピレーションをキャンバスに落とし込む。


アートやファッションと並列に自然を楽しめる佇まい


今回、訪れた先で嬉しいサプライズがあった。それは『コーヒーハウスシェーカー』オーナーである黒澤一進さんが、これまで愛用してきた歴代のDANNERブーツたちと一緒に出迎えてくれたことだ。フライフィッシング、スノーボードなど、アウトドア・アクティビティをコアに楽しむ黒澤さんは、クルマから身につけるものまで独自のこだわりを貫いている。そんな彼にとってDANNERのブーツは、あらゆるフィールドを共にできる頼りになる相棒のような存在だという。

アートやファッション、そしてフィールドをシームレスに行き来できる軽井沢という町の特性に、DANNERのブーツが持つファンクションは見事にシンクロする。実際に、案内役の3名はトレッキングからキャンプ、町歩きまですべてのロケーションでDANNERブーツを履きこなしてくれた。

「DANNERのブーツというと、クラシックなトレッキングシューズという印象が強かったのですが、実際にコーディネートしてみたら、アメリカンでもヨーロピアンでも、どんなテイストにも合わせやすかったんですね。ファッションアイテムとしての汎用性の高さに気づきました(船山改)」

「山を歩いてみて、広い意味でアウトドアで遊ぶ靴としてはとても優れているなと思いました。とくに重い荷物を背負って歩くときは、ソールはこのくらいの硬さだと安定するので、足元をいちいち見なくても歩けます。これまで靴というと、一つのスポーツやアクティビティとの相性でみていたことが多かったように思います。一方でDANNERのブーツのようにオールマイティにフィールドを横断できる靴こそ、時代を越えて永く履き続けられるんだなと思いました(船山潔)」

「山道具においても、日常で使用するものにおいて、大切にしたいことが3つあるんです。それは長い間使い続けることのできるタフさ、主張しない素朴さ、自分の身体と一体になるような心地よさ。DANNERの魅力は、そうした点にとても当てはまると思いました。ソールをリペアすれば何十年も履き続けられ、オーセンティックなデザインはとにかく品の良さも強さもあり、飽きずに履くほど自分に寄り添ってくれるものなのだと思いました(中瀬萌)」

誕生から30年以上経つ「マウンテンライト」のブラウン(写真上)と、ダナーを象徴するアイテムである「ダナーライト」のブラックとカーキ(写真下)。どちらも防水・透湿性能に優れたGORE-TEX®を採用し、ファッション性と機能性を兼ね備える。


観光客も地元民も出入りする、内と外が交わる場所


今回、彼らがピックアップしてくれた場所には、いくつかの共通点がある。「観光客だけでなく、ローカルの人が出入りする場所」であること。それと「会いたい人に会えるお店」だということだ。

『コーヒーハウスシェーカー』の黒澤一進さんも、コモングラウンズ内にある『PUBLIC 食堂』のオーナーである山﨑元さんも、この地域のコミュニティにおいてハブとなっている存在だ。自家製酵母のパン工房と雑穀菜食のカフェ『緑友食堂』は、店主の長谷川恵美さんのネットワークを中心に、イベントやワークショップを開催するなど、ローカルコミュニティが育つ複合的な場所となっている。

ヴィーガンカフェ『緑友食堂』の店内の様子(写真1段目)。『コーヒーハウスシェーカー』の店主・黒澤一進さんとフライフィッシングに訪れた際のワンシーン(写真2・3段目)。『PUBLIC 食堂』のロゴデザインは、船山改が手がけている。(写真4段目)

「居心地が良かったり、美味しかったり、提供されるものに共感しているというのはもちろんなのですが、僕らにとってお店にいくということは、人に会いに行くということでもあるんです。店主の生き方を垣間見させてもらう時間に、何かを購入するという行為がくっついているような、そんな感覚なんです。これは軽井沢に限らなくて、どこの土地へ行っても、結局、誰かに会いに行くために、そのお店に行っている。みんな自然みたいな人たちで、威張ってないし、欲張りでもない。自然体でいる人たちと交流できると、自分たちも自然のままでいられる。そんな時間が好きなんだと思います(船山潔)」。

10代の頃から船山兄弟が通う『カウボーイズアンドインディアンズ』。インディアンジュエリーやベルト、カウボーイハットなどを取り揃える(写真2段目)。数多くの美術館が点在する軽井沢。国内外問わず、世界の第一線で活躍する作家やジャンルレスな現代美術を斬新な切り口で紹介する『軽井沢ニューアートミュージアム』には、定期的に足を運んでいる(写真3段目)。

また、ヴィンテージ&セレクトショップ『メゾン・マ・マニエ』や蕎麦屋の『東間』がそうであるように、彼らの同世代が店主や店長を務めるお店が徐々に増えている。「今の軽井沢は地元の人が何かを始められる場所になってきた」そんな空気感を幼少期からこの土地の商人たちを見てきた船山兄弟は感じ取っているそうだ。少しずつ世代が代わり、新しい軽井沢の文化を作っていくようなお店が増えていくのかもしれない。

2022年春にオープンしたユーロヴィンテージと雑貨なども扱うセレクトショップ『メゾン・マ・マニエ』の店主・島田龍太さんも、石臼挽き蕎麦『東間』の店長・東間那流さんも、船山兄弟と学生時代をともに過ごした仲間たちだ。

「人によってお店は作られますよね? 自然やその土地の文化を大切にしている店主の方が多いからこそ、自然との調和を感じられるお店や、歴史を受け継いでいくような建造物のお店もこの町には多く残っています。軽井沢でそんな自然や文化と溶け込んだお店を発見することは、森の中で面白い形をした草木を見つけるのと同じくらい、面白味があることだと思いますね。(船山改)」



KARUIZAWA Guide

船山​改 Arata Funayama
アーティスト/フォトグラファー。長野県生まれ、軽井沢育ち。ファッションの世界でパターンナー、デザイナーとして活躍した後、現在は小諸市に自身のアトリエを構える。2021年から日本の伝統工芸・技術の力が持つ環境保全への可能性に着目し、それらを使って持続可能な社会を実現するための方法を模索し始める。その一環として、福島県三島町と桐のライフスタイルブランド『桐屋』、長野県軽井沢町のインテリアブランド『KUSABI KARUIZAWA』などをプロデュース。その他、写真・動画撮影も行っており、プロのスノーボーダー、サーファーなどのアスリート撮影も手掛ける。

船山​潔 Isagi Funayama
プロフェッショナル登山家・クライマー・スノーボーダー。長野県生まれ、軽井沢育ち。高校卒業後、単身渡仏。国際登山ガイドになるために、一年間フランスアルプスなどの過酷な山岳環境における高度な登山・登攀・バックカントリー技術を修練する。一年を通して山で活動・生活しており、雪山登山や氷瀑登攀など、過酷な環境での経験も豊富。ロッククライミング、登山、バックカントリー、キャンピング、スケートボード、サーフィン、釣りなど。現在は長野県を中心に、山の環境とお客様の要望に合わせて自然で遊ぶ一日を提案するフルアテンドサービスのGen.を主宰。ライフワークとしてアウトドアで親しんだ自然を守るため、自伐型林業などの環境活動にも取り組んでいる。

中瀬萌 Moe Nakase
アーティスト。里山である神奈川県藤野町で生まれ育つ。2014年から独学にて、蜜蝋を用いた絵画の制作を始める。「地の旅」テーマに掲げ、自身が山・海へと入っていくことでの小さなこころの変化や、繰り返しながらも変化してゆく自然の世界を観察し瞬間・直感的に記憶と交差するような情景を抽象へと落とし込み描いている。現在は長野と藤野の二拠点を行き来し、自然とともにある暮らしの中で、制作を行なっている。

DANNER
1932年創業のアウトドアブーツブランド。1950年代にはアメリカで初めてVIBRAM®を使用した登山靴を製作。1979年には世界初のGORE-TEX®ブーツであるダナーライトを開発。現在はマウンテンブーツからミリタリー、スニーカーまで各種ラインナップされている。
text | Ryo Muramatsu photography & videography | Masaru Furuya