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C.W. ニコル

自然を愛し、日本を愛したマルチタレント

C.W.ウィリアム・ニコルは、環境保護活動家、作家、酒造家、ミュージシャン、イラストレーター、プロレスラーなどさまざまな顔を持ったマルチタレントだった。彼のすべての活動において、通底していたのは、自然への揺るぎのない愛だった。

01/05/2021

ニコルは、英国ウェールズ州の出身。1962年に空手を学ぶために初来日。その後、カナダ水産調査局北極生物研究所の技師、エチオピアの国立公園の猟区管理人など、世界各地でさまざまな仕事を転々としたのち、再来日。1986年、長野県に2ヘクタールの里山の一部を購入し、日本に居を定め、1995年には、日本国籍も取得した。

ニコルは、自分の人生は森林から始まったと信じている。森林は、彼にとって、魂と音楽の源だった。近年は深刻な森林破壊が進んでいるものの、国土の67パーセントが森林地帯であるこの国にニコルが惹かれたのも容易に理解できる。

2013年の TEDxTokyo で、ニコルは森林がこのままの状態が放置されたら生命体系に重大な危機が生じると警告している。また、花粉症を引き起こす、管理が行き届いていない輸入針葉樹についても危惧を抱いていた。彼が土地を購入した時代、日本の国土の原生林の面積は全国土の2%以下(ほぼ千葉県と同じ広さ)だった。ニコルは、日本を本来の美しい姿に留めるべく、30年間にわたり尽力した。

ニコルによれば、彼が所有している森は豊かに生い茂り、熊、蝶、取り、トンボ、蛇たちの餌となる137種の植物のほか、識別不明な植物、動物も生息しており、実にカラフルな森らしい。一方、隣の森は手入れが行き届いておらず、どんよりとした冴えない外観。この著しいコントラストが印象的だ。

2012年、ko-e magazineのインタビューでニコルは、1994年に東京環境工科専門学校の名誉校長に就任し、今後、国立公園管理者の育成に積極的に取り組んでいく所存であることを述べている(ちなみに日本と同等の国立公園を所有するニュージーランドでは、国立公園管理者育成システムが1952年に確立されている)。このような教育体制を整えることで、森林保護により関心が持たれるようになり、原生林の美しさを日本人が再認識する機会が増えることになるだろう。

さまざまなフィールドで才能を発揮したニコル。私たちは彼を決して忘れないし、彼が私たちに伝えてくれた自然の尊さをずっと心に留めておくことだろう。ジンを飲むとき、空手の練習をするとき、そして、森を訪れるとき、私たちはそこに彼を感じる。そして、私たちは自然を蘇らせる力を持ち、自然には私たちを再生させるパワーがあることを思い出させてくれる。