丸みのあるぼってりとした風合いと砂気の多い陶土によって生まれる質感。素朴で温かみのある益子焼は、「用の美」を感じられる日常使いの器として広く知られている。
佐々木康弘は益子の焼き物の学校でその基礎を学び、陶芸の道に入った。一から形をつくり、色をつけて焼き、販売する。最初から最後まで自分で完結できる、そんな仕事がしたいと考えていた佐々木にとって、陶芸は理想に合うものだった。学校を出た後、小さな工房を構え、試行錯誤を繰り返しながら、自らが思い描くうつわを追い求めてきたという。「出来上がったものも好きなんですが、作業自体が飽きなくて…。ずっとやっていたいなと」。うつわをつくり始めて16年。穏やかにこつこつと手を動かす姿が印象的だ。



柿釉、糠白釉、青磁釉、並白釉、本黒釉といった益子伝統の釉薬と地元の土を用いてつくられる佐々木のうつわ。「益子焼と呼べるものをつくりたいと思っています。気負いなく使えるものがいい」。益子の素材を使うと、自然とあのぼってりとしたフォルムになるという。益子の伝統と風土が、棚に並んだ出来立てのうつわにも確かに宿っていた。

