東京都心から電車で約1時間半。埼玉県西部の山々に囲まれた秩父地域の静かな川辺で、うだまさしは自身で改築した古民家に家族とともに暮らしながら、その庭先に小さな工房を構えている。
もともとは家具制作を中心に据えていたが、各地のクラフトフェアに出展するようになったことをきっかけに、一輪挿しや木べら、カトラリーなど、より手に取りやすい小物を多くつくるようになったという。
「日々使うもの、暮らしに直結するものをつくること。そしてそれを対面で売ることにも喜びがありました」
うだの代表作ともいえる、黒地に模様が施されたうつわやカトラリー。そのデザインはプリミティブな印象も感じさせるが、使い心地をイメージしながら刃物で丁寧に削り出されたその細部は、見れば見るほど緻密だ。
うだはスプーンを手にしながら、「この部分に“首”があると、生きている感じがしませんか?」と言った。その“首”とは、すくう部分と柄の境目につくられた段差のこと。手に取って見てみると、アフリカのフォークアートと対峙したときのような、ほっこりとした愛らしさを確かに感じたのだった。
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