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Cosmic Pizza
食べる地球暦、コズミックピザ

vol.5 振り切れて 転換するは 夏至・冬至

地球暦は丸い。ピザも、丸い。
地球暦の視点から宇宙の理を読み解き、ピザで表現する。
食べる暦。それは、宇宙初の新しい試み。

06/21/2022


ターニングポイントのソルスティスを味わい尽くせ

地球暦の考案者・杉山開知が、そのときどきの、リアルタイムの星の動きを解説。その話からインスピレーションを受け、スウェーデンのピザ屋「Omnipollos hatt」がピザを創作。地球暦×Omnipollos hattのコラボレーションにより、新作メニューが毎回誕生します。

Equinoxes & Solstices
2022年 二至二分

3月21日 春分
6月21日 夏至
9月23日 秋分
12月22日 冬至



時計と暦の原点、ソルスティス

「ソルスティス(夏至/冬至)」は、前号で取り上げた「イクイノックス(春分/秋分)」とセットで扱うべきテーマだ。ソルスティスおよびイクイノックスとは、二十四節気でいうところの二至二分(夏至/冬至、春分/秋分)のこと。最も基本的な季節の区切りで、「この4つのポイントは体感もしやすいから、地球の動きと自身をリンクさせる絶好のタイミングだともいえるでしょうね」と開知さんも言う。

春分が宇宙的根拠のある始まりの日であり、その対極に秋分があることは前回、説明した。しかしそれらを知るためには、先にソルスティスをわかっておく必要がある。地球における究極のバランスポイントであるイクイノックスのありかを見極めるには、バランスの対極にあるソルスティスのありかを拠り所にするしかないからだ。

原始的な時計、日時計を想像してみてほしい。棒を立て観測をするとき探りやすいのは、影がいちばん長くなるポイント=冬至だ。それから反対側の影が短くなるポイント=夏至を特定する。そうして初めて、その中間にある春分と秋分のポイントを導き出すことが可能になるのだ(ちなみにこの二至二分を探ったことこそが、暦の原点だ)。



静止と静寂のターニングポイント

地球から見た太陽は、東を中心に地平線を振り子のように動いて1年を巡る。春分と秋分には真東から、夏至にはその土地で最も北側から、冬至には最も南側から、太陽は昇ってくる。振り子が振り切れるときは動きが止まって見えるものだが、まさにソルスティス(Solstice)という言葉が、太陽(sol)が静止している(sistere)という意味だ。地球が至点を通過するとき、日の出入り・南中高度など、太陽の変化は数日間、止まって見える。たとえば陰と陽。吐く息と吸う息。満ち潮と引き潮。対の関係性において一方がもう一方へと動きがスイッチする、その転換点がつまりソルスティスなのだ。

「そのとき、動きはとてもゆっくりで、大きな船が舵を切ってもゆっくりとしか旋回できないのに似ています。僕はそこに、とてもエモーショナルな味わい深さを感じるんです」



夏至、その祝祭性

1年を1日にたとえると、夏至はちょうど正午にあたる。春分から数えて太陽が天球上を90°移動した地点、すなわち地球が1年の軌道を1/4経過した地点。地球が巡る1年のなかで、光の量が増長し、ついにピークに至り、これ以降は減衰へと切り替わるターニングポイントだ。「夏」が「至」るエネルギーに満ちたこの日は、緯度の高い地域に暮らし、長く暗い冬を経て太陽の登場を待ち望む人々にとって特別な意味をもつ。とりわけスウェーデンの人たちが夏至祭を謳歌するのはつとに有名だ。スウェーデンから届いた今回のピザには、だからもちろん、そんな夏至祭の様子が描かれている。

「グリーンペストチーズで表現しているのは、夏至祭の会場となる草原。メイポールという白樺のシンボルを建て、そのまわりで老若男女が歌い、踊り、ご馳走を食べます。ピザに散らした花々は、愛にまつわる言い伝えに因んで。夏至の日の夜に7種類の花を摘んで枕元に置いて寝ると、将来の伴侶の夢を見るといわれています。夏至の夜には、超自然的なことも、そうでないことも含めて、数多の魔法がかかるのです」

白夜や極夜の明るさに引っぱられるように、人々は高揚し、愛をむさぼる。実際、多くの赤ちゃんがこの日に命を宿すのだという。

視点を日本に移せば、イクイノックスならば国民の祝日になっているのはご存じのとおり。ぼたもちやおはぎを食べたり、お墓参りをしたりと、お彼岸として生活に組み込まれ、人々の意識にもある程度はのぼる節目だといえる。なのに、ソルスティスとなるとどうだろう。冬至に柚子湯というイメージがかろうじてあるくらいで、どちらかというと印象が薄い。

「僕は、ソルスティスは世界的にも祝日にしたほうがいいと思っていて。本来はそれくらい重要な節目なのだから、イクイノックスに並び得る文化的な創造の余地は大いにあるはず。人々に意識させるトリガーを発明し、実行し、それがいずれムーブメントに発展したら、こんなにユニークなことはないですよね。たとえば夏至はピザを食べる日と先に決めて盛り上がっていれば、しだいにまわりに広がって、そのうち事実上、祝祭的な存在になるのではないでしょうか」

思えば、節分に恵方巻を食べるのも、ハロウィンに仮装するのも、少し前までは国民的行事ではなかったはず。しかしひとたび行事が一般化すれば、自ずとその日は人々に意識されるようになる。伝統を大切に受け継ぐだけでなく、新たな文化風習を、今、ここで、創発しても構わない。地球のサイクルに自身を同調させるためにも、暦の節目を任意に祀ってみる。そうした行為もまた、地球暦が提案し得るひとつだ。

A SLICE OF SPACE
スイート・ドリームス(夏至の夜見る甘い夢)


世界でいちばんこの日を心待ちにしているスウェーデンの人たちの夏至祭の華やぎを、ピザにデザイン。草原をイメージしたチーズに、夢見るために摘む7種のエディブルフラワーを散らして。



杉山開知 Kaichi Sugiyama
1977年、静岡県生まれ。独学で暦を研究、地球暦考案に至る。じつは地球暦誕生のきっかけのひとつは、ピザ屋のアルバイトで時間についての極まりを経験したことにある。

HELIO COMPASS
地球暦とは、太陽系時空間地図。宇宙の太陽系の惑星である「地球」にいる自分が、今がいつで、どこにいるのかがわかる暦で、民族や国を超え、地球人であれば誰もが理解でき、共通して使えるのが特徴。時代的思想や政治目的に左右されることなく宇宙の理を提示している点で、根本的でありながら画期的な発明。
OMNIPOLLOS HATT
ストックホルムにあるピザとクラフトビールの店。このほど日本橋にビールスタンド「オムニポロス東京」をオープン。紹介したピザは、オーナー兼料理人で、アーティストでもあるビヨン・アルダックス作。
time reader | Kaichi Sugiyama pizza creator | Björn Atldax text | Mick Nomura (photopicnic) phography | Gustav Karlsson Frost