木星と土星の“時計”が、大空に六芒星を描く
惑星の会合における今年の最大のトピックは、11月3日の木星と土星の結び。公転周期12年の木星と30年の土星が、20年ごとに会合する、その日なのです。そして60年後に元の位置に戻ってきたとき、会合ポイントをプロットすると立ち現れるのが、六芒星のかたち。木星と土星の動きは、時計そのものです。
Conjunction & Opposition of Jupiter & Saturn
2020–2080 木星と土星の会合
2020年11月03日 結び
2030年9月22日 開き
2040年12月08日 結び
2050年1月28日 開き
2060年2月02日 結び
2070年9月12日 開き
2080年5月21日 結び
木星と土星は、天の大時計
その昔、夜空とはメディアでした。私たちがテレビや新聞、あるいはSNSにふれるのと同じ感覚で、いにしえの人々は夜な夜な空の星を眺め、そこからさまざまな情報を読み取り、活用していたのです。なかでも、木星と土星は特によく観察されていたはずです。
なぜなら、木星の公転周期は12年。土星は30年。ふたつの星が10年ごとに「結び」と「開き」を繰り返し、60年でひと巡りします。いまの話でキーとなる数字は12と60。そう、十二進法と六十進法、まさに現代の時の測り方そのものです。木星と土星の周期は、人の一生を数えるのにちょうどいいスケールでした。
太陽系の大時計と、私たちの腕につけている時計は、同じ原理で動いているのです。
ゼウスとサターン、吉と兆
明と暗、陰と陽、善と悪。対極のもの同士が相生(そうじょう:促進し合う)、もしくは相克(そうこく:抑制し合う)してこの世の中は成り立っている、という考え方がありますが、木星と土星もまさにそうしたバランスの関係にあります。吉凶でいえば、木星が吉、土星が凶の象徴となっています。
また木星は、組織や社会といった集団意識、共通認識を表します。人がたくさん集まって盛り上がっていくような、ソフトのイメージ。対して土星は、そうした人々を支える舞台や仕組みといった土台部分、つまりハードを司っています。上昇、発展する可能性を秘めているけれど実体のない木星に対して、時間をかけて現実的に着実に大きな物事を組み立てて成していく、土星はまさに実体です。
大きさ、その迫力とその恩恵
木星は太陽系で最も大きな惑星です。土星は2番目。木星と土星は、遠くにあるのにかなり大きな存在感です。それもそのはず、水星、金星、地球、火星は岩石と鉱石でできているのに対して、木星と土星の正体はガス(気体)なのです。
ご存じのとおり地球の衛星は月ひとつきりですが、木星は重力も大きいので、そのぶん衛星の数も多く従えています。ガリレオが発見したイオ、エウロパ、ガメニデ、カリストの4つは有名ですが、近年新たに発見された12個も含めると、なんと79個も。
地球の10倍のサイズにして、自転はたったの9時間。そのような超巨大かつ超高速の木星が存在しているおかげで、地球がおだやかな環境を保っていられます。太陽系の外縁のほうで、どんどん突っ込んでくる隕石を一手に引き受けてくれているから。こうしている今も、隕石を吸い込んで木星は膨らみ続けています。太陽系の重力の99%は太陽のものですが、残り1%は木星の重力だといえば、木星の存在感の大きさが、少しは伝わるでしょうか。
A SLICE OF SPACE
Jupiter & Saturn Pie
2020年から2080年まで、木星と土星の動きがつくる六芒星のパターンは、ホットトマトソースで。20年ごとに訪れる3回の結びは、土台の3種類のチーズに。土星は、サラミにネギのリングをかけて表現。
杉山開知 Kaichi Sugiyama
1977年、静岡県生まれ。独学で暦を研究、地球暦考案に至る。じつは地球暦誕生のきっかけのひとつは、ピザ屋のアルバイトで時間についての極まりを経験したことにある。