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CAKEと旅する
しまなみ海道

広島県尾道市から愛媛県今治市へ、瀬戸内海の「しまなみ海道」へ旅に出る。サイクリスト憧れの地を走る相棒は、「CAKE(ケイク)」の電動モーターサイクル。アイランド・ホッピングをするように、島々を軽やかに駆け抜けよう。

12/04/2023

尾道の風情ある街並みを、港に向かって走りゆく。対岸の向島からやってきた渡船に乗り込めば、後に続くのは部活帰りの中高生。制服姿の生徒が渡船を自転車で乗り降りするのは、街の朝夕の風物だ。船内で中高生と肩を並べるや、彼ら彼女らは好奇心旺盛に視線を送ってきた。「あれは自転車?」と声が聞こえる。その仲間は「でもペダルもチェーンもないし、バイクなんじゃない?」と応答した。近未来型のデザインにも興味津々なよう。渡船が尾道から向島に渡り、アクセルを捻って走り去る。無音に近い走行音で、港には不思議そうな顔つきの生徒たちが波音ともに残された。

今回の旅の相棒は、スウェーデン発の電動モーターサイクル「CAKE」の「Makka range(マッカ レンジ)」だ。カラーはホワイトとグレーの端正な2種類があり、重量は70kg。最高速度は時速30km、1回の充電で66kmまで航続可能。原付免許のみで運転でき、気軽な街乗りにふさわしいミニマルな一台だ。

まるで自転車のように軽やかで機能美を感じさせるデザイン。ウインドシールドにはブルーやオレンジなど多彩なカラーバリエーションがある

「しまなみ海道」といえば、自転車のイメージが根強い。瀬戸内海に延びる総距離約70kmの道を走ることは、サイクリストなら一度は憧れるだろう。潮風や山々との一体感もまた海道ライドの醍醐味だ。でも、島々の魅力は海道沿いにあるとは限らない。疲労を理由にあきらめてはもったいない寄り道へ、Makka rangeにまたがればイージーにアクセスできる。

小さな島々が織りなす多島美はしまなみ海道の醍醐味
エンジンがないため走行音がほとんどせず、住宅街や早朝の時間帯でも安心

田舎町の入り組んだ細道に加えて、坂道でもMakka rangeはパワーを発揮する。向島を後にすれば因島、生口島とつづくしまなみ海道。島に入ったら橋から海岸線に下り、別の島にはまた橋の高さまで坂道を上がらなければいけないように、自転車での海道ライドは体力勝負となる。電動モーターサイクルで体力と時間を節約したら、生まれた余裕をマイクロアドベンチャーのように寄り道へと費やせる。

生口島では、瀬戸内海きってのヒップなエリアである瀬戸田で一泊したい。築140年の塩蔵を改装した空間で、環境負荷の軽減と土壌の再生を追求するコーヒーロースター「Overview Coffee」、周辺地域の食材にこだわり、薪火料理を提供するレストラン「MINATOYA」、宿泊施設に併設された、スタイリッシュなサウナ付き銭湯「yubune」にも立ち寄った。

yubuneの浴場内は、瀬戸内海の日夜を表現したモザイクタイルが美しい

ひと息つき、胃袋を満たし、汗を流したら、街のハブである複合施設「SOIL Setoda」に宿泊しよう。スマートフォン同様に100Vの電源、すなわち家庭用コンセントから充電できるのも、電動モーターサイクルが旅の相棒にふさわしい由縁である。

バッテリーは片手で持ち運べる重さ。水没しない限りは雨天でも問題ない

夜朝の静寂に耳をすませるのも瀬戸田の醍醐味だ。波の音、鳥の声、船の気配。夜明けの静けさに、バイクのエンジン音は似つかない。町を起こさないようにMakka rangeで走り出そう。黄色い塗装が目を引くのは高根大橋。自転車であれば億劫な高低差にあっても、電動モーターサイクルなら格好の寄り道となる。

生口島と高根島を結ぶ高根大橋。写真右奥に見えるのが瀬戸田港周辺

生口島から先は大三島、伯方島、大島へとしまなみ海道が延びていく。大三島では樹齢2600年のクスノキがそびえる「大山祇神社」に参拝。山の神、大海原の神、そして渡航の神を祀り、旅の成功を後押ししてくれそうだ。近くには世界的建築家の伊東豊雄が代表を務める「大三島みんなのワイナリー」のショップがあり、島のブドウで醸造されたワインが手に入る。

樹齢2600年を数える大山祇神社の御神木

お土産を揃えたら、旅のフィナーレは大島にある標高301.1mの「亀老山展望公園」へ。太陽が瀬戸内海に沈むころ、マジックアワーの光線に照らされて、空と海の境界線がなくなった。魔法のような多島美と調和するごとく静かに、軽やかに、Makka rangeは急坂を駆けていく。

亀老山展望公園の展望台は、日本を代表する建築家の隈研吾による設計

CAKE
https://ridecake.jp

text | Yosuke Uchida photography | Toshitake Suzuki, Natsumi Kinugasa