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Brompton × PAPERSKY
LOCAL RIDE

山の聖地から海の絶景へ、
Bromptonで旅するドラマチック紀州

都市部を軽快に走れる走行性能とコンパクトに持ち運べる携行性を兼ね備えた、ロンドン生まれの折り畳み自転車、Brompton。旅にぴったりのBromptonと、日本のローカル旅に出かけよう。今回は和歌山県を舞台に、山と海、異なるロケーションを駆け抜ける!

10/07/2025


深い緑に包まれた、静寂の高野山


今回、Bromptonと旅するのは、一大サイクリング王国の和歌山県。800kmにも及ぶサイクリングルート「WAKAYAMA800」が県全体に整備され、サイクルトレインが運行されるなど、自転車に乗りながら地域の魅力を体験できる試みがなされている。

そんな和歌山県のライドを案内してくれたのは、高野山のお膝元、橋本市出身の久保田美紀さん。自転車歴は5年あまりながら、乗り始めて早々に “日本最強のヒルクライム”こと「富士山ヒルクライム」に挑戦するなど、ヒルクラ好きを自認するサイクリストだ。今年春、20年ぶりに地元に戻り、和歌山県のフィールドをロード&グラベルバイクで開拓中だ。

そんな美紀さんと計画したのは、和歌山県の見どころ満載の一泊二日のバイクトリップ。1日目は世界中のサイクリストたちを惹きつける“紀伊山地の霊場”、世界遺産の高野山参詣道を周遊し、ブリュワリーに隣接するゲストハウスまで、2日目は美紀さんおすすめの白崎海洋公園を目指して海沿いを走る。

山麓から山頂までをヒルクライムできる、ユネスコ世界遺産の高野山参詣道。週末になればたくさんのロードバイクが険しい峠道を登っていくが、Bromptonに乗った私たちは山の中腹までを電車でアクセスするファンライド・スタイルで。高野山へのアクセスは、新大阪方面からは南海なんば駅で南海高野線に乗り換え、和歌山駅経由の場合はJR和歌山線で橋本駅に至り、そこから南海高野線に乗って極楽橋駅を目指す。

高野山は、平安時代初期(816年)に空海(弘法大師)によって開かれた真言密教の修行の場で、その後、真言宗の総本山として栄えたことはご存知の通り。山深い紀伊山地の、標高840mの山中に開かれた霊場には四国八十八カ所を巡ったお遍路さんほか、多くの参詣者が集まりおごそかなムードが漂っている。

『PAPERSKY』では、偉大な思想家にして歩く旅の達人であった空海さんに親近感を(勝手に)抱き、過去には空海さんが聖地・高野山を見出した“弘法大師の道”で彼の足跡をたどったこともあった。神童として将来を期待され若くして京都にあがるも、エリートが集まる権威的・閉鎖的組織に疑問を抱き、ドロップアウトして自然智に傾倒。密教の世界で我が道を歩む……。その破天荒な生き方や価値観は現代にも通じるものだが、空海さんを惹きつけた自然智に思いを馳せたくなるのは、極楽橋駅から金剛峯寺への霧たちこめる舗装道がすでに神話のムードを宿しているからか。

坂は徐々に傾斜を増していく。不動坂は京都や大阪方面からの参詣道である京大坂道の最後の難所区間で、世界遺産の構成資産の一つ。旧道と新道があって、九十九折りの舗装された坂道は標高差およそ300m、距離は2.4km。周囲は木立に阻まれ、あいにく眺望もほとんどない。

美紀さんのようなヒルクライマーにとっては標高と勾配がモチベーションになるだろうが、そうでない人にとって、眺望というお楽しみ要素のないのぼりはなかなかにハードだ。というわけで1200年前に空海さんが目にしたであろう幽玄の世界をまぶたに思い浮かべながら、ひたすら漕ぎ続ける。

高野山の名物といえば胡麻豆腐!豆腐店として創業した「高野山 胡麻豆腐 濱田屋」の胡麻豆腐は本葛と白ゴマと井戸水のみで作られており、とろとろ食感が病みつきに。本葛は、江戸時代から奈良県吉野地方で本葛を作り続ける老舗のものを使っているそう。写真は和三盆糖¥400(左)と抹茶胡麻豆腐¥600

山の上には奥の院、壇上伽藍、金剛峯寺と仏教寺院が立ち並び、鮮やかな黄色の僧衣をまとった僧侶たちが行き交う。その様子はまさしく山上の聖地といった趣だ。明治30年ごろに創業した老舗の「高野山 胡麻豆腐 濱田屋」に立ち寄り、本葛と白ゴマと井戸水のみで作られている胡麻豆腐でひと休みしたのち、山中の周遊へ。金剛峯寺にお参りし、高野山のシンボルでもある大門前を通過、480号線を一気にくだる。

途中、素敵な店構えに惹かれてピットインしたのは「モント珈琲」。週末だけオープンしている小さなコーヒースタンドだが、この日はたまたまオープンしていた。オーナー姉妹の祖父母が営んでいた高野槙の直売所をセルフリノベしたもので、旬のフルーツを使った自家製スイーツもおいしそう。ここでは、おすすめのレモンコーヒーをオーダーしてみる。ところで、レモンコーヒーってなに?

「アイスコーヒーとレモンシロップを合わせた冷たいドリンクで、さっぱり飲めるからサイクリストにも人気なんですよ」と店主。レモンの酸味とコーヒーの香り、さわやかな甘さがぴったりマッチして、びっくりするほどおいしい。一気に飲み切ってしまい、2杯目をオーダーする。おいしさの秘訣は自家製シロップ。自宅の庭になっている無農薬のレモンを摘み、ハチミツと合わせているとか。

「下山の途中にこのスタンドがあると思ったら、のぼりのテンションも上がりそう!」(美紀さん)

レモンコーヒーに励まされ、さらに480号線を走って下界に至る。神話の世界から現実の世界に引き戻されたら、JR西笠田駅へ。ここからは輪行とサイクルトレインを活用して有田方面に向かう。和歌山駅から先のきのくに線は一部の列車がサイクルトレインになっているので、時刻表をチェックしておこう。

きのくに線湯浅駅を降りたら、今夜の宿の「GOLDEN RIVER」まで。保育所だった建物を複合施設にリノベしたもので、現在はダイナー「GOLDEN RIVER」とゲストハウス「TADONO the bedroom」、水がきれいでおいしい果物が実るこのエリアに魅せられた、ポートランドの醸造家が始めたというクラフトビール醸造所「NOM CRAFT」が入居している。

まずは「NOM CRAFT」のIPAで乾杯。前回、美紀さんがここに滞在したときは飲み過ぎで翌日の脚が使い物にならなかったらしい。あぶない、あぶない。前回の轍を踏まえ、今日は早めに「TADONO」に引き上げた。



2日目は、“醤油醸造発祥の地”めぐりから

2日目は高野山から一転、和歌山のエーゲ海こと白崎海洋公園を目指す湾岸ルートを行く。その前に熊野古道の宿場町として栄えた湯浅町の、古い街並みをのんびり散策しよう。室町時代後半から江戸時代にかけては街道沿いに商業都市として発達、その面影がいまも町筋に残る湯浅は、熊野古道で唯一、市街地を通過する宿場町だった。

加えてここは醤油醸造発祥の地でもあり、伝統的建造物群保存地区に指定されているエリアには、醸造業に関連する古い町家や土蔵が連なって醤油の始まりをいまに伝えている。鎌倉時代、中国から伝わった径山寺みそ(後の金山寺みそ)の製造過程で生じた液体が醤油のルーツで、湯浅の起源もここにある。1841年創業の「角長」は現在もここで醤油を醸しており、古い道具や資料を展示する小醤油資料館がおもしろい。

そんな湯浅町の玄関口として活躍したのが湯浅駅。1927年に開業した古い駅舎は現在、湯浅の代名詞・醤油を使った食事を提供する「湯浅米醤」という食堂になっている。名物のおにぎりを行動食用にしこたま買い込み、バッグのなかへ。かまどで炊いたふっくらごはんと深みのある醤油で味付けしたおかずは、最高の組み合わせだった!


真っ白な岬、青い海、緑の棚田。


後ろ髪引かれる思いで湯浅町をあとにし、海岸線を走る県道23号を南下する。JRきのくに線広川ビーチ駅の小さな駅舎の先で、ついにオーシャンビューが出現!ここから先は右手にキラキラ光る海、左手に山や棚田を眺めながら眺望のいい道を走る。唐尾湾には遠浅の西広海岸が広がっていて、磯の香りにテンションもあがる。小刻みなアップダウンを繰り返し、鄙びた漁港の風情が味わい深い衣奈海岸へ。

店内から遠浅のビーチを一望する「Fitam」は、ボリュームのあるハンバーガーが人気のダイナー。肉の食感が楽しめるジューシーなパテとみずみずしくてシャキシャキした野菜、表面をかりっと焼き上げたバンズの組み合わせが絶妙で、食べ終えるのが惜しくなるほどだ。

食後はテラスに出て、丁寧にハンドドリップしているコーヒーを飲みながらビーチの風情を楽しんでみる。暑い日にはこのまま海で水遊びをしてもよさそうだ。店の雰囲気も窓からのランドスケープも素晴らしく、ついつい長居してしまうランチスポットだった。

ランチ後は目的地の白崎海洋公園に向けて最後のひとのぼり。カーブを曲がると、目に飛び込んでくるのは、青い海と鮮やかなコントラストを織りなす白い石灰岩の岬!海面からそそり立つ真っ白な奇岩!この風景から「日本のエーゲ海」と呼ばれる白崎海岸だが、地質学的にも貴重なものらしく、2億5000年前に誕生したものと言われている。

岬にある海洋公園では360度のパノラマを楽しめると聞き、さっそく園内を自転車で回遊する。植栽が美しい園内ではハマゴウの花が咲いていた。白い奇岩を背景に薄紫色の花が揺れるさまが可憐で、日本ではないどこか遠い国のよう。

園内のレストハウスで休憩したら、JRきのくに線紀紀伊由良駅まで海岸線を走る。同じ形状のログハウスが連なる大引浜あたりで後ろを振り返ると、白崎海岸を一望できた。海岸線を離れて田んぼの間を抜けたらゴールの紀伊由良駅に到着。このまま和歌山駅まで直行するもよし、途中下車して温泉に立ち寄るのもまたよし。街中にある温泉だって源泉掛け流しはあたりまえ、加水・加温なし・飲水オッケーだったりするところが、和歌山の懐の深さを表しているのだから。

山、海、古道に宿場町、極め付けは泉質良好の温泉まで!和歌山にはサイクリストをもてなすコンテンツが揃い踏みなのである。


Travel Guide

高野山真言宗 総本山金剛峯寺
和歌山県伊都郡高野町大字高野山444
TEL:0736-56-2011

GOLDEN RIVER
和歌山県有田郡有田川町長田546
TEL:0737-53-3005

高野山 胡麻腐 濱田屋
和歌山県伊都郡高野町大字高野山444
0736-56-2343

モント珈琲
和歌山県伊都郡かつらぎ町志賀557-1

湯浅米醤
和歌山県有田郡湯浅町湯浅1075-2
TEL:070-9133-0737

Fitam
和歌山県日高郡由良町衣奈862-2
TEL054-631-6016

白崎海洋公園
和歌山県日高郡由良町神谷213
TEL:0738-65-0125

Cycling Route Map


Brompton
1975年、イギリス・ロンドンの街中にあるアパートメントの一室で生まれたBrompton。20秒以内に折りたためる、軽量・コンパクトな自転車は、創業者のアンドリュー・リッチーがロンドンの街中を快適に移動できる足を求めて開発したものだ。
https://jp.brompton.com

text | Ryoko Kuraishi photography & videography | Masaru Furuya