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Bike Packing Weekend

瀬戸内ブルーとデニムブルー
青の世界をライド

岡山県倉敷市・玉野市

今回の旅の舞台となるのは、民藝と天領の名残が息づく倉敷美観地区、港町の風情が楽しい玉野市、そして国産デニム発祥の地・児島。レトロな倉敷を巡り、港町を散策したら瀬戸内海沿岸を走る王子マリンロードを通って、王子が岳と瀬戸内海を眺めながら一泊。翌日は鷲羽山の展望台を経由してジーンズストリートを走り、再び倉敷へ。郷土の美食に個性的なデニムになつかしい民藝品に……、とっておきのメイドイン岡山を探しに出かけよう。

07/11/2025



きらきら輝く春の瀬戸内海へ


少しずつ日が長くなり、明るい陽光が降り注ぐ。どこからともなくジンチョウゲの花の香りが漂って……、春の陽気に誘われて出かけたのは岡山県。なまこ壁と柳並木の風情が美しい美観地区から、直島や四国への玄関口である玉野市を経て、デニムの町・児島へ。

春のキーワードを探すサイクルトリップには、ぴったりのデスティネーションだ。「倉敷美観地区ではサクラが見頃ですよ」というのは、今回の旅のナビゲーターを買って出てくれた山脇耀平さん。岡山発のデニムブランド、「ITONAMI」代表を務める“デニム兄弟”の兄のほう。岡山の自慢のスポットを案内してくれるというから頼もしい。

蔵屋敷に柳並木、倉敷美観地区の特徴的な街並み

倉敷の中心部、インバウンドで賑わう美観地区では、山脇さんおすすめの「融民藝店」へ直行。店頭に並ぶのは、春の日差しに溶け込むような、淡い黄色をまとったガラスの器に、この地で1,800年もの歴史をもついぐさを使った工芸品。

融民藝店で見つけたかまどの神さま

1971年創業の民藝店だが、3年前、東京でフォトグラファーとして活躍していた山本尚意さんが、前店主から事業を承継。長くつき合いのある作家に加え、若手のつくり手もラインナップに加え、新たな世界観を築いている。岡山の風土を反映した民藝の数々に、物欲が爆発したのはいうまでもない。

あれこれ欲しくなる!店主・山本さんの審美眼が光る、融民藝のセレクション

美観地区を後にし、倉敷川に沿って南下する。入船橋から粒栄橋までのおよそ3kmにわたり、1,000本の河津桜が見頃を迎えていた。ピンクに咲き誇るサクラのトンネルを抜けて春の陽気を満喫。茶屋児島自転車道を通って、最初の休憩ポイント「道の駅みやま公園」へ。

国道30号に面した道の駅みやま公園は地物野菜や鮮魚を扱う直販やマルシェ、キッチンカーが整備されており、直販で販売している食材をメニューに使う「Miyama cafe PUUT」が人気だとか。ここから県道22号を走ると、やがて宇野港にいたる。

おいしい焼き菓子が見つかる「belk bakes」
港の風景に旅心が誘われる
Miyama café PUUTのある道の駅みやま公園は産直も充実。秘伝のタレで焼いた焼きアナゴの匂いが漂う鮮魚コーナーでは買い食い必至

瀬戸内海の島々に向かうフェリーが発着する宇野港は、3年に1度開催される「瀬戸内芸術祭」へのエントランスでもある。船のいかりやスクリュー、チヌを模した屋外アート作品が展示されているので、時間があればアート巡りを楽しんだり、港町の風情を味わいながらひと息ついたり。宿泊地の「DENIM HOSTEL float」まではもう少しだ。

行き交うフェリーを眺めながら、宇野港をのんびり走る
宇野港近くの人気スポット、#8 WIREでバーガーにかぶりつく

宇野港から先は瀬戸内海を眺めながら「王子マリンロード」を走る。“王子”の名はこの先にそびえる王子が岳に由来する。瀬戸内海国立公園に指定されている王子が岳は地域のランドマークで、巨岩・奇岩が織りなすダイナミックな稜線がなんともシンボリック。山頂からは、瀬戸内海の島々や対岸にある四国連山、瀬戸大橋までを一望するパノラマビューが楽しめる。

玉野市と児島を結ぶ王子マリンロードは、本州と四国が最も近い海岸線だとか

デニムをテーマにしたfloatはその名のとおり、全客室がインディゴブルーに染められている。板も壁も、椅子の張り地も襖もデニムを思わせるブルー。和のしつらいと深いブルー、窓から飛び込んでくる瀬戸内海の情景がみごとに調和して、なんとも居心地のいい空気を醸していた。壁は、クラウドファンディングの支援者たちが塗ってくれたものだそう。

 「屋外にはバレルサウナがあり、瀬戸内海を間近にととのえられます」
サウナ用に貸し出している水着は、もちろんナイロンデニム製。やっぱり!

DENIM HOSTEL floatでは、インディゴブルーに染められた和室でくつろぎたい
窓から瀬戸内海を一望できる、「DENIM HOSTEL float」のサウナ


デニムホテルからジーンズストリートへ


2日目、旅の後半もデニム尽くしだ。floatを後にして向かうは、デニムメーカーのショップが軒を連ねる倉敷市児島のジーンズストリート。その前に、瀬戸内海の代表的な景勝地として知られる鷲羽山展望台に向かう。

ここから望む青くおだやかな海と多島美、四国に続く瀬戸大橋の風景は、瀬戸内海を代表するランドスケープといえるだろう。何組かのサイクリストがこの風景をバックに記念撮影に励んでいた。ちなみに、飲食スペース以外にセレクトショップ、本屋を併設してリニューアルした「鷲羽山レストハウス」も、山脇・島田兄弟が手がけたもの。地の鮮魚や旬野菜を使った定食をお目当てに、お腹を空かせてでかけよう。

鷲羽山を一気に降り、再び児島の市街地へ。「BIG JOHN」「桃太郎ジーンズ」など40軒余りのショップが集まるジーンズストリートを散策しながら、各メーカーが趣向を凝らして製作する国産デニム製品に触れる。その技術力から世界的にも有名な「ジャパンデニム」に、多くのツーリストが足を止めていた。

個性的なショップが連なるジーンズストリート
ジーンズストリートではためくのは、さまざまなメーカーによるデニムパンツの幟
青いひさしが目印の「calma coffee roasters」でコーヒーブレイク

途中、floatの卒業生、濱田大輝さんが今年3月にスタートしたコーヒーショップでスペシャルティコーヒーを味わった。独学で焙煎を学び、floatで働きながら開店準備をしてきた濱田さん、今後はここを拠点に、コーヒーと器やフードとのコラボレーションイベントなどを企画していくそうだ。

さまざまなブルーに彩られた岡山のサイクリングもそろそろ終盤。デニムの聖地に別れを告げて自転車にまたがり、再び倉敷へ。歴史に民藝、土地のおいしいもの、そしてデニム。岡山のいいものを一度に満喫できる贅沢を、サドルの上でかみしめている。

岡山発のデニムブランド「ITONAMI」
山脇・島田兄弟が始めた「ITONAMI」は、素材やものづくりにこだわるデニムブランド。全国で回収した約4,000本のデニム製品を粉砕して綿状に戻し、リサイクル糸で生地を織り上げる「FUKKOKU」、服の原料となる綿を自分たちの手で育てる「服のたね」など、愛着のあるデニムをもつための独自プロジェクトを展開する。

ITONAMI
岡山県倉敷市児島唐琴町1421-26 DENIM HOSTEL float内


山脇耀平/Yohei Yamawaki
兵庫県出身。デニムブランド「ITONAMI」代表。弟の島田舜介さんとともに同ブランドを手がけることから、ふたりは“デニム兄弟”として知られている。ひょんなことからデニム工場とのつながりができ、職人たちのたたずまいのかっこよさに惚れ込んだふたりは大学在学中の起業を決意。2015年、自身のデニムブランドを立ち上げ、商品を積み込んだキャンピングカーで全国を旅するように。2020年、ITONAMIのショップを兼ねた宿泊施設「DENIM HOSTEL float」をオープン。
https://ito-nami.com


Bike Packing Guide
融民藝店
岡山県倉敷市阿知2-25-48
TEL:086-424-8722
Miyama cafe PUUT
岡山県玉野市田井2-4464 道の駅みやま公園内
TEL:0863-33-0887
#8 WIRE(ナンバーエイトワイヤー)
岡山県玉野市宇野1-7-3
TEL:070-3771-8353
DENIM HOSTEL float
岡山県倉敷市児島唐琴町1421-26
TEL:086-477-7620
calma coffee roasters
岡山県倉敷市児島味野2-2-90
鷲羽山レストハウス
岡山県倉敷市下津井田之浦1-1
TEL:086-479-9164
text | Ryoko Kuraishi photography & videography | Ryuta Iwasaki Special Thanks | Yohei Yamawaki (ITONAMI)