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Bike Packing Weekend
いも地蔵を追いかけて、再びの大三島へ

愛媛県・松山〜大三島

7年前、編集長のルーカスを魅了したいも地蔵の物語を、今度は自転車でなぞってみよう! そんな思いつきから始まった、PAPERSKY流のしまなみ海道バイクパッキング。松山を出発して今治を経て、一路、いも地蔵の待つ大三島へ! 素敵なサイクリストたちと出会い、瀬戸内海の絶景と土地の美食に心躍らせながら、地元のトライアスリートとともに、海の道、山のトレイルを駆け抜ける。

02/07/2021


海を渡り島を巡る、サイクリストの聖地へ

江戸時代、薩摩藩から特産品のサツマイモを瀬戸内海の島へもたらし、島民を大飢饉から救った大三島の「いも地蔵」こと、下見吉十郎。命がけでサツマイモを持ち込んだいも地蔵の物語に感銘を受けた編集長のルーカスが、いも地蔵に代わって大三島のサツマイモを鹿児島にお返ししようと考えたのは2014年のことだった。いも地蔵を祀る大三島の向雲寺を出発して船で大分県へと渡り、大分県の臼杵から種芋を譲り受けた鹿児島県の伊集院に至る300kmの歩き旅。あれから7年、伊集院にお返しした、たった5つのサツマイモは地元のサツマイモ農家によって数トンにまで増やされ、同じく地元の焼酎蔵によって「IMO-JIZO」という焼酎に生まれ変わった。昨年末、いも地蔵にお供えすべく焼酎瓶を携えて鹿児島·大三島間を自転車で旅したルーカスは、愛媛県を走りながら考えていた。愛媛のサツマイモをポテトフライに仕立て、この焼酎とペアリングしてみたらどうだろうか、と。前置きが長くなったけれど、今回の旅では焼酎&サツマイモフライをテーマに、いも地蔵を目指す。

旅の相棒に迎えたのは、松山市で自転車&カーショップ「GROOVE」を営む平磯正吏さん。ヒルクライム好きの平磯さんの案内でしまなみ海道の拠点である今治まで、海側ではなく山越えルートの国道317号を駆ける。道中、玉川湖や鈍川温泉という見どころはあるものの、水ケ峠トンネル付近までは緩い上り一辺倒。ところどころ路肩が狭く、車の往来に注意が必要だ。鈍川温泉付近に差しかかると懐しい里山の風景に心が和む。

今治ではこの街の自転車シーンを象徴する施設に立ち寄った。ひとつはしまなみ海道サイクリングの四国側の拠点である「サンライズ糸山」。昨年6月にリニューアルオープンしたこちらではEバイクも含めた自転車のレンタルを行っている。もう1ヶ所は、ポタリングガイドの宇都宮一成さんが運営する、サイクリスト御用達のゲストハウス「シクロの家」。自転車好きが高じて妻のトモ子さんとともにタンデムバイクで世界一周旅を果した宇都宮さんは、この街の自転車カルチャーを象徴する存在だ。

「広大な大陸を自転車で走っていると、道はどこまでもつながっていると実感するんです。なのに、その道沿いに現れる言葉や食生活、人のキャラクターはモザイクのように移り変わっていく。自転車の旅は世界を線でつないでいくようなおもしろさがあって、だから惹かれるのかもしれません」

現在はそういう自転車旅の魅力をここ、しまなみ海道で提案したいと、今治を拠点にシクロツーリズムの普及に取り組んでいる。

空に向かって伸びる橋を駆け抜けて

さて、今治を後にして、いよいよしまなみ海道のサイクリングへ。今治·尾道間を7つの橋で結ぶしまなみ海道は全長およそ70km。今回は大三島までの約30kmをサイクリングし、島内の見どころを巡ることにした。今治と大島の間に架かる4.1kmの吊り橋、来島海峡大橋から見晴らす瀬戸内海は神秘的なまでのコバルトブルーに輝き、日本三大潮流のひとつに挙げられる急流も心なしか穏やかだ。

大島で亀老山展望公園に寄り道し、伯方島を通り過ぎ、3時間ほどで大三島にいたる。外周約45km、愛媛県最大の島は、いも地蔵を祀る向雲寺の他、山と海を司る大山祇の神さまを祀る日本総鎮守の大山祇神社で知られる。しまなみ海道初のクラフトビール醸造所である「大三島ブリュワリー」、農業被害をもたらすイノシシを捕獲し、ジビエとして活用するレストラン「DAISHIN」など、ユニークな店が点在するから、ここはぜひ、一日かけてまわりたいもの。

今回の旅の目的地である向雲寺で落ち合ったのは、「甘薯地蔵史跡保存会」の浅海俊明会長。浅海さんの案内で境内にあるいも地蔵像にお参りし、「IMO-JIZO」を供えて手を合わせる。いも地蔵さん、ついに私たちの焼酎ができましたよ。

大三島の宿は、瀬戸内海や多々羅大橋のダイナミックなビューが楽しめる「WAKKA」。サイクリストのための海上タクシーや瀬戸内海クルーズの手配他、SUPツアーなどのアクティビティも提供し、大三島の遊び方や自然をトータルで提案·紹介している。ここのコテージで「IMO-JIZO」のボトルを開け、伊方町のサツマイモ農家、「瀬戸さつまいも倶楽部」松岡浩也さんが栽培したサツマイモをフライにしていただき、サツマイモと芋焼酎のペアリングで大三島到着を祝った。

その日の晩、コテージで海を眺めながら、「瀬戸内海のビューも島に架かる橋の眺めも心に残るけれど、自転車旅の醍醐味はやっぱり人と人との出会い、一期一会なんだよね」と、平磯さんがしみじみと。今治の宇都宮さん、サツマイモを集めてくれた農家の松岡さん、そして大三島の人々。「IMO-JIZO」と自転車旅がもたらしてくれたたくさんの出会いを思い返しながら、波が打ち寄せる穏やかな調べにいつまでも耳を傾けていた。

GIRO
ルーカス B.B. も愛用するアメリカのヘルメットブランド。日本人に合わせたアジアンフィットモデルも多数展開。
GROOVE
今回のゲスト、平磯正吏さんが営む GROOVE は、愛媛県松山市にあるカフェスペースが併設された自転車&カーショップ。
text | Ryoko Kuraishi photography & videography | Ryuta Iwasaki Special Thanks | Giro Cycling, Ehime Prefectural Office Imabari Bureau