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芭蕉記念館でハイク・ハイキング!

江東区の閑静なエリアに佇む芭蕉記念館では、江戸時代の代表的な俳人、松尾芭蕉の世界観をたっぷりと堪能することができる。

10/08/2020

松尾芭蕉は、宗房、桃青、芭蕉など、さまざまな俳号を持っており、最近は「松尾芭蕉 – 忍者説」もあるものの、世界的に有名な俳人として知られている。

伊賀国(現在の三重県伊賀市)で生まれた芭蕉は、幼い頃から文才に恵まれ、1672年に俳句を極めるために江戸に赴いた。日本橋に居を構えた彼は、数々のサロンに出入りして、みるみる頭角を現したが、点者(連歌、俳諧などを評点する人)生活に疲れたためか、隅田川沿いの深川に転居する。

この地で弟子たちが建てた庵に、バショウ(英名:ジャパニーズバナナ)の木を植えたことから芭蕉の俳号を名乗ることになる。少なくとも2回リノベされたこの庵に居を構えていた時、芭蕉の最も知られている作品である「おくの細道」が完成した。この作品は、彼が日本各地を旅しながら(彼が尊敬する歌人の歌枕や名所旧跡を巡る目的もあった)詠んだ句をまとめたものである。

3階建ての芭蕉記念館には、2400キロにも及ぶ旅の記録と思い出の品々が展示されているほか、バショウの木などが青々と茂った小さな庭もある。また、定期的に小学生向けの俳句教室や芭蕉関連のレクチャーも開催されている。

今年で14周年目を迎えるこの記念館は、近隣の観光スポットと比べるとややパッとしない外観かもしれないが、貴重な展示物も素晴らしいコンディションで保存され、地味ながらもエレガントな建築様式は芭蕉の所有していた品々を展示するスペースとしては最適のように思える。

小体な作りの館内で展示物をじっくりと楽しんだ後は、1694年に芭蕉が没するまで暮らした深川界隈で芭蕉ゆかりのスポットを散策するのも楽しい。「おくの細道」の旅に出かけた際に住んでいた採茶庵の跡地や、隅田川と小名木川に隣接した芭蕉庵史跡展望庭園(芭蕉記念館の別館)にはバショウの木が茂り、朝と夕方で向きを変える「芭蕉像」が配されている。

記念館から歩いてすぐの場所には、芭蕉稲荷神社がある。1917年の津波来襲の後、芭蕉が愛したと言われる石造の蛙(現在は記念館に展示中)が発見されたという。 思わずこの句を思い出す。

古池や 蛙飛び込む 水の音

芭蕉ゆかりの地の散策を続けると、まるで蛙が発した水しぶきが心に浸透していくように、芭蕉ワールドが目前にゆっくりと輪郭を帯びてくるように感じられる。

text & photography | Stuart Taylor