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all streets −shibuya−

一乗ひかる (イラストレーター)

インスピレーションに出くわす
イラストレーターの街歩き

all streets −shibuya−は、2022年、渋谷に新たに誕生したホテル「all day place shibuya」が発信するローカルガイドメディア。毎回、渋谷に縁のあるクリエイターをゲストに迎え、お気に入りのスポットを歩いて巡る“渋谷散歩”へと出かけます。大通りから路地裏まで、歩くほどに見えてくるのは、日々移り変わるまちの日常の姿。渋谷の歩き方、楽しみ方は人それぞれ。まだ知らない渋谷を探しに出かけましょう。

07/10/2023

一乗ひかるさんは雑誌や書籍の装画、広告、商品パッケージなどを手がけるイラストレーターです。ダイナミックな構図に、カラフルでポップな色使い、どこかアナログのように温かみを感じる質感。NIKE、Netflix、カルビーなど大手企業のクライアントワークで活躍し、ワン&オンリーな作風に見覚えがある人も多いでしょう。

そんな一乗さんが制作のリフレッシュにしているのが散歩。活動の拠点にしている渋谷区から新宿や神楽坂、時には東京スカイツリーまで。街でふと目にしたものがモチーフになることもあるという一条さんに、渋谷区でお気に入りのルートを教えてもらいました。


イラストレーターと散歩の密なる関係。


「私は歩くのがめっちゃ好きなんです。代々木上原や渋谷のあたりは、なにも構えずに歩いていても新しい情報が入ってくるのが楽しいですね」

一乗ひかるさんは奥渋谷を歩きながらそう言いました。それは多忙なイラストレーターとしての息抜きであると同時に、インスピレーションを得る手段でもあるそう。

「同じ場所でも、そのとき限りの風景がありますよね。興味深いものに出合える日もあれば、出合えない日もありますが、それでも気分転換にはなりますから。モチーフを探し歩くというよりは、目的を持たずにウロウロして、気になったものがあればスマホで撮るようにしています」


顔の見える関係性を築いた空間と人々。


渋谷から代々木上原方面へと歩きながら、一乗さんは「stacks bookstore」をお気に入りスポットに挙げました。8月には個展「ennui」を開催。店主の山下丸郎さんに、展示がしたいと自ら声をかけたそうです。

「ギャラリーや商業施設で展示をさせてもらうのはもちろんありがたいのですが、今回は私の身近な場所でやりたかったんです。山下さんとは普段からお店に立ち寄っては話す仲。作品の額装をお願いしたのも、若林のNOTEWORKS。近い関係性のお店で、付き合いのある人たちと協力して展示をすることは、本来自然な形だろうし、私にとっても純粋に楽しい経験になりました」

ストリートカルチャーに根ざした山下さんも、一乗さんの作品は大いに惹かれると話します。ストリートカルチャーを好きな人が見てもかっこいいと思うに違いない、と言葉を続けました。顔の見える関係性で開催する個展は、山下さんにとっても喜びだったのです。


言葉にしづらい好きな場所と感覚。


書店のそばでは宇田川遊歩道が延び、細い小路がクネクネと延びています。こうした道をなにも考えずに歩くのが、一乗さんの散歩スタイル。町、人、道、公園 …… ふとしたときになにかが目に留まるそうです。

「イラストを制作しているときはMacBookに向かいっぱなし。それで息抜きに陶芸を始めたのに、陶芸も作品になってしまいました(笑) だから、月に1日は歩くだけの日を設けて、仕事から強制的に離れて自分をリセットするようにしています。『富ヶ谷交差点』はなんてことのない場所ですが、歩くうちに好きになっていきました。具体的なお店ではなくとも、なんとなく好きという場所や感覚を私は大事にしたいです」


バラバラだからこそ深まる街の魅力。


「『代々木公園 ドッグラン』も散歩している最中に見つけたお気に入りスポットです。犬を飼ってはいませんが、柵の外から眺めているだけで気分転換になりますね。木々がたくさんあって日陰になるし、緑の多い場所。代々木上原の『ミレチンクエチェント』でめっちゃおいしいビスコッティを買ってこれればもう最高ですね」

散歩のお供にはミレチンクエチェントのビスコッティがお気に入り。

幡ヶ谷まで足を延ばせば、顔見知りの「BULLPEN」でアメリカ・ポートランドの作家の陶器や、オリジナルのフレグランススプレーをよく買うという一乗さん。挙がったお気に入りスポットは書店、道路、公園、家具・生活雑貨店などさまざま。でも、その懐の深さが渋谷という街の魅力なのかもしれません。

「このあたりはバラバラなんですよね、いい意味で。暮らす人、働く人、訪れる人みんながそれぞれやりたいことをやっている感じ。センスがあるけど、おしゃれすぎず、生活感があって、ガチャガチャはしていない。だから居心地がいいし、ふとしたときになにかがインスピレーションになる余地があるような気がします」

1
奥渋谷
渋谷区神谷町、上原周辺

代々木上原〜渋谷が一乗さんの散歩の定番コース。生活感のある民家があれば、流行のお店もあり、居心地のよさが感じられるという。

2
stacks bookstore
渋谷区神山町42-2 Mビル2階

ストリートカルチャーを中心とした国内外のアーティストのZINEや作品集を取り扱う。店内で展示も不定期開催する。

3
富ヶ谷交差点
渋谷区上原、富ヶ谷


山手通りと井の頭通りの交差点。歩道橋が架かり、ドラマや映画の撮影にも利用される。一乗さんは新宿方面の眺めがお気に入り。

4
ミレチンクエチェント
渋谷区元代々木町4-2
TEL : 03-5738-8821

9時から23時まで営業しているイタリアンバール。イタリア語で「1500」を意味する店名は「ミレチ」が通称。

5
々木公園 ドッグラン
渋谷区代々木神園町2-1
TEL : 03-3469-6081

都内最大級となる3620㎡の広さを誇る。従来あった木々をそのまま残した、緑豊かで開放的な雰囲気が愛犬家に支持されている。

6
BULLPEN
渋谷区西原1-18-7
TEL : 03-6407-0526

西原商店街に面した家具・生活雑貨店。国内外の職人やアーティストと関係を結んだ、たしかな目利きに定評がある。

一乗ひかる Hikaru Ichijo
1989年生まれ。東京都出身。イラストレーター。東京芸術大学大学院視覚伝達研究科修了後、デザイン事務所勤務を経て、イラストやグラフィックデザインを中心に活動。第13回グラフィック「1_WALL」ファイナリスト。2022年の主なクライアントワークにNIKE BY YOKOHAMA店舗内装グラフィック、Netflix月間プログラム、カルビー「かっぱえびせん」パッケージなどがある。2021年の渋谷PARCOをはじめ、渋谷区内でたびたび個展を開催している。

all streets −shibuya−
一般的なガイドブックにあるきらびやかな渋谷だけでなく、まちの日常により溶け込み、楽しんでもらえるよう、all day place shibuyaが発信するローカルガイドメディア。all streets -shibuya-のコンテンツは、all day place shibuyaのウェブサイトからもご覧いただけます。
text | Yosuke Uchida photography | Kosuke Hamada illustration | STOMACHACHE.