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‘Modern Nomad’
TRAVELER’S GUIDE

ファイヤーピットからつくる
極上ビーチの食卓

Cooking Seaside

 

08/17/2021

プリミティブな野外料理の楽しみ

その日の食卓は、ご機嫌な波が立つ平野サーフビーチ。砂浜の一角、大きな岩塊の横で三上奈緒さんがセッティングを始めた。プリミティブな野外料理では、調理場も即席。砂に穴を掘り、石を並べ、流木を組んでアーチをつくる。できたのは、3つのファイヤーピット。揃った食材は、新鮮で多彩。奈緒さん、ここでどんな料理をつくるんですか?

「Bunちゃんが釣った魚をどう活かすか。ハマチは半身にしてねぎと一緒に糸で縛って直火焼き、残った半身は柑橘とあえてマリネにします。ホウボウは、野菜やハーブ、鶏がらと一緒に煮込んで出汁をとり、それでパエリアを炊く。エソは3枚におろしてから骨ごと叩いて、刻んだ葉にんにくと間引きにんじんと混ぜてハンバーグに、という計画です」

野外料理は、調理シーンが映える。ハマチとねぎの直火焼きは、流木から糸で吊して“鯉のぼり”状態に。くるくるとまわしながら、遠火でじっくり火を入れる。流木からフックで吊るしたダッチオーブンでスープをクツクツ。もうひとつのファイヤーピットではじゃがいもを海水で茹でる。火の通りをときどき確かめながら、薪をくべ、ぼーっと火の番。ガスコンロ、ましてやIH調理にはない、感覚が頼りの緊張感と愉しさだ。

オリーブオイルと塩をふって焼いた「ハマチとねぎの直火焼き」。ねぎは「Hyotan MAGIC」の小泉さんの畑でいただいたもの

スープができたらパエリアを炊く。ここでも遠火でじっくりが原則。合間にサイドメニューも手早く。茹でたじゃがいもとほうれん草は、ビネガーであえ、炙った鰯の丸干しをパラパラ。生のハマチに紅まどかと小夏をあえ、オリーブオイルと白ワインビネガー、塩で味を調える。エソハンバーグを焼いて、とれたて卵の目玉焼きを添えたら、最後に蒸らしたパエリアににんじんの葉っぱを散らし、たっぷりの小夏果汁を絞って完成。

「野外料理は、空気も含めて全部が料理なんです」と奈緒さん。空と太陽と海とビーチと。それは極めて至福な、料理の記憶。

「エソのハンバーグ」。「目玉焼き」はいちえん農場の平飼い卵を使って
ほうぼうとハーブ、野菜、鶏がらを煮込んで、パエリア用の出汁をとる
「ホウボウのパエリア」には、いちえん農園の土佐ジローの鶏がら、中里自然農園の野菜もふんだん
PAPERSKY no.64 | MODERN NOMAD
火を囲み、釣った魚と地元の食材で調理しながら、心と身体と魂を開放する高知の旅へ。旅のゲストは旅する料理人の三上奈緒さんと、釣り師の BUN ちゃんこと石川文菜さん。
text | Yukiko Soda photography | Natsumi Kinugasa