この特集を東京という街の縁の下の力持ち、樹木たちに捧げます。
世界中がパンデミックで騒いでいる最中に、樹木に関する原稿を書いていることを不思議に思う。彼らは多くの点で、人類の救世主かもしれないと感じるからだ。樹木は根を通じて他の樹木や植物とつながり合い、地球という大地ともしっかりつながっている。それはこの星で生き抜くための条件であり、つまり人類にもいえることだと思うのだ。
東京は他の都市同様に、深く長い歴史や文化があり、たくさんの樹木も息づく街。そして驚くことに、世界一の大都市でありながら、樹齢100〜800年近くにもなる巨木が街に点在している。
今回の特集は、そんな東京の街を樹木でつなぎ、街の中心に向かって渦を描くようにして引いた約60kmのトレイルを紹介する。都内最古の巨木や個性的な樹木に出会いながら、都会のグリーンスポットを巡る道だ。全ルートを6つのセクションに分けて紹介していて、一気に巡ることも可能だが、できれば2〜3日かけて樹木との交流を楽しみながらじっくり歩くことをおすすめしたい。時間があれば、東京の歴史に触れたり、トレイル沿いのおいしいものに出会ったりするチャンスも増えるからだ。
ハイカーやサイクリストのためにデザインしたこのトレイルを「TOKYO TREE TREK」、略して「TTT」と僕らは名づけた。この道が新しい東京のアイコンとして知られるようになり、国内外から多くの人たちがこのトレイルを目指して訪れることを願っている。
TTTを巡れば、グリーンの目で東京の街を眺めるようになるだろう。そしてグリーンの目があれば、神社や公園、並木道で多くの美しい樹木たちに出会い、対話し、彼らを大切に思う意識も芽生えるだろう。
【TOKYO TREE TREK(TTT) ROUTE MAP】
PAPERSKYが創案した、東京の樹木をつないで歩く約60kmのトレイル。江戸の玄関口として旅人を迎えた品川宿(北品川)を起点に、時計回りに渦を描くようにぐるりと巡り、江戸城のあった皇居を目指して歩くオリジナルルートです。