National Park Walk 02
雲仙温泉
(雲仙天草国立公園)
01/14/2021
美しき地獄の生きる大地を歩いて
キリシタン殉教の舞台となった雲仙地獄。ここは硫黄のにおいと水蒸気が周囲を満たす、まさに地獄のような風景だ。お糸、清七などと名づけられたいわゆる「地獄」は、現在30あまり。これらは地下の火山活動とともに、少しずつ移動しているとか。このあたりを少し歩けば、雲仙という地が限りないエネルギーに満たされ、今も変動し続けていることを実感できる。
ダイナミックな大地の営み、野鳥や高原植物の宝庫とされる雲仙に来たら、温泉やグルメだけでなく、自然のなかを歩くのが正解。そこでこのエリアでは環境省のレンジャー、堀松隆久さんにトレイルを案内してもらうことにした。
「花や鳥が豊富でマニアの方にはたまらない場所。2週間もすると新しい花に入れ替わってくるのでいつ歩いても楽しいんですよ」
見渡せば、夏から秋に開花するアジサイ科のノリウツギが周囲を彩る。秋が深くなってくればものすごい数の楓が艶やかな紅葉で歩く人を楽しませてくれる。歩を早め、木々の合間を除くと、勇壮な山々が見えてきた。そのひとつである平成新山を指差し、堀松さんはこう話す。
「噴火して30年経ちますが、まだ登ることはできません。平成にできた長崎県の最高峰(1,483m)ですから、いつか登ってみたいですね。また、島原半島は海岸から雲仙普賢岳(1,359m)へ登るシートゥサミットが楽しめます。トータルの歩行距離は25kmくらいで、2,000m登って1,300m下って雲仙温泉街に到達するルート。12時間ほどかかりますがおもしろいですよ。がっつり歩きたい人にとっても楽しめる道もあります」
景色のいい場所でランチをゆっくりとって2時間ほど。僕らは歩くことで、温泉に浸かっているだけじゃ絶対に味わえない九州の限りないエネルギーをじんわり、身体に染み込ませた。
PAPERSKY no.63 | KYUSHU’S NATIONAL PARKS
九州の4大国立公園を巡り、各地の「食」をサンドウィッチで味わうロードトリップへ。旅のゲストは「CHALKBOY」こと吉田幸平さんと「青果ミコト屋」鈴木鉄平さん。
ルートマップ | NATIONAL PARK WALK 02
PAPERSKYと登山アプリ「YAMAP」が共同制作した、NATIONAL PARK WALKのルートマップです。詳細はこちらのリンクから。YAMAPのアプリをダウンロードして、九州の国立公園をめぐる冒険に出かけましょう!
text | Miguel Utsunomiya
photography | Masahiro 'Lai' Arai (SunTalk)