阿蘇火山の恵みに感嘆
日本一の地下水都市ともいわれる熊本では、熊本市に暮らす約74万人の水道水源を100%地下水でまかなっている。阿蘇山による恩恵なのだが、なかでも南阿蘇村には、日本名水百選に選定されている白川水源をはじめ11ヵ所の湧水地がひしめき、地域の人の生活用水に利用されている。火砕流の堆積物により形成された大地に降り注いだ雨は、長い歳月をかけ自然のフィルターをとおして伏流水となり、こんこんと湧き出る。まさに火山の恵みだ。
阿蘇山とは高岳、根子岳、中岳、杵島岳、烏帽子岳の五岳の総称。連なる山の姿とカルデラ、周辺の草原が調和する美しい景観は見飽きることがない。「南阿蘇ガイドクラブ」会長の中島一美さんに導かれ、水を巡る散策と草千里へ出かけた。愛用のバッグには阿蘇の立体地図をはじめたくさんの資料を携え、歩いて立ち止まってのテンポいい集落散歩。水源ではお話に重ねてせせらぎのBGMが流れ、残雪残る2月の草千里では地球活動による悠久の時の流れに敬意を抱く。そんなひとときを過ごした。
ひと晩泊めていただいた「SOCKET」の窓から、カルデラ内の人と自然の営みを望むことができる。20年以上使われていなかった牛舎をリノベーションして2019年に開業した宿は、1階が戸外のオープンキッチン、2階が客間の一棟貸スタイルのユニークなゲストハウスだ。オーナーの前畑恵梨子さんご家族の人柄にもほっと安心する。キッチンを活用したり、ご近所の温泉へ散策したりして過ごす。翌朝、また帰ってくることを想像しながら前畑さんご家族に見送られてこの地をあとにした。
*2020年9月26日(土)・27日(日)に開催を予定しておりました「PAPERSKY ツール・ド・ニッポン in 南阿蘇」は、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、開催を中止させていただくことになりました。楽しみにしてくださっていた皆様にはご迷惑をおかけし、申し訳ありません。ご理解の程、何卒よろしくお願いいたします。