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Sections 1&2

TOKYO TREE TREK (TTT)

北品川から新宿御苑へ

 

07/08/2024

最初は、東京といえばどこまでも広がるビルの地平線、世界でも人口が多い大都市という典型的な風景しか思い浮かばなかった。しかし、執拗なほど点灯し続ける電光掲示板とコンクリートのビル群、絶え間ない雑音の向こう側には、人知れず都会の緑が存在していたのだ。

東京に広がるグリーンスペースと樹木を再発見する試みが始まった。日本のトラベル・ライフスタイル誌「PAPERSKY」の編集者ルーカスB.B.とバルコ香織による半年間のリサーチによって、東京ならではの文化と樹木の歴史を探求することができる、細部まで気が利いたトレイル「TOKYO TREE TREK=TTT」が完成した。

ルートは混雑した都市の中でひっそりと存在している場所を通過しながら、東京をぐるりと渦を描くようにして巡る約60kmのコース。大通りを避けながら、静かな場所を通りつつ、ユニークな路地など興味をそそられるスポットが意図的に散りばめられている。コースは6つのセクションに分かれていて、自転車、ハイカー、ランナーたちがそれぞれ自分の好きなペースで、好きなルートをピックアップして、東京の歴史と美味しい食文化を巡ることができる。


北品川から新宿御苑へ

スタート地点の品川神社(1187年)は、緑に囲まれながら、忙しい世界を見下ろすように佇んでいる。高さ15メートルの富士塚 は、1869 年に富士山を実際に登ることが困難だったかつての富士山信仰者(富士講)のために、人工的に溶岩を積み上げて造られた山。そこに立つと、北品川からお台場に向かって広がる独特な風景を見渡すことができる。ルートは品川神社から、かつて江戸から京都に続く東海道の品川宿として賑わいを見せていた旧道に沿って、全国から寄贈された街道松が植えられた商店街を抜ける。古くから大勢の人に親しまれてきた「伊勢屋」に立ち寄って、これから始まる旅のために和菓子とおにぎりを購入した。

五反田方面に向かいながら坂を上がると御殿山庭園がある。歴史ある桜並木と季節ごとに楽しめる草木花の周りには水が流れ、清涼感溢れる滝の音が聴こえてくる。その数キロ先の登り坂に、かつては岡山藩主・池田氏のお屋敷だった回遊式庭園、池田山公園がある。日本古来の植物に囲まれながら、中央に池があり鯉が自由に泳ぐ静かな空間の中でゆったりと流れる時間を贅沢に満喫することができる。

比較的、静かな裏道をさらに北西に進んでいくと、高級住宅街、白金台に出る。そこには高松藩主、松平頼重の下屋敷であった6万坪(20万ヘクタール)もある、国立科学博物館附属自然教育園が広がっている。大都市にもかかわらず、整備された芝生やコンクリートはなく、自然林の散策を楽しめるトレイルや、湿地や沼に囲まれたその場所は、自然そのものが本来の姿で保存されている貴重な森と言えるだろう。このような自然保護地区を通して、何百年も前の東京の姿を想像することができる。

ここで、注目すべきは、樹齢400年のシイノキと樹齢350年の「物語の松」だろう。そこからすぐ近くにある八芳園にも、美しい庭園がある。みごとな盆栽が連なる「盆栽ロード」や樹齢500年以上の盆栽まで歴史的な建物や遺物がバランスよく調和して、四季折々の美しい庭園をかたちづくっている。八芳園内のスラッシュカフェでは、東京郊外(国分寺)の小坂農園から届いた、その日その時のオーガニック野菜を使ってシェフが作りあげるお料理を楽しむことができる。 

東京都天然記念物にも指定されている旧細川邸のスダジイ

静穏な庭園を通り過ぎると、ネオゴシック建築の明治学院記念館が見えてくる、二本榎(にほんえのき)通りを3kmほど進み、歴史建築物として指定されている灯台のような火の見櫓がある高輪消防署の手前を左折して進んでいくと、赤穂事件で知られている赤穂藩の浪人17名が切腹した流血の歴史で有名な大きな「旧細川邸のシイ」がある。そこから麻布十番へ向かう途中、おそらく東京一のいなり寿司専門店「呼じろう」がある。その小さな店舗は、昔ながらの笹の葉に包まれたいなり寿司だけを販売している。

さらに入り組んだ路地と坂を桜を楽しみながら進んでいくと、麻布山善福寺(824年)に到着した。そこには都内最古と言われる樹齢800年のイチョウの巨木がある。次の目的地はドイツ大使館の並びにある有栖川宮記念公園。麻布の丘や谷に沿うように濃い緑があり、池があり、ここにも鯉や亀が生息している。そこからすぐの裏通りには、ツリーハウスが人気のカフェ「レ・グラン・ザルブル」がある。

広尾から外苑西通り沿いを北に向かって左に入り坂を進むと、日本赤十字社医療センターへ至るその敷地内に樹齢300年のアカマツの大木「宗吾の松」がある。佐倉惣五郎が重税に苦しむ農民のために将軍への直訴を行い処刑された話が、歌舞伎の題材にもなった「佐倉義民伝」に登場する。

そのまま大通りに出ることなく國學院大學を通り過ぎて、渋谷に続く道の先には、プラタナス、ケヤキ、竹など濃い緑に包まれた氷川神社がある。土俵のある境内を抜けて、金王八幡宮へ。渋谷の発祥地(920年前)と言われる金王八幡宮には、「金王桜」と呼ばれる1600年代に植えられた、渋谷区の指定念物の桜がある。

緑豊かで心地よい金王八幡宮へ。江戸三名桜「金王桜」も見どころのひとつ。

丹下健三が手がけた国立代々木競技場を横目に進み、迷路のように不規則に広がる代々木公園の先には明治神宮がある。1920年に建てられた広大な敷地のために、全国から365種類が献木され、12万本もの樹木が広大な敷地を埋め尽くす。気候風土に合わせて植えられているため、人の手によらずとも森は自らの力で成長することができ、成熟した森となったのは、つい最近のことである。

明治神宮への道のりも、季節ごとに景色を楽しみながら歩くことができる

原宿から千駄ヶ谷の裏道を通り抜けていくと、セクション1 & 2の最終地点である新宿御苑にたどり着く。都会的な高層ビルの元に位置する御苑には、絶命危惧種と言われる140 種類が栽培され、1万本の木があるという。自転車の持ち込みが禁止なので、門の外に自転車を置いて入る。夕陽に染まるマジカルアワーであれば、至福の体験となること間違いなし。

TOKYO TREE TREK(TTT)の全セクションはこちら
Sections 1&2 北品川から新宿御苑へ
Sections 3&4 新宿御苑から浅草へ
Sections 5&6 浅草から皇居まで

TOKYO TREE TREK(TTT) ROUTE MAP

PAPERSKYが創案した、東京の樹木をつないで歩く約60kmのトレイル。江戸の玄関口として旅人を迎えた品川宿(北品川)を起点に、時計回りに渦を描くようにぐるりと巡り、江戸城のあった皇居を目指して歩くオリジナルルートです。