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Olympic Architecture Cycle

自転車で巡る
東京オリパラ名建築

東京五輪開催時に建設された素晴らしい建築物から、新設された国立競技場まで、東京2020オリパラ会場を自転車で巡ってみた。

07/29/2021

東京2020オリパラの準備期間は数年間にも及び、莫大な投資がされているものの、開催期間はそれぞれ2週間足らず。そんなわずかな期間の大イベントのために、インフラは大幅に拡張、多大なリソースも投じられて、1964年の東京オリンピック開催時と同様、街の風景を大きく変える建設も多数行われた。インフラも万全に整い、1964年の東京五輪開催時に建造された記念すべき施設も再利用されることになった今回のオリンピック・パラリンピックを機会に、かつてのオリンピックの主要会場を中心に5カ所を自転車で回ることにした。まずは、世田谷からスタート!



駒沢オリンピック公園

1964年のオリンピックでは、レスリング、サッカー、バレーボール、フィールドホッケーの会場になったが、残念ながらこの公園内の施設は今回の大会では使用されることはない。

1958年に芦原義信が設計したこの大型スポーツ施設は、かつて昭和天皇が英国皇太子、プリンスオブウェールズと親善ゴルフを楽しまれたゴルフ場の跡地に建造されたものだ。公園の電気、水道、通信、ガスの中枢である、仏塔を思わせるオリンピック記念塔や屋根の形状が印象的な体育館が見ながら、四季折々の自然が楽しめるサイクリングコースはご機嫌!


国立代々木競技場

世田谷区からほぼ直進して、代々木公園の南端にたどり着くと、国立代々木競技場が見えてくる。1964年のオリンピックでは、水泳、飛び込み、バスケットボールの会場となったが、今回のオリンピックではハンドボール、車椅子ラグビー、バドミントンの会場となる。

著名な建築家、丹下健三の設計によるこの建物は、存在感のある彫刻的なシェイプとカテナリー曲線を描く屋根が施された未来的なデザインで、当時「SFオリンピック」と称された面影を残している。日本のセンシビリティと当時の最先端工学技術を結集させて建造させたこの建物は、日本の名建築の一つである。


国立競技場

千駄ヶ谷から緑豊かなルートをさらに進んで走ると、明治神宮外苑が見えてくる。ここには、今回のオリンピックのために新設された国立競技場がある。建設費用1569億円、6万人が収容できるこのスタジアムは、木と鉄のハイブリッド構造。かつて、この地には1924年に竣工した明治神宮外苑競技場があった。

設計を担当した隈研吾は子供の頃、丹下健三が設計した国立代々木競技場のプールに通っていた体験から、建築家を志すようになった。当初はそのデザインが物議を醸し出した英国人建築家、ザハ・ハディッドの設計により建設される予定だったが、総工費の問題から、隈研吾にバトンタッチ。2019年11月に竣工され、オリンピックの開閉会式、陸上競技などが開催される。


東京体育館

千駄ヶ谷駅に隣接しており、新しいスタジアムの反対側に位置するこの施設の周辺をゆるりとサイクリングするのは楽しい。1954年世界レスリング選手権の際に建設されたこの施設では、東京五輪開催時、メインアリーナで体操競技、屋内プールでは水球が開催された。今回のオリンピックでは、卓球が開催される。

キラキラしたカブトムシのような形状の屋根は、プリツカー賞を受賞した建築家、槇文彦が’80年代後半に新たに設計したもの。収容人数は、10,000人で、コンサートなど、さまざまなイベントに使用されている。


日本武道館

明治神宮前をぐるっと回って、赤坂御所に沿って皇居の北側を目指して走っていくと、今回のサイクリングツアーの終点、北の丸公園にある日本武道館に到着する。

山田守の設計によるこの建物は、1964年の東京オリンピックの柔道競技会場として開館した。1966年に来日したビートルズがこの場所でコンサートを開催して以来(当時、ロックは武道の精神を汚すものとなるという反発の声もあった)、日本武道館は大物ミュージシャンのコンサート会場としても有名になった。今回のオリンピックでは、空手と柔道の会場となっている。

既存のインフラを活用し、昭和の東京五輪の施設を再利用することは、サステイナブルな未来社会に向けての素晴らしい試みだ。公共施設なので、気軽に見学はできないが、サイクリングをしながら、これらの施設を巡っていると、1964年のオリンピックが東京にもたらした素晴らしい遺産の存在感にあらためて圧倒される。