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「NALUTO TRUNKS」が横乗りする
鳴門のローカリズム

そのサーフトランクスは手作業から生まれる。クラシックなスタイルで、日本唯一のカスタムオーダー。徳島県鳴門市にある工房を訪ねると、まず出迎えたのは、カリフォルニアを彷彿とさせるヤシの木。ドアの向こうからは、ミシンの機械音が聞こえてきた。

10/16/2024

ダッダッダッダッダッダッ……ミシン針がリズミカルに上下動する。完成までに使い分けられるミシンはなんと8台以上。工房で出番を待つミシンは約30台。「NALUTO TRUNKS」のサーフトランクスは、機械化・自動化が声高に叫ばれるいまなお、職人が一着一着に丹精を込めて縫製している。

「皮膚を擦らないようにするには、一着に数種類のステッチを採用しなければいけん。こう見えてけっこう難しいんよ。もともと水着の縫製工場をやっとったから、そこで培われた技術力のおかげやろうね」

陽気な声でそう語るのは、代表の山口輝陽志さん。水着の量産工場だった家業を受け継いだ後、2008年に自らのブランドを立ち上げた。筋金入りのサーファーであり、故郷の鳴門と、サーフィンの本場たるアメリカ西海岸の海をこよなく愛する。

「自分が好きなのは、1950年代から70年代のカリフォルニアのサーフカルチャー。でも、クラシックなボードに合わせるような、クラシックなサーフトランクスはなかなかない。そこで趣味として作るようになったのが始まりかな」

一般的なサーフトランクスはナイロン製だが、山口さんが手がけるのは多くがコットン製。より丈夫で長持ちするうえ、リペアも積極的に受け付ける。約2万通りからのカスタムオーダーといい、独自の縫製技術への自信に裏打ちされている。

「じつは『鳴門足袋』っていう伝統産業があるくらい、昔からこのへんは縫製業が盛んな土地やから。でも、タオルで有名な愛媛の今治なんかと違って、全国的には全然知られていない。徳島の人はPRベタというか、地元を大事にしすぎるというか……東京に負けないようなことをやっている人は、こっちにだってたくさんおるよ」

たとえば、旧撫養街道に面した「The Coffee Beans」という喫茶店。マスターが淹れるコーヒーを山口さんは高校時代から飲んでいたそうだ。築90年の古民家をリノベした内装といい、スペシャルティコーヒーの品揃えといい、そこですごす時間は格別に違いない。

四国遍路の5番札所である地蔵寺にほど近い「FUJIMURA BAKERY」は、山口さんが四国一の味と太鼓判を押す。焼きそばパン、ウインナーパン、クリームパンなど学食を思い出すようなパン40種類ほど並び、たいてい昼には完売してしまうという。

「サーフィンの根本はローカリズムやから。徳島県人の本物の仕事に触れてほしいな。うちも責任をもって縫製しつづけるし、今年から、東京を飛び越えてカリフォルニアに卸すつもり。太平洋の反対側で地元のサーファーが『NALUTO』の文字をまとって波に乗っている姿を想像したら、ワクワクしてくるやろ」




山口輝陽志 / Kiyoshi Yamaguchi
徳島県鳴門市生まれ。NALUTO TRUNKS & CO.代表。高校卒業後、アメリカ西海岸でサーフカルチャーの洗礼を受け、サーフライフを送るようになる。2008年に「NALUTO TRUNKS」を立ち上げ、日本唯一のカスタムオーダーメイドのサーフトランクスを手がける。