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“私らしく”を表現できるこの土地で

安藤桃子/映画監督

Kochi Woman 04

母なる太平洋と、南国然と降り注ぐ太陽。 こうした天恵のもとで生きる高知の女性は、底抜けに明るく、たくましく、誰よりも働き者。そんな県民性を有する女性たちのことを、高知では「はちきん」と呼ぶ。移り住んできた人であっても、この地に根を張ると自然と“はちきん”化していくのもまた不思議。 しなやかに生きる、はちきんたちの個性豊かなストーリー。

07/26/2021

肩書きに縛られない生き方と出会って

映画監督の安藤桃子さんが初めて高知を訪れたのは、約8年前。映画『0.5ミリ』のロケ候補地として視察しにきたときのことだった。

「空港に降り立った瞬間に、自律神経が解けていくような感覚になったんです。空港から街へ向かう道もなんの変哲もないのに、空気が違う。ここは何かが違うっていうのを直感で感じて。その日のうちに高知で撮るって決めて、撮影中に移住することを決めました」

そんな風に直感で高知への移住を決める人は、少なくない。桃子さんいわく、「母性に刺激を与えてくる県」だという。移住後は結婚し、出産し、離婚してシングルマザーに。変化する暮らしのなかでも、桃子さんはつねに前向きかつパワフル。監督業以外にも、映画館「キネマ M」の立ち上げ・運営をはじめ、演劇や映像製作などを通じて人材育成する「桃子塾」、ラジオ番組、イベントのプロデュースなどなど。独創的なクリエイティビティを発揮する機会は、引きも切らずだ。

1年半の期間限定で誕生した映画館「キネマM」

「高知の人たちは肩書きで生きていない。本来の日本人の姿だと思うんですけど、立場とか肩書きとかではなく、“命”として他者と向き合っていて弱者にも優しい。そんな高知で暮らすうちに、自然と“映画監督”という肩書きが消えて、“映画監督として何を届けたいか”を中心になんでもするようになった」

リーダーを務める異業種集団「わっしょい!」は、子どもたちの輝く未来を目指すプロジェクトだ。自然体験と食を軸にした活動を行うなか、昨年は畑で大豆を育てるところから始め、今冬はその大豆で地域住民とともに味噌を仕込んだ。神社の境内で、老若男女が一丸となって味噌づくりに励むシーンに、桃子さんは未来の縮図を見た気がした、と語った。

「“すべての命が幸せな世界を” なんて話をしたら、甘い!っていわれる社会もあるけど、あの場には確実に幸せな社会の縮図があった。高知は、私たちが生きていきたい未来の姿にいちばん近い場所だと思うんです」

「親子でみそづくり with LIVE music !」の様子
自家栽培の大豆をはじめ味噌の原料はすべて高知産

安藤桃子 Momoko Ando
1982年、東京生まれ。 高校時代よりイギリスに留学し、ロンドン大学芸術学部を卒業。 その後、ニューヨークで映画作りを学び、助監督を経て 2010年『カケラ』で監督・脚本デビ ュー。2014年、自ら書き下ろした長編小説『0.5ミリ』を映画化。同作で報知映画賞作品賞、毎日映画コンクール脚本賞、上海国際映画祭最優秀監督賞などを受賞し、国内外で高い評価を得る。『0.5ミリ』の撮影を機に2014年高知へ移住。ミニシアター「キネマM」の代表や、表現集団「桃子塾」塾長、ラジオ番組「ひらけチャクラ!」(FM高知)のパーソナリティも務めている他、子どもたちの未来を考える異業種チーム「わっしょい!」では、農・食・教育・芸術などを通し、子どもたちの感性を育む活動にも力を注いでいる。

PAPERSKY no.64 | MODERN NOMAD
火を囲み、釣った魚と地元の食材で調理しながら、心と身体と魂を開放する高知の旅へ。旅のゲストは旅する料理人の三上奈緒さんと、釣り師の BUN ちゃんこと石川文菜さん。
text | Yukiko Soda photography | Tetsuya Yamamoto