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Issue 73

YUNNAN Mushroom Magic

[ ゲスト ]
奥村忍

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今号の特集は「Mushroom Magic issue」と題し、奥深きキノコの王国・雲南省へ旅立ちます。「世界の頂上」こと、ヒマラヤ山脈に連なる高山の風土によって育まれたキノコ文化をともにひもとくのは、「みんげいおくむら」店主・奥村忍さん。

中国の手仕事や民藝へのまなざしを通じて、雲南の土地や人々に根差す精神性、世界観、食と伝統文化を学び、マッシュルームジェラートやマッシュルームフェスティバルなど、日本では触れることのできないポップ&カルチャーアイコンにもなっている雲南キノコの現在地を探ります。さあ、自然科学と人文が交差する魅惑のマッシュルームツアーへ。未知なる味覚と思想の扉をそっと開き、雲南が秘める“魔法”を視覚的に発見する旅へと誘います。

Editor’s Letter

No.73|YUNNAN(2025) 

雲南 きのこマジック

文:ルーカス B.B.


雲南ではキノコは単なる食べ物ではなく、この世界を見せてくれる存在でもある。夜中に芽を出し、朝には姿を消し、季節が巡ってくればまた姿を現す。現れては、消えて、再生する。彼らは、それが生命のリズムだと教えてくれる。今号では、「みんげい おくむら」の店主・奥村忍さんと、中国・雲南省のキノコの山々を巡る旅に出た。市場を歩き、ありとあらゆる形や色をしたキノコを味わい、森の賢者たちとともに生きる人々に出会った。

昆明から大理、麗江から香格里拉へ。僕らは自然と文化が美しく溶け合う風景に遭遇した。

昆明の24時間営業のキノコ市場では、籠から溢れんばかりの干巴菌が並んでいた。その側には、切ると白い液体を出す奶浆菌、鮮やかな青色で、生食は危険だが調理すればおいしい見手青、肉厚で燻製のような香りを放つ鶏縦。特に汚れを落としにくい鶏縦は、根っこが絡まったように山積みになっていた。売り手はキノコの傘をひとつずつ磨き上げ、屋台はさながら森のアートギャラリーのようだった。

山のキッチンでは、鉄鍋のなかでこうした宝物が煮立っていた。竹蓀と繡球菌から出るクリーミーな出汁と、松と雨が混ざり合ったような香りが漂う。しかし、キノコが満たすのは食欲だけではない。低カロリーでありながら高タンパク質、ミネラル、ビタミンB群を豊富に含み、免疫システムを強化し、炎症を抑え、心と身体を養う。その成分は医薬としても用いられ、民間伝承と現代科学が結びつき、医食同源が最高の食であることにも気づかせてくれた。

3人の“キノコの女王” —小麗女王、登舟女王、真好女王が、僕らをこの生きたネットワークへと案内してくれた。彼女たちは、キノコ狩りや料理、キノコ色素を使った染色など、それぞれに異なるクリエイティビティをもっている。そしてともに、森と文化、工芸をつなぐ、目には見えないイマジネーションの網を編み上げているのだ。

魔除けとして木版に刻まれた甲馬が目に見えない世界を守護しているように、森のなかに隠れた菌糸の網も、目には見えないところで根と木々を結び、人々と土地をつないでいる。そして、刺繍が施された布や銅鍋、籠といった手仕事にも、こうした叡智が宿り、深いところですべてがつながっていることを思い出させてくれる。

アーティストのマエダユウキによる今回の表紙は、この世界観を完璧に表している。上海発のアウトドアブランド「An Ko Rau」を身にまとった奥村さんが、キノコの森に分け入り、目に見える世界と見えない世界の狭間を歩いている姿だ。

ようこそ、雲南の森とキッチン、イマジネーションを巡る魅惑のキノコの旅へ。一歩、また一歩と踏み出せば、すべての生命をつなぐ目には見えない世界へ、キノコが僕らを近づけてくれる。

Soundtrack

YUNNAN

PAPERSKY Soundtrack For Travelers
旅する音楽 雲南編

このプレイリストは、これから旅に出る人たちのために選んだ、架空の旅の音楽。雲南編の始まりは、この土地に根づくトラディショナル音楽から。山岳に暮らす人々の生活や祈りが響く音色に耳を傾けながら、〈Mushroom〉の名を掲げた曲たちが次なる景色へ導く道しるべとなり、聴き手を幻想的な森の奥へと誘います。民俗と現代、土と空、現実と幻のあわいを漂いながら、雲南キノコの不思議な世界観を音楽でも追体験していただければ幸いです。

Selected by:
GOOD NEIGHBORS’ MUSIC VENDER
鳩貝建二 (BAGN Inc.)

  1. SUO / A Ka Gang Rui / Ai Bao & Yi Zhuai
  2. FENGTONG DRUMS OF MANGLAI / The People’s Rhythm
  3. MUSHROOM / Happy Tobi & Jost Esser
  4. MUSHROOM SAMBA / Saib
  5. DISKO MUSHROOM / Sunni Colón
  6. MUSHROOM / Joachim Kühn
  7. BROKEN PROMISES / Quiet Village
  8. SPORES / Cloudchord
  9. FUNGI / Emilio’s Quartz
  10. I SING HIGH / Sam Gendel & Sam Wilkes

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