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Japan Long Trail Walker

森林が燦々! 森から生まれる里山の未来を探しに

因幡街道 岡山県西粟倉村

奈良時代には歌人の大友家持が、江戸時代には宮本武蔵が行き来した因幡街道。播磨国(兵庫県)姫路と因幡国(鳥取県)鳥取を結んだ、かつての交通の要衝だ。今回は因幡街道の坂根宿が置かれていた、“最先端の田舎”こと、西粟倉村内を歩く。人工林を未来に生かすビジョンに耳を傾けながら林道を歩き、旧道の歴史をたどり、原生林に癒され、一流店顔負けのスイーツや料理に心奪われる、そんな1泊2日のハイクトリップ。

06/20/2025



“最先端の田舎”で出会う人々


岡山県と鳥取県、兵庫県の県境、中国山地の山里にある西粟倉村の玄関口、智頭急行あわくら温泉駅に降り立ったのは、季節外れの大雪が降った翌週のことだった。北側に見える山は扇ノ山だろうか、その頂は真っ白だ。

人口約1,300人のこの村が“最先端の田舎”と呼ばれるのは、県外からローカルベンチャーが集まり、続々とスタートアップが誕生しているから。そのベースにあるのが、村の9割強を占める森林に新たな価値をもたせるという「百年の森林(もり)構想」だ。

戦後に植林されたスギ、ヒノキの人工林は木材価格が下がったことで林業の後継者不足に陥り、荒廃する一方だった。そんななか立ち上がったこの構想では、林業の6次産業化や「上質な田舎」というブランディングにより、森を中心とした地域創生を掲げ、西粟倉産ヒノキのプロダクトで高い評価を得る家具メーカー「ようび」のような事業者を呼び寄せるようになった。

岩肌にまぎれてひっそりと立つ役行者像は、パトリックさんのお気に入り

そんな森づくりを体験するために出かけたハイクトリップ、ナビゲーターを務めてくれたのは、1年前、この村に移住を果たしたアメリカ人の岸田パトリックさんと、隣接する東粟倉で「GGファーム」を営むハンガリー人のカルマール・ゲルゲイさん。このエリア、じつは外国人居住者が無茶苦茶多いのだ!

こちらは西粟倉村に隣接する東粟倉エリア(美作市北部)にあるGG FARM。農業家のカルマール・ゲルゲイさんは年間100種以上の作物を少量ずつ栽培する。美しく生き生きとした作物は、「インスピレーションを与えてくれる」としてシェフや料理家から高く評価されている
「GGファーム」で収穫した春の作物

1日目は村内に残る原生林、若杉天然林を目指し、村の北側を歩く。しょっぱなに立ち寄ったのは、「にしあわくら小林菓子店」。地元出身のパティシエ、小林祐太さんがUターンを果たして開いたパティスリーには心ときめくケーキがずらり!

ビスキュイに重ねたエアリーなムース、つやつやのグラサージュ……。色とりどりのエディブルフラワーはゲルゲイさんが手塩にかけて育てたものだ。早くも初日のハイライトを迎えてしまったが、ここから若杉天然林へは9kmあまりの道のり。気を引き締めて歩き出そう。

「にしあわくら小林菓子店」の小林さん夫妻

多様な樹木が生い茂る若杉天然林は、中国地方でも有数の自然林。3kmと5kmの遊歩道が整備されており、おとぎ話のような森を快適に散策できる。散策後は、あわくら温泉を楽しめるゲストハウスへ。

こちらでは湯の加温や調理、施設内の暖房に、村内の間伐材を利用している。夕食には地元のジビエのコースをいただき、村の資源を満喫した。

若杉天然林から流れる吉野川の清流
ラドン含有量の高いラジウム泉を、地域の間伐材を活用した薪ボイラーで温めているあわくら温泉元湯。日帰り入浴も可
あわくら温泉元湯では、地域でとれた鹿肉や野菜を使った料理を楽しめる


さまざまな生物が暮らす森を目指して


2日目は因幡街道の屈指の難所、志戸坂峠へ。美作と因幡の国境にあるこの峠道は牛馬も通らないほど険しく、冬季の雪も深いが、平安時代の書物にも登場する交通の要衝として、鳥取藩の参勤交代にも用いられた。現在はよく整備された登山道があり、明治時代の石垣もそのまま残る。

朝霧に包まれる、村を取り囲む山々

志戸坂峠を降りたら、村内の森へ立ち入る手続きのため、「百森」へ。「百年の森林構想」の山林管理・活用を担う「百森」は、森先案内人として山林案内も請け負う※ 企業。

パトリックさんは母国でのトレイルビルドの経験を活かし、ここのアドバイザーを務める他、妻の萌さんとともに「Tatara Trails」を立ち上げ、山林を活用したマウンテンバイクトレイルの整備やライドツアーの企画、トレイルランニングイベント「森々燦々ファンファントレイルラン」の実施などに取り組む。

当初の「百年の森林構想」は木材の価値向上を目指すものだったが、現在はパトリックさんたちの活動のように、木材を超えたより多様な森林の価値に目を向けるべく、「百年の森林構想2.0」が進められているのだ。

※西粟倉村の山林は林道作業を行っており、危険箇所があるため申請が必要。詳しくは「百森」の山林窓口www.hyakumori.com/matchingを参照。

春の訪れを告げるミツマタの花が咲いていた

「森の価値を高めるためには、さまざまな人に森へ入ってもらい、体験や遊びを通じて森や山に親しんでもらうことが必要です。私たちは多彩なアクティビティでそのお手伝いをしていきます」(パトリックさん)

彼が案内してくれたのは、村南西部の山林。造材や伐採など、山仕事の作業の音が、どこからともなく聞こえてくる。一帯はスギ6割・ヒノキ4割の人工林で、ここから切り出された材が家具や木製品、建材に利用されている。そのショウケースとなるのが、村の基幹施設「あわくら会館」。建材、家具、暖房の熱源までを村の木材で賄っている。

村の材を用いた建築がすばらしいあわくら会館は、西粟倉村の役場と図書館、生涯学習の機能を合わせた複合施設。写真の家具はすべて、村内でヒノキを使った家具や暮らしの道具を製作するようびのもの
「知社のお滝さん」と親しまれている岩滝神社。鬱蒼とした山肌に本殿が鎮座する
タイ人シェフが腕を振るう「あるの森」

林道をつないで約10kmの行程を歩き、再び市街地へ。粟倉神社では樹齢800年の大ヒノキを眺め、“知社のお滝さん”と親しまれている岩滝神社の御神体にお参り。帰り道に立ち寄ったのは「BASE101%-NISHIAWAKURA-」。カフェと木材&木工品のショップ、イチゴ狩り体験を提供する複合施設で、地元住民も移住者も村外からやってきた人も区別なく集まる憩いの場。

施設を統括する亀田惇さんは自身も移住者だといい、「移住者のエネルギーが、山里の村を大きく変えている」と話す。

休憩に便利な「BASE101% -NISHIAWAKURA-」
レストラン、カフェ、木材ファクトリーショップを併設する複合施設、「BASE101% -NISHIAWAKURA-」

「林業をきっかけに西粟倉村はローカルベンチャーのパイオニアとなり、ベンチャースクールを始めたことで林業以外の移住者が一気に増えました。“未来の里山づくり”という、次のフェーズに入っているように思います」

現在、西粟倉村では森林の新たな価値を掘り起こすプログラムの一環として、人工林を生物多様性のある森に変える取り組みがスタートしている。さまざまな生物が棲息する森に囲まれた魅力的な田舎像こそ、西粟倉村が思い描く未来の姿なのかもしれない。

「BASE101% -NISHIAWAKURA-」のカフェスペースでは、オリジナルの鹿肉ソーセージを使ったホットドッグが人気。このほか、低温調理で柔らかく仕上げた鹿肉のローストを載せた「森のジビエ鹿肉ロースト丼」も




Trail Guide
にしあわくら小林菓子店
岡山県英田郡西粟倉村影石591-1
TEL:0868-75-4115
あわくら温泉 元湯
岡山県英田郡西粟倉村影石2050
TEL:0868-79-2129
BASE101% -NISHIAWAKURA-
岡山県西粟倉村長尾461-1
TEL:090-2466-9378
あるの森
岡山県英田郡西粟倉村長尾818-1
TEL:090-8531-6189

百森
岡山県英田郡西粟倉村長尾657-1
TEL:0868-75-3898

Tatara Trails
岡山県英田郡西粟倉村長尾657-1
TEL:0868-75-3898


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text | Ryoko Kuraishi photography | Yasuyuki Takagi special thanks | Hyakumori