Connect
with Us
Thank you!

PAPERSKYの最新のストーリーやプロダクト、イベントの情報をダイジェストでお届けします。
ニュースレターの登録はこちらから!

Outdoors & Design 21

Jackie Boy Slim

ハンモックで揺れる、高尾でゆるやかに生きる

アウトドア愛好家でありデザイナーでもあるジェームス・ギブソンは、彼の2つの情熱である「アウトドアとデザイン」を融合させ、日本のさまざまなプロジェクト、アート、クリエイティブな活動やブランドに光を当てている。

01/22/2026

私たちがデザインするものは、すべて豊かな自然の恵みを感じるためのものです。



僕にとってテントは日常的なもの。ここ数年、ハイキングや小旅行の時も必ず持っていくアイテムだ。今持っているテントは、子供の時に使っていた重たい防水シートでできたテントとは天と地ほど差がある素晴らしい出来ばえのものだ。このアイテムは僕のアウトドアライフに欠かせないもので、これなしには成立しないと言ってもいい。

でも、もっと優しい肌触りで、自然に溶け込む方法はないだろうか?そんなことを考えていたら、いてもたってもいられなくなり、僕は高尾に向かった。ジャッキーのハンモックに乗りつつ、デザインや自然と共生することについて話をしてみることにした。

ジャッキーと会って、お互いに目覚まし時計をセットするのは、休みの日に山登りしたり、川釣りに行く時だけだねと笑い合った。その日の午後はいつもの休日とは違って、頭上からどんぐりが落ちてきたり、色づいた秋の葉から11月の日差しが漏れてくる。そんななか、僕たちはハンモックに乗って、アウトドアとデザインについて語り合った。

「ここでデザインしたものをテストするんです」とジャッキー。僕たちが話しているのでは、彼の工房である JINDAIJI MOUNTAIN WORKS 近くの小高い丘。眼下には都心が見渡せる。隣接する高尾山ほど賑わいはなく、人気スポットというわけではない。地元の人たちが眺望を楽しんだり、高校野球チームの練習に使われるような静かな場所で、ゆるやかな空気が流れている。

前回、彼と会ってから7年くらい経過しているだろうか。7年の間に、コロナがあったり、お互いの仕事に変化が生じたり、いろいろとあった。かつてはJINDAIJI MOUNTAIN WORKSのスタッフはジャッキーの愛犬、ミンガス(ジャズミュージシャンのチャールズ・ミンガスにちなんで名付けられた)を含め2人だった。今では、ミンガスを含め8人のスタッフが働いている。ただし、日によっては長いトレイルをハイキングしたり、新しい川釣りスポットを求めて日本中をサイクリングしているメンバーもいるので、常時8人いるとは限らない。

僕がオフィスを訪ねた日は、モリモト アユミさんが静岡のカツオトレイル沿いを歩いていたのだが、200kmもの距離を迂回して、今は全長約1,700kmの東海自然歩道を歩いている。彼女は3ヶ月間の休暇をとり、大阪府箕面市から高尾の工房まで、東海自然歩道を歩く予定だ。彼女こそ、ジャッキーが培ったフレキシブルで働きやすい職場環境を体現している存在だ。ジャッキーは、才能あるスタッフをリスペクトしている。メンバーたちは彼よりも2世代ほど若いが「素晴らしいアイディアとクリエイティビティに絶えず刺激を受けている」とメンバーを称賛する。

高尾という土地の魅力も忘れてはならない。この地は、昔から登山口の町として、職人、アーティスト、ナチュラリストを惹きつけてきた。今ではたくさんのトレイル・ランナーたちが集っている。ジャッキーの話によると、ここ3年ほどの間に、高尾では若い人たちが小規模なビジネスを粛々と立ち上げているらしい。

僕たちは「ごきげんベイク」と「高尾ビール」に立ち寄ってみた。どちらも地元の素材を使って旬のフードを提供している。どこで話をしても、隣のグループやコミュニティのアクティビティにつながっていく感触がある。

高尾の熱量が高すぎて、僕はここに来た目的をうっかり忘れてしまいそうになった。ハンモックについていろいろと学んで、カツオトレイルや今年の2月に開催されるOne Tree Academyにジャッキーを招待するために高尾にやって来たのだ。このイベントについては後ほど説明することにしよう。

翌日、工房に戻って、絶え間なく流れ続けるジャズに合わせてハミングしているジャッキーに時間を割いてもらい、ハンモックの話を聞いた。ハンモックをゼロから作る工程を見ながら、彼のデザイン・フィロソフィーについても語ってもらった。

まずは、3mのパラシュート素材を選択する。手拭いや風呂敷のように、素材のすべての部分を使用し、折りたたみ、縫い、結ぶという工程は何一つ無駄になるものがない。その後「日本的」というテーマで、古来から受け継がれたものという意味合いや、日本的な考え方、感じ方ということについても意見を交わした。

ジャッキーのハンモックは、その品質の高さはいうまでもないが、彼の作る製品の多くはさりげないきめ細かさと直感的なセンスが混在しており、素材と技術を活かした落ち着いたデザインになっている。

彼は、世界各国で作られているアウトドア・グッズは各国の気候により、少々デザインが異なっていると指摘する。高温多湿な夏と寒い冬が同居する日本には必ずしもマッチしない製品もあるのだ。

自分のオリジナルプロダクトを作り始めたのは、彼が思い描いているギアを作っているメーカーや職人が見当たらなかったからだ。このことは自ら製品を作る自信に繋がった。自らスペックを選定し、自分の好みと似ているアウトドアコミュニティのニーズに適った、日本特有の気候に適応できる製品を作らなければならないというミッションのような思いが自然と湧き上がってきたのだ。

ハンモックはジャッキーのニーズにフィットしていたし、テントに代わるとても快適なグッズのように思えた。軽量でコンパクトにまとまるので持ち運びに便利だし、テントと違って、地面に触れずに寝ることができるので、やっかいな虫たちとも無縁だ。工房のチームメンバーたちは、フライフィッシングに出かける際に頻繁に持ち歩き、川沿いの地面が平坦でない場所や、湿地などで重宝しているようだ。

使いやすく、応用性が高く、快適なハンモックは四季を通じて日本のアウトドアライフを楽しみには理想的なアイテムだ。前述したが、モリモト アユミさんもこのハンモックを愛用し日本全国を旅しているのだ。

ここで再びジャッキーがハンモックを縫うことに集中し始めたので、僕とミンガスはやわらかい陽だまりの中でじっと彼が作業を終えるまで待っていた。ほどなくして、ハンモックは完成した。カスタムメイドのカラビナと上下に開け口があり、設置も折りたたみも一瞬でできる造りだ。これにタープと彼のオリジナル商品である、カート・コバーンにインスパイアされてデザインしたポーラテックアルフのカーディガンを用意すれば、すぐにでもアウトドアへ出かけられる。


自然の中で過ごしていると、人間が本来持っているプリミティブな考え方になっていきます。自然は現代社会における個人的、社会的な課題にインサイトを与えてくれるのです。



もしあなたがハイキング、ランニング、サイクリング、フィッシング、キャンプ、あるいはこれらを組み合わせたものに関心があるなら、JINDAIJI MOUNTAIN WORKSで好みのグッズ、ファッション、道具、そして、セルフで作るギアに使える部品や素材が見つかるはずだ。おそらく宝の山のように思えるだろう。ぜひウェブサイトをチェックしてほしい。いや。むしろポップアップイベントに足を運んで、ジャッキーたちのアウトドア製品の唯一無二のスタイルに触れてほしい。

アウトドアのイベントと言えば、ジャッキーは、2026年2月7日、8日に僕とルーカスが開催するイベント、One Tree Academy Kawane にも参加してくれる。彼の仲間たちと一緒に一晩ハンモックで過ごしながら、ハンモックをもっと知ることができる貴重なイベントだ。モリモト アユミさんも東海自然歩道について話してくれるし、スペシャルゲストによるトークショーやワークショップもある。それと、フライフィッシングも少しできるかも。

One Tree Academy は、PAPERSKYとカツオトレイルのコラボによるアウトドア教室だ。この日、「トレイル・ラーニング(トレイルで学ぶ)」の哲学を実践し、カツオトレイルをバックアップしている組織であるDO lab.とともに、僕たちはウォーキングや自然とつながることがいかに人と地球を豊かにすることかについて体感していくつもりだ。

ローカルコミュニティ、アーティスト、そして、日々、自然を探索している人たちの知恵を、イベント、対話、ワークショップ、そして、クリエイティブ・ストーリーテリングを通じて、参加者の皆さんと共有することで、より広い世界を参加者のみなさんに知ってもらいたいと思っている。

参加人数は限られているので、ぜひ One Tree Academy のサイトにアクセスして、予約してほしい。また、「更新情報を購読する」をクリックすると、イベントの最新情報が入手できる。キャンプファイアを囲みながら、みなさんと語り合いたいと思っている。

今が旬のアップルシナモンロールとコーヒーをいただいていると、そろそろお別れの時間が来てしまった。高尾は見どころたっぷりなので、次回はいつここに帰って来られるだろうかということばかりつい考えてしまう。

石川県に戻る道中、お気に入りの温泉に立ち寄った。温泉からたゆたう湯気と、風の中に舞う雪を見ながら、僕はいつの間にか ジャッキーが成功について語った言葉に思いを巡らせていた。

「金銭的な不安がなく、健康で、適度に社会とのつながりがあり、もちろん僕のスタッフと仕事に携わるすべての人たちが幸せであってほしい。こんな状態が自分の自由時間(釣りに行く時間とか)を確保できつつ、続くことが、僕にとっての成功と言えると思います。僕の人生の目標ですね」

最高の生き方だ……

James

One Tree Academy
トレイルを通じて刺激的な事例から学び、自らの経験を共有することで、意図的にライフスタイルをデザインし、最高の創造的潜在能力を解き放つ場を提供し、イベントやトークショー、ワークショップ、ストーリーの共有を通じて、地域の知恵やアーティスト、アウトドア愛好家、日常の探検者たちの声を結び、日本から世界へと発信します。

<イベント情報>
2026年2月7日(土)〜 8日(日)
One Tree Academyは、静岡県・川根本町のカツオトレイル沿いにて、初の集いとなるイベント「Trail Walks & Campfire Talks #01」を開催。「歩くこと」「学ぶこと」「自然の中で過ごす時間」を軸に、ハンモックを実践であり、思想でもあるものとして捉える2日間のプログラムです。
▶︎申込はこちらから



If you liked this story you might like to read & subscribe James’s newsletter.