日本各地を旅するようになって25年以上が経つが、どこへ行ってもクリエイティブで、親切で、おもしろい人々に出会う。でも高知県ほど、ユニークな日本人に出会う確率の高い場所はない。人と違っていることは、むしろノーマル。変なところがあっても、高知の人々は自信に満ちていて自然体だ。つまりその人らしくあることに価値があり、多少変わっていても、高知ならたいてい、なじんでしまう。
PAPERSKYもユニークな雑誌だからか、高知は妙に居心地がいい。外国人編集長が日本人に向けて日本の魅力を発信するメディアを制作していると聞いても、高知の人は驚いたりはしない。それに、「女性のリーダーシップが必要」だとか、「アウトドアや環境を大切に」とか、「新旧を融合させた、より創造的なライフスタイルを」とか、「ローカルとグローバル、それぞれの文化を大事に」といったことを、あえて口に出さず、さり気なくやっている。
今回の高知取材では、ユニークなミッションを掲げて旅に出た。キーワードは「モダン・ノマド」。1週間ほどの旅のなかで、僕らは狩猟採集的な時間を過ごした。釣りをして、旬の食材を探し、海と山でキャンプして調理して食べる。旅のゲストは、釣り師のBunちゃんこと石川文菜さんと、旅する料理人の三上奈緒さんだ。
それと、このミッションを達成するために重要なことがもうひとつ。「はちきん」スタイルを伝えること。はちきんとは、高知の方言で、強くて独立した女性のことをいう。今回のゲストふたりが「ゴールデンはちきん」であったことは言うまでもないが、僕らはこの旅で多くのはちきんたちに出会った。この先、開かれていくであろう「モダンノマディズム」への道は、間違いなくこうした女性たちがリードしていくだろう。
そして、自由自在な移動と時間がより豊かなライフスタイルを実現し、それと同時に狩猟採集といった人間の本能的な欲求を満たすことで、人々はより深く地球とつながる機会を得るだろう。モダンノマディズムとは、交通手段やテクノロジー、ゲストハウス、地酒、サーフボードといった快適なものを取り入れながら、尽きることのない好奇心をもち続けて生きることなのだ。