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DANNER × PAPERSKY

OUTSIDERS

これからのトレイルタウン。新しい高尾と出合う旅

外遊びを楽しむ人々のフィルターで町を捉え直し、オリジナルのマップを制作していく連載「OUTSIDERS」。DANNERとPAPERSKYがコラボレートするこのシリーズのエピソード4として訪れたのは、年間の登山者数が世界一を誇る山「高尾山」の麓の町であり、日本有数のトレイルタウンである高尾エリアだ。

04/15/2025

日帰り登山のメッカとして知られるこの地域には高尾山、陣馬山など人気の低山が連なっているが、都市部からわずか1時間というアクセスの良さだけが、多くの登山客を集める理由ではない。

たとえば、高尾山や陣馬山は関東地方と中部地方にまたがる秩父連山(秩父山地)の一部であることから植生や生息する生き物が多種多様であること。また昨今では、日本で最初に誕生した長距離自然歩道である「東海自然歩道」の関東側の玄関口として、高尾は再度、注目を集めつつある。昨年には、「東海自然歩道」が開通50周年を迎えたことを機に実地調査が行われ、高尾山から大阪箕面を結ぶ全長約1,700kmのロングトレイルの整備も進んでいるのだ。

東京に位置しながら、豊かな自然に囲まれる高尾エリアを今回案内してくれるのは、UL(ウルトラライト)と呼ばれる軽量な装備スタイルをハイキングや釣り、自転車旅で提案するガレージメーカー『Jindaiji Mountain Works(JMW)』に勤めている黒田あゆみさん、新井篤史さん、森本あゆみさんの若きアウトドアギアのクラフトマンたちだ。

タープやハンモック、化繊のインサレーションウェアなどのULギアを制作し、トレイルランニングやハイキング、バイクパッキング、渓流釣りなどの遊びを提案するJindaiji Mountain Works(JMW)のスタッフ


町には新しいものを受け入れる“余白”が必要


さて、話は少し遡る。現在の高尾では日常の光景となったトレイルランナーが走る姿は、約15年前にはほとんど見ることはなかった。そう語るのは今回の案内役となる3人のボスであるJMW代表の尾崎光輝さん、別名ジャッキーさんだ。

ハイカーとトレイルランナーが混ざり合い、世代もスタイルも多様であることが現在の高尾地域のトレイルのいつもの景色だが、それもここ数年のこと。いまや日本のトレイルランニングシーンを牽引するメーカーや競技者の多くがこのエリアに拠点を持つことから、濃密なトレイルランニングコミュニティが形成されつつあるが、以前の高尾はどんな町だったのか。

「高尾に暮らす前から、東京の端っこにこんなにも豊かな自然があるんだって、一部の山を走る連中は気づいていました。ここは秩父連山の南東に張り出したところ。八ヶ岳で採れるような昆虫が採れるし、植生もかなり独特です。かつては平日夜に仲間たちと走りにきては、八王子の裏山を静かに楽しんでいました」( ジャッキー)

図らずも、ジャッキーさんと同時期に、トレイルランニング専門のブランド『Answer4』代表の小林大允さんや『Vivobarefoot』を扱うnomadics inc代表の千代田高史さんなどが高尾に移住し、まるで示し合わせたようにマイクロブリュワリーの高尾ビールが本格始動する。住民によってローカル発で生まれたクラフトビールは、住民たちをつないでいく一助にもなったという。

「移住してきた頃によく話していたのは、高尾には自然はあるけど、文化はないということ。ならばそれを僕らで作ろうって。八王子市に属する小さな町である高尾には、週末に登山客こそ来ますけど、ある意味では多くの市民からは背中を向けられていた地域だと思うんです。だからこそ町には余白があって、僕ら移住者が入る隙間というか、受け入れてもらえたのかなと思うことがあるんです。やっぱり、新しい土地で一から商売を始めることって、しがらみも多いですし、すごく大変だと思うので」(ジャッキー)

彼らの移動は基本、自転車。山へ川へと「遊べる場所がないと遊びを知れないので」と恵まれた環境を味わい尽くす日々を送っている


「つくる」、「売る」の先にある「体験を届けること」


JMWに勤める3人は、ミシン台を踏むクラフトマンだが、入社するまで家庭科の授業以来ミシンに触れてこなかったというメンバーもいる。

「コロナも一つのきっかけとなって、ものづくりしてみたいと思っていたんです。バイクロアに出店しているジャッキーさんと出会って、ここでミシンを習いたいと思い、入社と同時に高尾に移住してきました」(黒田あゆみ)

「元看護師で、どちらかと言うと私は引きこもりタイプだったんです。それがコロナ禍をきっかけに山にハマってしまい、結果、ジョン・ミューア・トレイル(ヨセミテ渓谷からマウント・ホイットニーまで340kmのロングトレイル)まで歩いてしまって(笑)。高尾に移住してしばらくは看護の仕事のために都心に通っていたんですが、あゆみさんとの出会いもあってJMWに転職を決めました」(森本あゆみ)

「僕はPNTと呼ばれるパシフィック・ノースウエスト・トレイル(アメリカとカナダの州境付近をつなぐ1,930kmのロングトレイル)を歩いたことをきっかけにイベントでジャッキーさんと出会って、アトリエに遊びにきたり、高尾を案内してもらったりするうちに、ここで働きたい、ここに住みたいって思うようになったのがきっかけでしたね」(新井篤史)


バックボーンはそれぞれだが、彼らに共通しているのは暮らしの中にアウトドアスポーツが根付いていることだ。そして、外遊びの体験とものづくりとが、とても密接に関わっている。

自らの手でギアをつくり、そのギアをフィールドに持ち出し、実際に使ってみることで得られる気づきが、彼らのものづくりにフィードバックされていく。

「前職では、マーケティング重視のものづくりに携わっていたので、今はそれとは真逆にいるなと思っています。JMWで大事にしているのは、手売りをすること。このギアを僕らが普段どう使っているのか、どんな外遊びが提案できるのか、それを一人一人に説明しながら販売しているんです。自分が見た景色や経験したことをギアに反映させて、同じような体験をギアを通して生み出せていけたらって思っています」(新井)

「休みの日に山に行くと、どこかでテストも兼ねているというか、仕事と遊びが半分ずつという感覚なんです。高尾に暮らしていて思うのは、職場から数10分でフィールドに繰り出せるので、私たちの仕事には、うってつけの環境だと思いますね」(黒田)

分からない人にポンっと売ることはしない。不特定多数にではなく、イベントなど一人一人に手売りしていく。効率的であることが価値とされるこの時代に珍しいが、このスタイルこそがJMWの魅力を模る要因ともなっている。

「まるでアクティビティの体験ごと売っているような気持ちなんです。誰かの思い出の1ページに自分たちが作ったギアが残るのは、すごく嬉しいですね」(森本)


山帰りにそのまま町へ繰り出せるブーツ


出社前には、ローカルの仲間たちとトレイルを走り、お昼休憩には近所の釣り堀にフライフィッシングへ。自転車通勤に、ときに退勤ラン、週2回は社員みんなでのグループラン。作業と作業の合間にワークアウトに励むことだってある。 さまざまなアクティビティが顔を出す3人の日常において、ダナーのブーツはどのように活用できるのか。

1932年にワークシューズメーカーとしてスタートしたDANNERが原点にかえり、原産国、素材、工程等を見直し、開発された『DANNER FIELD』。その『DANNER FIELD』をレトロリニューアルしたモデル「DANNER FIELD R」は、クラシックな見た目ながら、現代版ワークシューズとしてアップデート。ハイキングやキャンプはもちろん、タウンユースとしても活躍する

「高尾周辺の低山であれば、ダナーのブーツで登れます。でも、とくに気に入ったポイントは山に行ったブーツのまま、友達と町にも繰り出せるファッション性の高さです」(黒田)

「私たちの普段着は、そのまま山に行けるような機能性を持ったウエアなので、そういった服装にはこのブーツはとても合わせやすい」(森本)

また、“タウンユースの長靴感覚”という表現も彼らしさが滲み出ていた。

「山が近いこともあって、天候が突然変わったりします。なのでゴアテックスであることは嬉しい。町用の長靴としても活躍し、真冬は自転車に乗ると指先が冷たくなるので、防風性も高いのもいいですよね」(新井)

日常的に、アクティビティを通じて交流が生まれている高尾エリア。2024年には高尾駅南口に、京王電鉄がビルをフルリノベーションし、「KO52 TAKAO」をオープンさせた。テナントには、高尾ビールやトレイルランニング専門のブランド『Answer4』など、この土地ならでの個性溢れる小商が並ぶ


ローカルのあらゆる境界線を取り払っていきたい


「僕らは移住者ですけど、もっとこの町に長くいる人、地元の人の話も聞いてみたいですし、もっと交流していきたいです。今のコミュニティはどうしても移住者中心なんですが、山と町の暮らしはグラデーションでなだらかなのに、元から住んでいる人と後から来た人の境界線ははっきりしている気がしていて、そこは今後もっと改善していけたらいいなって思うんです」(新井)

これまでの「OUTSIDERS」シリーズでも、町と自然とを行き来する暮らしを数々取り上げてきた。高尾に暮らす彼らもまた、そんな環境下にいるが、改めて、その恩恵について考えさせられる言葉だった。

人と自然が交わっていくように、人と人が断絶せずに一つとなる社会。町と山を行き交い、人間も自然の一部であることを身をもって感じてきた彼らだから考えられる、これからのコミュニティのあり方。その答えはそう簡単には出ないが、その言葉から高尾エリアの明るい未来を垣間みたように思う。

最後に、3人の話を隣で聞いていたジャッキーさんが口を開いた。

「かつて高尾に背を向けて、都心の方に向いていた八王子の人たちとここ数年で少しずつ交流が生まれてきているんです。高尾エリアをみても、僕らが移住した頃とはだいぶ違って、この3人のような若い世代も増えています。この先も、また新しい高尾が立ち上がっていくのだと思いますね」



TAKAO Guide

黒田あゆみ
自身の手でモノづくりをしてみたいという想いもから、Jindai Mountain Works(JMW)に入社。それをきっかけに高尾に移住。現在は生産管理から後輩育成までを担うリーダー役に。趣味は、自転車、ハイキング、フライフィッシング。
IG: @kuroda_ayumi

森本あゆみ
看護師時代にアウトドアの魅力に目覚め、登山を始め、ジョン・ミューア・トレイル(JMT)など海外のロングトレイルを歩く。高尾への移住後、Jindai Mountain Works(JMW)に入社。趣味は自転車、ハイキング、フライフィッシング、時々アニメ。
IG: @morichang__

新井篤史
2019年に本格的に登山を始め、ULカルチャーに触れる中で得た気づきがきっかけでロングトレイルを歩く。2022年にパシフィック・ノースウェスト・トレイル(PNT)を歩いたことが一つのきっかけとなり、Jindai Mountain Works(JMW)に入社。趣味は、マウンテンバイク、ハイキング、トレイルランニング。
IG: @maru_.to._sankaku

DANNER
1932年創業のアウトドアブーツブランド。1950年代にはアメリカで初めてVIBRAM®を使用した登山靴を製作。1979年には世界初のGORE-TEX®ブーツであるダナーライトを開発。現在はマウンテンブーツからミリタリー、スニーカーまで各種ラインナップされている。
text | Ryo Muramatsu photography & videography | Masaru Furuya