古くからの陶器の産地・伊賀で、柏木円は江戸時代から続く「圡楽窯」の三女として生まれた。21歳のころ、実家の仕事を手伝うことになり、幼少時から眺めていた陶芸の現場を肌で感じ、「つくりたい」という感情が芽生えたという。その後10年にわたり、「圡楽窯」の職人として腕を磨いた後、自身のものづくりを追い求めるようになった柏木は、伊賀を離れ、益子へと創作の場を移した。
数多の陶芸家がしのぎを削る関東随一の産地で、地元のものとは異なる土に触れ、試行錯誤を繰り返すなか、試してみたのが磁器の土だった。
「つくりたいのはきちっとした、やさしいうつわ。伊賀の粘土とはまったく違うけれど、磁土は私がつくりたいものに合っていました」
ろくろをまわすとき、気持ちはいつも穏やかだという。手には慣れ親しんだマツのヘラ。「圡楽窯」の七つ道具のひとつだ。
「磁器の場合、普通はこんな柔らかい状態では削らないんです。でもね、圡楽でやっていたから、このほうが好きなんです」
理想の環境を求めて、柏木は伊賀に戻ってきた。実家の窯元のすぐそばで、大好きなうつわづくりの日々は続いていく。
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