スマートで美しい山道具をつくる|山と道 インタビュー

バックパックやサコッシュ、スリーピングマットなど、ハイキングに特化した軽量ギアを製作する「山と道」。U.L.(ウルトラライト)ハイクのスタイルと思想を体現するアウトドアブランドとして、2011年に夏目彰さん、夏目由美子さ […]

06/25/2012

バックパックやサコッシュ、スリーピングマットなど、ハイキングに特化した軽量ギアを製作する「山と道」。U.L.(ウルトラライト)ハイクのスタイルと思想を体現するアウトドアブランドとして、2011年に夏目彰さん、夏目由美子さんの2人が立ち上げた。日本のトレイルに合わせたバックパックの試作からスタートした「山と道」は、自らハイカーであることを誇りとし、ハイキングを通じて必要だと感じた道具を形にすることが製作の原点となっている。その姿勢は多くのハイカーの共感を得、世界最軽量クラスの山道具を作るガレージメーカーとして着実にそのファンを増やしている。 夫婦2人で製品の企画から製作までを行う「山と道」のものづくりの魅力について、夏目彰さんに話を聞いた。
前職では『GASBOOK』のプロデューサーとして活躍するなど、新しいアートやデザインを広く紹介しながら形にしていく仕事をしていた夏目彰さん。一方、由美子さんは、舞台やTV、コスプレなどの特別な衣裳を縫製する仕事をしており、お互い山やアウトドアに繋がる仕事はしていなかったという。山道具のどのような面に魅力を感じたのだろう。
「5~6年程前からどうしようも無いぐらいに山や山道具のデザインにはまりました。これまで扱ってきたデザインやアートはいろいろな意味で都会的で、刹那的で、流行的なものでした。それが魅力だと感じながらも、自分が年を重ねていくにつれて、より明解なデザインの美しさを求めるようになったのかもしれないのですが、山の道具のデザインに、その当時自分が求めているデザインの美しさを見出すことができました。明確に道具として求められる目的があり、アウトドアのスタイル、目的に対して、どこまで攻撃的にデザインができるか。全てが完璧な道具はありえず、何かしらの長所、短所が必ずあり、その中でどのバランスを自分が選ぶか、センスを問われる…。とても刺激的でした。そして、山を歩けば歩く程、自分ならこんな道具が欲しい。と思える事がたくさんあり、道具として形になっていないデザインがアウトドアの世界にはまだたくさんありました。特に、僕らがはまっているハイクに特化したデザインを作り出し形にしたいと思うようになりました」
機能を追求するための「目的のあるデザイン」としての山道具。さらに夏目さんは、U.L.ハイクの思想と出会うことで、「山と道」の立ち上げを明確に意識したという。
「本当に必要な道具は何かを問い、できるかぎり軽く、装備を少なくしていくことで身も心も軽くなり、より自然と長く向き合っていくスタイル。U.L.ハイクのスタイルの根底にはDIYの精神が流れており、自分がその当時随分とはまっていたソローの『森の生活』にも繋がるとてもスマートで美しいスタイルでした。パタゴニアもノースフェイスもゴーライトも今有名なアウトドアメーカーもほぼ全てガレージメーカーからスタートをしていることを知るとともに、夫婦2人でバックパックやタープを縫い上げて作れることがわかりました」
2010年には長期休暇をとり、ジョン・ミューア・トレイルをセクションハイクして、260kmを2人で歩き通した。この時の経験が、のちの「山と道」の製品づくりにも生かされている。立ち上げ後、最初の試作品として製作をはじめたのは、日本のトレイルに合った軽量のバックパックだった。
「アメリカのトレイルを歩いたときに、アメリカのガレージメーカーの作り出すU.L.バックパックが、アメリカのトレイルで使いやすいようにデザインされていることを実感しました。最初に試作したバックパック(山と道U.L.FlamePack ONE)は、日本のトレイルに合わせたバックパックを目指し、どこよりもハイクに特化したデザインであることと、背負った時の快適さを追求しました。春、夏、秋、冬、四季のハイキングを楽しめるように、ある程度の重量も快適に背負えるよう、何度も試作を続け、改良を加えました」
山と道の道具は、自分たちが山をハイクする中で気がついたことや必要だと思えることを形にし、商品化までに何度も山で使って納得するまでテストを行う。
「バックパックより先に製品化したスリーピングマット(山と道U.L.Pad15s)は、冬山で某メーカーの有名なクローズドセルのスリーピングマット1枚で寒くて眠れなかった経験から生まれました。寒くないように2枚もっていくには、重量が重く、荷物がかさばってしまう。ただでさえ、冬山は荷物が重くなるので、少しでも軽くて暖かいスリーピングマットが欲しい。そうした思いが形になり、従来の軽量スリーピングマットの1/3程の重量で暖かいスリーピングマットが生まれました」
「サコッシュは、常に手元に置いておきたい行動食やカメラなどの小物をザックの上げ下げに左右されずに常に胸元に置いておく事が出来ます。山と道のサコッシュは、日本の急な登りが多い山でも使いやすいように、長さ調節が驚く程簡単に出来るようにデザインをしました。それによって、歩くときは紐を短くして胸元に、取り出すときには紐を長くして取り出すという行為が気持ち良いハイクを邪魔しない形で容易に出来ます」
製品の製作を由美子さんが担当し、企画やデザイン、経営など、製作以外の作業を彰さんが担当する。ハイカーとしての感性を常に保ちながら、丁寧に作り出される山道具。現地トレイルでのリアルな体験が、その機能とデザインの美しさにも結びついている。
「最初はほぼ全て自宅兼工房で製作をしていたのですが、流石に回らなく、ガレージメーカーとして自分たちが製作する部分は残しながらも、バックパックの一部や山と道サコッシュは外部の委託先工場にお願いをしています。ゆくゆくは自社工場を形にしたいと考えています」
2012年1月には、ニュージーランド南島Te ARAROAトレイルを577kmハイクした。最近では紀伊半島の台高山脈を縦走し、その装備表や行程、製品の使用感などをレポートしている。また、ハイクの報告会や製品の展示会などのイベントも各地で開催するなど、国内での活動も精力的に行なっている。最後に、次に歩いてみたい山のこと聞いた。
「次に歩いてみたいのと考えて思いつくのは、海外では、アメリカのパシフィック・クレスト・トレイル。アイスランドを横断するトレイル。パタゴニアのロングトレイル。まだ歩いていないニュージーランドのTe ARAROAの続き。そしてジョン・ミューア・トレイル360kmをまだスルーハイク出来ていないので必ず行きたいと思っています。国内では、過去に植村直己さんが行った北海道から鹿児島まで一気に横断するロングハイクにとても興味があります。ニュージーランドを南北に横断するロングトレイルTe ARAROAを歩いて、日本でも東西に横断するロングトレイルの可能性を感じました。今年は北アルプスを日本海から入り、途中黒部に降りて、温泉を回りながら、上高地か、新穂高まで横断するハイクをしたいと考えています。それ以外にいろいろとハイクをする予定です。世界中の山を歩きたい!と思っています」
自らの思い描く山道具を形にしながら、山を歩く生活。2人が歩くトレイルはそのまま、小さなガレージメーカーとしての「山と道」が歩く道である。
山と道
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