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若木信吾さんと浜松古代散歩

遺跡や古墳は、自分が生まれ育った場所にもあることぐらいは聞いている。しかし、その場所を詳しく知る機会はきわめて少ない。今回、一緒に巡った写真家の若木信吾さんもそのひとり。故郷浜松の旧石器から縄文、弥生へと、時代を超えた歴 […]

12/09/2014

遺跡や古墳は、自分が生まれ育った場所にもあることぐらいは聞いている。しかし、その場所を詳しく知る機会はきわめて少ない。今回、一緒に巡った写真家の若木信吾さんもそのひとり。故郷浜松の旧石器から縄文、弥生へと、時代を超えた歴史を体感する旅へ。
待ち合わせは、JR浜松駅だった。東京をベースに写真や映像の仕事をするかたわら、月に1〜2回は浜松市へ足を運ぶ若木さんは、現在、浜松の市街地で本屋「BOOKS AND PRINTS」を運営している。「たまに戻ってくると、実家には帰るようにしているけれど、その他の場所へ行くことは少ない。今回、訪れる場所も初めてのところばかりで、どんなところなのか楽しみ。」そう話しながら最初に向かった先は、市の中心部から西へ車で15分ほどのところにある蜆塚遺跡。住宅街のなかに突如として現れる雑木林、カヤを葺いて復元された縄文時代の家屋と貝塚に、まるでタイムスリップしたかのような感覚になる。このあたりには今から4,000年前の縄文時代後期の集落跡が見つかり、発掘調査で4つもの貝塚があったことがわかった。そのなかに淡水性のヤマトシジミが多く含まれていたことから、この一帯は「蜆塚」という地名で呼ばれるようになった。昨今、水質汚濁が問題となっている遺跡の西側にある佐鳴湖も、縄文時代には遺跡のすぐ近くまで水域があったと考えられ、貝や魚がたくさん獲れたのではないかと推測される。現在、浜松といえば浜名湖のうなぎが有名だが、天竜川下流から遠州灘へと続くこの一帯は、昔から水産資源が豊富だったに違いない。「縄文人は、どれだけの貝を食べていたのだろう…」と、山盛りになった貝塚を写真に収めながら、若木さんがつぶやいた。
次に訪れたのは「銅鐸の谷」と呼ばれる浜松市北区細江町。銅鐸の出土が多いことで知られる浜松のなかで、このエリアでは、約2.5km内の斜面から6基が発見されている。これまでに農作業や道路の建設などで掘り起こされるものが多いなか、平成元年にアマチュアの銅鐸研究者が金属探知機で埋もれたままの銅鐸を発見。これには取材班も驚いた。この一帯で発見されたものは、斜面に同じ向きで同じような埋められ方をしていることはわかっているが、模様や装飾が違うことや使用目的などまだまだ謎が多い。銅鐸公園に埋められたレプリカの銅鐸を眺めながら、こんなにも謎多き銅鐸を金属探知機でこともなげに発見した現場だと思うと、やるせない気持ちになる。
若木さんが生まれ育った近くの浜松市浜北区には、「浜北人」と呼ばれる旧石器時代の人骨が見つかった根堅遺跡と呼ばれる場所がある。といっても、あるのは標柱と看板のみ。発見されたのが石灰岩採石場の現場の洞窟であったため、偶然発見された後も続けられた石灰岩の採掘により、そこが遺跡だということは今や見る影もない。発掘当時の写真を見ると、学者に混じって発掘を手伝う地元中学校の歴史クラブの生徒たちの姿もあった。
この他にも、時代を超えていくつもの遺跡や古墳などが点在する浜松には、現在の産業都市という面とは対照的に、古代の人々の生活の痕跡を感じられる場所がいくつもある。最近では、弥生時代の渡来文化や鶏や鹿などの動物埴輪など、ユニークな出土品も見つかっている。また、今回、浜松の遺跡をめぐるなかで、遺跡みやげとして目についたのが最中だ。蜆塚のそばにある和菓子店、萬世堂支店の「蜆塚最中」は、蜆塚遺跡の発掘が進んだ昭和38年から変わらずつくり続けられている、縄文住居をモチーフにした素朴な最中だ。浜松で出土した銅鐸がいくつも展示されている、姫街道と銅鐸の歴史民俗資料館の近くには、外山製菓の「銅鐸最中」がある。
「浜松に住んでいた頃は、古代文化にあまり興味はなかったけれど、こうやって市内をまわってみると、たくさんの遺跡や古墳があることに驚いた。専門家に解説してもらいながら歩くと、なおさら興味深い。東北の縄文を取材してきた編集長のルーカスが話していた『縄文時代はきっと厳しくも豊穣な時代だったと思う』という言葉を、何層にも重なった貝塚のなかに感じることができた。この感覚を地元の人にも伝えたいね」とこの旅を振り返る若木さん。この日、撮影された若木さんのカメラには、いったいどんな風景が写っていたのだろうか?
 
※ 12/1より、浜松市の「BOOKSAND PRINTS」にて、写真家若木信吾さんが撮影した浜松の遺跡や洞窟などの写真を展示しています。12月14日(日)には、編集長ルーカスと若木さんによる浜松縄文トークショーを開催します。
Stone Age in Hamamatsu 故郷・浜松のルーツをめぐる旅「旧石器から弥生」
2014年12月1日(月)~12月29日(月)
詳細はこちら:
http://archive.papersky.jp/2014/11/28/stone-age-in-hamamatsu/