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佐原のピカソがつくる唯一無二の張子

郷土玩具のコレクターである知人に見せられた張子人形に目が釘づけになった。かわいい、というより失礼ながらブサイクと表現したくなるその姿とラフな絵つけはとてもプロの作品とは思えない。にもかかわらず、えも言われぬ愛嬌と存在感が […]

09/15/2014

郷土玩具のコレクターである知人に見せられた張子人形に目が釘づけになった。かわいい、というより失礼ながらブサイクと表現したくなるその姿とラフな絵つけはとてもプロの作品とは思えない。にもかかわらず、えも言われぬ愛嬌と存在感が心を掴んで離さない。子どもの作品かと思いきや、なんとこの道半世紀以上の大ベテランのものだという。いてもたってもいられず、つくり手が住むという千葉県の佐原に訪ねてみることにした。
佐原は今でも古い建物が数多く残る水郷の町。と言われてもピンとこないかもしれないが、江戸時代に日本全国を測量して最初の日本地図をつくった人、伊能忠敬のことなら聞いたことがある人もいるのではないだろうか。中学生時代に日本史の教科書で見た日本地図を見て本当に驚いた記憶がある。人工衛星などない時代に、どうしてこのような地図をつくることができたのか。その伊能忠敬が半生を過ごした町である。そんな町で張子職人、鎌田芳朗さんはひとりで張子をつくり続けてきた。もともと祖父の代に始めた張子稼業だが、父親が早く亡くなってしまい、まだ高校を出たばかりの鎌田さんはいやいや仕事を手伝うことになったという。
「小さいころから図画工作が大の苦手でねえ。上達しないまま50年以上経っちゃった」と鎌田さんは笑う。そんな鎌田さんだがその「個性的」な作風に惹かれる人は多く、昭和62年には「佐原張子」として千葉県指定の伝統工芸品に認定されたほか、平成11年の年賀切手の図柄に鎌田さん作の「もちつきうさぎ」が採用されるなど、評価は高まるばかり。近頃は張子の体験教室などに引っ張りだこ。絵つけ体験に参加する年配女性に「うちの孫のほうがうまいわよ」なんてときどき言われるそうだが、鎌田さんに言わせるとそれは「最高の褒め言葉」だとか。昨年は諦めかけていた後継者も見つかり、佐原張子の存続も決まってひと安心。今年はなんと張子人生60周年を迎えるという鎌田さんだが、まだまだこれからも唯一無二の張子づくりを続けてほしい。
 
» PAPERSKY #45 Colorado | Bouldering & Hot Springs Issue (no.45)