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フランス、古今の岩登りを巡る旅

アトリエ小屋の本棚に、一冊の古い本がある。 『雪と岩』 著者の名前はガストン・レビュファ。日本では近藤等氏の翻訳により昭和36年に出版され、手元にあるのは昭和39年に第三刷されたもの。数年前に亡くなった伯父さんが持ってい […]

07/26/2018

アトリエ小屋の本棚に、一冊の古い本がある。
『雪と岩』
著者の名前はガストン・レビュファ。日本では近藤等氏の翻訳により昭和36年に出版され、手元にあるのは昭和39年に第三刷されたもの。数年前に亡くなった伯父さんが持っていたもので、葬儀のときに、使い込まれたウッドシャフトのピッケルとともに譲り受けたものである。言うまでもなく、どちらもぼくの大切な宝物だ。
真っ青な空の下、氷河を抱いた山を背景にアルプスの岩壁を登るその表紙写真はこのうえなくさわやかで、ニッカーボッカーに登山靴のスタイルが往時のクライマーの姿を物語る。内容は岩登りや氷壁登りの技術書なのだけれど、なかにはアルプスの絶景のなかを登るクライマーの姿や、チムニーを登るテクニックを解説するための連続写真が、センスのよいレイアウトで掲載されていて、単なる登山技術書を超えた、芸術性の高い美しい本なのである。
優れたアルピニストでありガイドでもあったガストン・レビュファは『星と嵐』など多くの著作を残した。その詩的で山への愛情に溢れる文章は山岳書籍を代表する名著として現在も親しまれている。
1921年に南仏のマルセイユで生まれ、子どものころはカランクの岩場へよく出かけていたという。カランクは現在でも石灰岩のスポートクライミングで有名な岩場だ。14歳のとき、アルプスの最高峰モンブランを眺めるため、2週間かけて徒歩でシャモニへと向かった。町の裏手にそびえるブレバンの岩壁を登り、モンブランに胸をときめかせたという。その後、シャモニ周辺の山々、針峰群などを登り続けてクライマーとしての実力を磨き、フランス山岳会のガイド資格を取得、第一線のガイドとして活躍することとなる。
今夏、南仏へクライミングトリップに出かける。世界有数の石灰岩の岩壁でスポートクライミングを楽しんだり、ゴッホが暮らしたアルルでの芸術祭を訪れる予定だ。そしてできればシャモニにも足を延ばしたい。以前はブレバンのマルチピッチを登っただけだったけれど、きっとシャモニにはレビュファの面影がたくさん残っているはず。今回は彼の足跡をたどるような旅をしたいと思っている。