Food Culture in Hong Kong 食の民主化

日本と違って、香港はほぼ1年中亜熱帯の気候なので、どんな季節でも街道の脇に乾物屋や屋台ができ、店の軒先と道路の間に、さらに移動式の売店やスタンドがあふれでる。車の騒音、押し売りの声、客のおしゃべり、そしてじわっと蒸し暑い […]

01/30/2012

日本と違って、香港はほぼ1年中亜熱帯の気候なので、どんな季節でも街道の脇に乾物屋や屋台ができ、店の軒先と道路の間に、さらに移動式の売店やスタンドがあふれでる。車の騒音、押し売りの声、客のおしゃべり、そしてじわっと蒸し暑い空気に包まれた食料品と屋台料理から出るにおいが、いたるところに浸透し、漂ってきたり、この港町に土着的な「香り」をまぶしたりしている。近年、都市開発が進むにつれて、香港の大牌當(屋台)の姿が街頭からだんだん消え去りつつあり、露天の店が放つ独特な「香り」も、残念ながら薄れていっている。
市街地のオフィス街、中環は、高層ビルが林立するなか、昔ながらの唐楼が残り、 いろんな人の肩がひしめきあうような、乱雑で新旧が入り混じった雰囲気の街。このあたりは坂道が多いため、街並みを坂の勾配や地形の起伏に沿ってつくらざるを得なかったが、建てやすい環境ではないからこそ、どんなに狭くて凹凸のある土地でも、たくみに適用しなくてはいけない。友人に、その地区の商店街のひとつ、Gough Streetにある屋台に連れていかれた。店は、急な勾配に沿ってつくられた階段と、隣に通っている狭い脇道にぎっしり囲まれ、客席もそれによって乱れなくつめこまれている。東京だと路地裏のような場所に近いかもしれないが、のんびりとした長閑なたたずまいではなく、むしろ騒がしく盛りあがる場所なのだ。
たとえば、女性ひとりでも入りやすそうな洒落たダイニングバーだったり、自炊の時間もない独身のサラリーマンにとって救済的な存在であるラーメン屋や牛丼のチェーン店など、いずれにしても無数の系列に分断されがちな東京の外食シーンに慣れ親しんだ僕にとっては、久々の新鮮な体験だった。世界中の料理が究極なレベルで楽しめる東京の唯一負けそうなところは、香港の食にまつわる「民主化」ではないだろうか。