鮮やかな色彩で、ダヴォスの強い光を表現

スイスの光に魅せられた外国人画家は多い。ドイツ表現主義を代表するエルンスト・ルートヴィヒ・キルヒナーもそのひとり。ドイツに生まれた彼は仲間たちと前衛運動ブリュッケを結成し、伝統的なスタイルを避け、新しい芸術表現を確立しよ […]

10/10/2017

スイスの光に魅せられた外国人画家は多い。ドイツ表現主義を代表するエルンスト・ルートヴィヒ・キルヒナーもそのひとり。ドイツに生まれた彼は仲間たちと前衛運動ブリュッケを結成し、伝統的なスタイルを避け、新しい芸術表現を確立しようと試みた。1914年、第一次世界大戦に従軍するもほどなく神経を病み、除隊。1917年に友人の勧めで、グラウビュンデン州のダヴォスに移り住むことになった。すると、穏やかな環境が合ったのか、急速に回復に向かった。ダヴォスに来てから風景画を描くことが多くなったキルヒナーは、山小屋のアトリエでアルプスの自然の風景や農民の暮らしからインスピレーションを受けたという。
有名な作品のひとつ『ヴィーゼン近くの橋』で描かれた場所に足を運んでみると、実際に彼が見た(であろう)場所は、付近がハイキングコースになっているのでほぼ同じ構図で眺めることができた。キルヒナーの真骨頂はなんといっても大胆な色使い。その風景画は原色系の強い色彩で表現されることが多く、作品にもこれぞキルヒナーカラーというような紫やピンクが印象的に使われている。同じ場所から眺めていると、彼のイマージネーションにダヴォスの光が大きく影響していることに気がつく。実際に陽の光は強く、澄みきった空気も相まって、まるでエフェクトがかかったように山の緑や空の青に鮮やかさを増幅させる。抜けるような青空のもと、山々を眺めると木々の間から覗く山肌はピンク色に、光が反射した枝葉は薄い赤紫色に見えた。ダヴォスの強く美しい光を捉えて表現したキルヒナーが、この土地に惹かれ、風景画を描くようになった理由が、ここに来ればよくわかる。
 
エルンスト・ルートヴィヒ・キルヒナー/Ernst Ludwig Kirchner
1880年、ドイツ・バイエルン州生まれ。ドイツにて前衛芸術画家として活躍後、1917年にダヴォスに移住。独特のタッチでスイスの景色を描いた。1938年没。
◼︎取材協力
スイス政府観光局
スイスインターナショナルエアラインズ
スイストラベルシステム
  
» PAPERSKY no.54 SWISS | LANDSCAPE ART Issue