ENALLOID × PAPERSKY “Through the Lens” 003 若木信吾

PAPERSKY本誌との連動企画「ENALLOID × PAPERSKY “Through the Lens”」。着る服を選ぶようにメガネのフレームも選んでほしいと、シンプルでスタンダードなフレームを展開する「エナロイド […]

08/06/2019

PAPERSKY本誌との連動企画「ENALLOID × PAPERSKY “Through the Lens”」。着る服を選ぶようにメガネのフレームも選んでほしいと、シンプルでスタンダードなフレームを展開する「エナロイド」と、各地の風景を独自の視点で切り取る写真家によるコラボレーション企画です。メガネのレンズとカメラのレンズ、それぞれのレンズの先にはどんな世界が広がっているのか…..? 3回シリーズでお届けする最初の写真家は、若木信吾さん。若木さんが旅先で出会った、レンズをとおしてみた世界とは?
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ENALLOID × PAPERSKY “ Through the Lens”
写真家がレンズの向こうに見た世界 003 若木信吾
Turku | 2019年初夏
新しい街、とくに大都市を訪れた時、散歩の指針となるのが川だ。交通路の役割として川が使われ、街が発展していくのは歴史ある都市の特徴だからだ。川を運河としてコントロールすることで流通が発展する。僕の生まれ育った静岡県浜松市にも天竜川という川があるが、昔から「暴れ天竜」と呼ばれ、川幅や河原は季節ごとに数キロ単位で変わり、生活のためにコントロールすることなどできるようなものではなかった。だから、街のど真ん中に川が流れる風景は、僕にとっては異国情緒あふれる憧れの対象だ。
かつてフィンランドの首都でもあった、トゥルクの街にも川が流れていた。宿泊先のホテルからトゥルク城までは、ざっと2.5kmほど。この日の撮影の出発時間までは、あと1時間半はある。いつチェックアウトしてもいいように、パッキングも終わっている。時計を見ながら川沿いを歩き、持ち時間の半分になったら引き返せばいい。川沿いなら道に迷うこともない。早朝の散歩、川沿いを歩くのは楽しい。川の上には建物がないから風も抜けて空気の流れもいいし、朝の光もよく届く。川沿いには大小さまざな船が停泊していて、船上レストランやカフェをやっているものもあれば、住居として使われているような雰囲気のものもある。たまにランナーや散歩する人たちとすれ違う。インスタばやりのこんなご時世だから、彼らもカメラを持ってぶらつく僕のような観光客には目もくれない。
時計を見ると、もう少しで半分の時間。しかし、トゥルク城はまだ遠くに見えたままだ。これ以上進むのも不安だし、引き返すのも惜しい。朝ののんびりした散歩のはずが、焦る気持ちが広がる。これはやばい。観光において、時間に追われるというのは一番避けたいパターンだ。こういう時に性格が出る。誰か他の人と歩いていたら、迷わず「もう時間だからのんびり引き返すとしますか」と余裕ぶって提案するだろう。しかし、今はひとり。がんばって早歩きしても誰にも迷惑をかけない。というか、ゴールを設定しなければよかったのだ。忌々しいトゥルク城め。
城の前に着いた時には、残り時間はあと20分。どう急いで戻っても、集合時間に15分は遅刻だろう。そういえば、前にもこんなことがあったなと思い出す。アアルトのお墓を探しにいった時だ。あの時はバスがうまいこときたが、今回は違う。目の前の城にも入らず、川沿いを離れ、大通りに出てみたが、通勤の車で道も混雑し始め、バス停で待つ人たちも列を作り始めている。やはり徒歩で戻るしかないのか…。急いで歩いていても、初めての風景は気になる。信号待ちする爽やかな自転車通勤の女性を見つけたので、カメラをすかさず構える。信号が青に変わる。シャッターを押して早足で横断歩道を渡る。携帯にスタッフから「みんな集まってますよ」とお知らせがやってくる。なんと忙しい朝なのだ。
 
Frame 003 やわらかなブラウンがモダンな印象を与える「TIMELESS」
model: TIMELESS pamr44
color: Brown Sasa (168)

ENALLOIDが提案するクラシカルなコンビネーションフレーム。コンパクトなサイズ感とやわらかいブラウンで、ジェンダーレスに合わせられモダンな印象も与える仕上がりです。
About Enalloid
岐阜県中津川にて1947年より続くプラスチックフレームファクトリー「恵那眼鏡工業」によるオリジナルブランド。古くから続くスタンダードを守りながら、メガネの新しいスタイルを発信するエナロイドは、デザインや素材のクオリティを重視したジャパン・メイドのフレームとして国内外で評価の高いシリーズです。使いやすさや掛け心地の良さに加え、「日常をちょっといいものにする」をコンセプトに、着る服やアクセサリーを選ぶように、その日の気分でフレームを選ぶ楽しさを提案しています。
http://www.thorough.jp/enalloid/
Photographer 001
若木信吾|Shingo Wakagi
1971年静岡県生まれ。写真家/映画監督。ニューヨーク州ロチェスター工科大学写真学科卒業。雑誌・広告・音楽媒体など幅広い分野で活動中。雑誌『youngtreepress』の編集発行を務め、浜松市の書店「BOOKS AND PRINTS」のオーナーでもある。映画:撮影、監督作品に『星影のワルツ』『トーテム~song for home~』『白河夜船』(原作:吉本ばなな)などがある。