フランス国境まで続く異空間、コスタブラバを目指して

バルセロナの中心部から海岸線を北上すると「コスタブラバ」というオアシスにたどり着く。巨岩がつくりだす複雑な地形とクリアな水。美しいビーチをめぐりまわる、2日間のミニトリップへ。 泳ぐことが大好きなバルセロナの人々だが、意 […]

10/24/2013

バルセロナの中心部から海岸線を北上すると「コスタブラバ」というオアシスにたどり着く。巨岩がつくりだす複雑な地形とクリアな水。美しいビーチをめぐりまわる、2日間のミニトリップへ。
泳ぐことが大好きなバルセロナの人々だが、意外にも、この街の海では泳がないという声は多い。そんな彼らが口にするのは決まって「コスタブラバ」だ。地元の人間なら誰もが知る、カタルーニャ州北東・ジローナに伸びる約214kmの海岸線。市街からの最短地点は車で約1時間の距離で、果てはフランス国境まで。ヨーロッパ中から人が訪れる一大リゾートゾーン、リョレト・デ・マルもあれば、ひとけのないシークレットビーチもあって、じつに多彩な海が楽しめるという。そこで僕らは水着と少々の荷物だけを抱えて、車を走らせた。街の近くでは見られない、もうひとつのバルセロナを探しに。
市街からスタートして約40 分。いつの間にか周囲の風景はガラリと変わっている。市街で聞こえていたさまざまな音は消え去り、緑はどんどん深くなっていく。ハイウェイを下り、コーストラインに出る直前、これまでとは違う地中海の色が目に飛びこんできた。すでに、バルセロナ市街とはまったく異なる、静かな漁村地帯のただ中だ。ドライブを始めて約2時間。地元に詳しいボルハがまず連れて行ってくれたのは「Gorja」というビーチだった。静かに、ランチパーティをしたいという僕らの希望を完璧に満たしてくれる場所。そもそも「Brava」とは、スペイン語で「でこぼこ」とか「野性」といった意味を持つ。その名を象徴するような無垢の巨岩に囲まれたロケーションが印象的だ。最高にドライな天気なのに、約500mほどのビーチゾーンにはほんの4~5人くらいしか見当たらない。果たして、ここをバルセロナと呼んでいいのかとボルハに聞くと、こんな答えが返ってくる。
「そうだね、バルセロナに住む人間が泳ぐための海だ。世界中から観光客が来る大きなリゾートもあるけど、僕らは週末、こういう静かなビーチを探しに車でやってくる。正確な数はわからないけど、大小合わせて30~40 ほどもビーチがあるから何度来てもおもしろいよ」
バルセロネータの海の色が青だとすれば、ここは無色だ。透明な水が水底の貝や魚をクリアに映しだしている。
「街の近くで集まるのもいいけど、ビーチパーティをするならやっぱりコスタブラバだね。街のなかやバルセロネータはいろんな音が耳に入るだろ。でもここでは、音のない時間をいくらでも楽しめる」
ビーチから1.5kmほど内陸の市場で買ったのは、パエリアとイベリコ豚のサンドウィッチ。ランチ後に気持ちのいいスイミングを終えると、次のビーチを探しにまた車を走らせた。
この一帯は陸上もまたおもしろい。富裕層の別荘で不要になった家具を用い、再利用するアンティークショップがたくさん。コスタブラバはスペインでも知る人ぞ知る、クールなアンティークの宝庫なのだ。道中、そんな家具のファクトリーを訪ねてみた。「Isaias Lumbreras」のオーナー、イサイアは言う。
「ここじゃパインとかメープルとか良い素材の古い家具がいくらでも手に入る。それをいいデザインにつくり替えてまた売るんだ。机だって椅子だってベッドだってある。外国人にはあまり知られてないけどね。工場を始めてもう30年になる」
以前はバルセロナでバイオリンの製造、修理を仕事にしていたというイサイア。その巧みな手さばきから、バルセロナ市内のショップから引き合いも多いとか。聞けば、腕に自信のある職人、大工らが開業するショップが周辺には20ほどもあるという。
次のビーチ「Platja de Castell」に着いたころにはもう夕方6時。最初のビーチとは一変して広大な砂浜が広がる。直線的な浜は1km 以上あるだろうか。向こう側の入り江には南欧特有のカラフルに色分けした漁民小屋が見える。こんな時間だというのに躊躇なく海へ。今日の日暮れは夜8時30分ごろからまだまだ泳げる。冬に多いという雨が長年に渡ってつくりあげたという巨岩のアートを眺めながら、僕らは誰もいない海を泳ぎつづけた。
今夜はこの近くにある、10年ほど前にできたというワイナリー「BELL-LLOC」に泊まる予定だ。約2,500年以上も前にワインづくりが始まったというこの地。現在、東京ドーム約430 個分に相当する広大なエリアで専用農家が営まれている。気ままなビーチホッピングとアンティークショップやワイナリーの散策。スペインとフランスの国境付近には、こんなにもぜいたくな時間が待っていた。1泊かけて出会えた、もうひとつのバルセロナ。地元の人間がこの地を推すのも納得がいく。
» PAPERSKY’s BARCELONA | SWIM Issue (no.42)