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漆器を持って山へ行こう

登山用クッカーといえば、アルミやチタンなどの金属製が一般的。直接火にかけられるので鍋としても食器としても使えるし、何より丈夫。昔からさまざまなタイプのものが市販され、スタッキングできるなど収納性も高い。 しかし金属製クッ […]

01/29/2018

登山用クッカーといえば、アルミやチタンなどの金属製が一般的。直接火にかけられるので鍋としても食器としても使えるし、何より丈夫。昔からさまざまなタイプのものが市販され、スタッキングできるなど収納性も高い。
しかし金属製クッカーでも欠点はある。たとえば、火にかけた直後は口元が熱くなるし、逆に冬には冷たくて注意しないと唇が一瞬くっついてしまうことも。金属製のフォークやスプーンを使ったときの金属音が苦手な人も多いだろう。
私は以前から登山用に木製の箸を使っている。中空のステンレス素材でできたアウトドア仕様のものを使ったこともあるけれど、重たいうえに冬に使うと手が冷たいので木製に替えたのである。収納性を考えて短めの箸を愛用。最近は近所の宿場町で買った漆塗りの箸を愛用している。水で洗ってもカビが生えず、しかも軽いのだ。
カトラリーはもちろん、食器としての使用だけなら、山で漆器を使ってみるのもよいと、最近思うようになった。木製といえども意外と軽くて丈夫。何より手で持った感触がいい。口当たりも柔らかでやさしい。
お気に入りの漆器作家さんの作品もいいし、最近ではアウトドアでの使用を考えてつくられたものもある。観光地の工芸屋でも売られていて、お手頃な価格だから気兼ねなく山で酷使できる。
そういえば、宮崎駿の『もののけ姫』でアシタカが使っているのも朱塗りの椀。アシタカからお椀を受け取ったジコ坊が「見慣れぬ椀だな」と言う一場面は印象的だ。
古くから木はさまざまな形で使われてきたが、その最大の弱点は水に弱いこと。そこで編み出されたのが漆でコーティングする漆器だった。漆器は太古の日本人が生み出した技法で、その歴史は縄文時代にまで遡るとか。日常用として、高級品として、漆器は太古よりこの列島に住む人々に愛されてきたのである。使い込むほどに味わいが深まるのも魅力だ。
金属やプラスチックでは少々味気ない。もっと自然にアウトドアを楽しみたい。そんな方は、この古くて新しい漆器を山道具に取り入れてみてはいかがだろう。きっと、ひと味違った山でのひとときが楽しめるだろう。