屋根裏部屋の誇り

野地板と呼ばれる4mの杉板を三角形に組み合わせて垂直に立てる。下に置いた新聞紙に火をつけると、発生した上昇気流に乗って炎が徐々に板の表面を焦がしていく。板同士の隙間を調整することで炎の上がる速度をコントロールし、焦げ目を […]

07/10/2018

野地板と呼ばれる4mの杉板を三角形に組み合わせて垂直に立てる。下に置いた新聞紙に火をつけると、発生した上昇気流に乗って炎が徐々に板の表面を焦がしていく。板同士の隙間を調整することで炎の上がる速度をコントロールし、焦げ目を均等につけることができる。これが焼き杉だ。今だから落ち着いて書けるが、やっているときはそれどころではなかった。外からは焼け具合がわからないから、隙間から覗くも突然炎が吹き出してきたり、タイミングがわからず黒焦げになってしまったり。何せYouTubeでやり方を調べてやってるのだから右往左往も当然で、これがあと80枚。大変なことを始めてしまったと途方に暮れていたときに、この本が石杖になってくれた。
ノルウェー、オスロで25年、大工を営むオーレさん。現場仕事をする職人であるが、電気工や配管工など他の職人たちを束ねる親方でもある。日本だと工務店を兼ねる大工ということになるだろうか。彼がある家の屋根裏にバスルームつきの住居スペースをつくる仕事を受注し、完成させるまでのことが書かれている。ノルウェーの大工仕事はどんなだろう、というところだが、まずは見積もり。建築士と設計士の図面を元に、施主の希望を聞き、現場の職人たちの作業内容を考える。さらに100年以上前に建てられた建物の構造を読み解き、安全で効率的な建て方を提案する。見積もりができて仕事を受注するまでに、300ページのうちの100ページが割かれる。つまりそれくらい大きな割合を占める作業なのだ。
作業が始まると、既存物の廃棄から始まって、最後に下の部屋の天井に穴を開けて、屋根裏とをつなげるまで、約8ヶ月間にわたる作業が淡々と綴られる。深い信頼関係で結ばれた職人同士の作業は読んでいて気持ちがいい。専門的でわからないこともあるが、身近な屋根裏の話だからイメージはできる。綿密に考え、現場で手を動かす描写の連なりが静かな興奮をもたらしてくれる。彼の仕事に対するスタンスは明確だ。
「完成した物が私の名刺のようにずっとその場に残る。良い仕事をしたら、それが自分の推薦状になるのだ」。
満足できる仕事をしたときに自分の体が広がるようなあの感覚が全ページから伝わる、じんわりといい本でした。
あるノルウェーの大工の日記
オーレ・トシュテンセン 著 牧尾晴喜 監訳
中村冬美/リセ・スコウ 翻訳 エクスナレッジ