アートから香る、バスクの「光」と「匂い」

バスクという土地は、これまで数多くの高名なアーティストを生んできた。伝説の彫刻家エドゥアルド・チリーダやファッションの世界に革命を起こしたクリストバル・バレンシアガ、ノーベル文学賞受賞の詩人パブロ・ネルーダなど、その名を […]

04/17/2017

バスクという土地は、これまで数多くの高名なアーティストを生んできた。伝説の彫刻家エドゥアルド・チリーダやファッションの世界に革命を起こしたクリストバル・バレンシアガ、ノーベル文学賞受賞の詩人パブロ・ネルーダなど、その名を挙げれば枚挙に暇がない。現在、スペイン国内外で注目を集める先進的なグラフィック・デザイナー、ブラーミもバスクの地で生まれ育った一人だ。メディアに捕らわれない様々なプロダクトの制作、そして、際立つ革新的創作プロセス。何より、バスクのユース・カルチャーを象徴するようなパワーや色彩が多くの人々、とりわけバスク人の心を捉えて離さない。
「俺は今日の気分を大事にしているだけなんだ。今日はこれが作りたいとか、明日はこういう色を塗りたいとか、そういう気分によって創る物が自然と決まってくる。昔はバルセロナのギャラリーで作品を創っていたこともあったんだけど、その時はいつまでに何個作品を創るっていう制約があってどうも俺には馴染まなかった。だからすぐ故郷のバスクに戻ってきたんだ。ここには自由に作品を創れる空気があって、周りには人をインスパイアする自然がたくさんある。この土地では、生活の周りに当たり前のようにアートがあることをみんなが楽しんでいるんだ」
ブラーミが創作の拠点とするのはサン・セバスティアンから10kmほどの山合いの街、エル・ナニ。豊かな緑の山々に囲まれた閑静な土地だ。同時にここはバスク地方の分離独立を目指す民族組織が活発な動きを見せる、政治的に複雑な場所。言い換えれば、バスクの中でも特別、祖国への愛情が濃い土地でもある。
「俺の作品は、バスク民族独立への強い意識を表現したものだと誤解されることが多いけど、そんなことは全然ない。もちろん、バスクという土地への愛情はあるけど、独立のためのテロなんて賛成できない。俺はポジティブなアートでバスクのスピリットを表現するのが好きなんだ。大きなテーマは色だね。この土地には恵まれた自然の様々な色で溢れている。どこを見回しても素晴らしい色があるから俺はこれを作品にしていく。言葉をデザインにあしらう時はもちろん全部、バスク語。俺は生まれ育った土地のこの言葉が好きだから、これをアートにしたいってだけさ」
メッセージは発信しようとするものではなく、行動した後に自然と残るもの。バスクに住んでいれば創作の素となる美しいインスピレーションが、誰にでも沸いてくるはずだと彼は言う。街角の廃材や植物、食物など身のまわりの物を何でもアートの材料にしてしまうブラーミ。その作品からは、バスクの土地の光や匂いがほのかに香ってくるようだ。
» Papersky No.35 Basque Issue