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日本の竹でつくった、メイドインニッポンのロッド

知人に誘われて最近フライフィッシングを始めた。渓流の川面を無心に見つめて過ごす時間というのは特別なものがある。その心地よさはくせになるが、フライにはもうひとつ楽しみがある。それは釣り道具。はじめは必要な道具の多さに辟易し […]

06/26/2013

知人に誘われて最近フライフィッシングを始めた。渓流の川面を無心に見つめて過ごす時間というのは特別なものがある。その心地よさはくせになるが、フライにはもうひとつ楽しみがある。それは釣り道具。はじめは必要な道具の多さに辟易したが、やると決めたらそれも楽しみたい。ということでまずは竿選び。軽くて丈夫なグラファイト素材が主流だが、生意気を承知でバンブー、竹の竿を選んだ。工芸品のような美しさにすっかり魅了されてしまったから。淡竹という日本の竹でつくってもらった、メイドインニッポンのロッドである。
竹の竿といってもフライロッドは日本の和竿と違い、中空状態の竹の幹そのものをつなげてつくるわけではない。5〜7mmに細く割られた竹に熱を加えてまっすぐにする作業と削りを繰り返しながら、最終的に三角柱状に削られた6本の竹を接着して組み上げる。だからバンブーロッドは基本6角形。その6角構造でしなやかさと同時に強度、耐久性をもたせる。一本の竿を完成させるのに数カ月。美術工芸品の顔をした実用品とでも言いたくなる。
それにしても竹ほど日本人の生活に密接かつ多様な関わりをもっている植物も少ないだろう。一日に1m以上伸びるときもあるという驚異的な成長力に加え、硬く、弾力性に富み、おまけに中空構造なので軽く細工もしやすい。箸や楊枝といった身近な日用品からザルやカゴ、茶道具などの工芸品、玩具、武具、近頃はバイオ燃料としてなど、用途はじつにさまざまだ。もちろん食用としても。とにかく竹は優れものである。そういえばあの『竹取物語』が日本最古の物語といわれているのも、日本人と竹との長いつきあいをなにより証明している証拠だろう。
冬のあいだ禁漁だった川が春になるといっせいに解禁になる。釣り人たちはもう落ち着かない。今年は地方の渓流にも出かけたい。もちろん「竹竿」を片手に持って。