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Relax Tripping with Rig Footwear

Vol.4 真田緑(デザイナー/イラストレーター)

日本人と欧米人の足の特徴をていねいに研究し、日本人にとって快適な履き心地になるよう設計されたrig FOOTWEAR。疲れを残さない一足は、ローカルな街歩きの頼もしいお供となる。そんなシューズを履き、自分の住む街を案内してくれたのはデザイナーの真田緑さん。「生活の中に自然がある街で暮らしたかった」と話す彼女とともに、山と温泉、生活が繋がる街、浅間温泉エリアを巡るワンデイトリップへ。

12/10/2024

山に抱かれる街で、等身大の自分で暮らす

「大好きな北アルプスがいつでも見えるから」

今回の旅の案内人であるデザイナーの真田緑さんが、松本市北部に位置する浅間温泉を拠点にする理由だ。首都圏、デンマーク、軽井沢を経て、働き方やライフスタイルを自分らしくカスタマイズする半生を経て、辿り着いた安息の地でもある。

「晴れた日には北アルプスの前山、常念岳や蝶ヶ岳も見えるんですよ」との案内に導かれ、一行は浅間温泉の裏山的存在、御殿山(標高884m)へ。

「自然を感じたい時や気持ちを整理したい時に訪れます。身近にあると安心する場所で、2歳の息子と一緒に散歩に来ることもありますよ」

そんなことを話しながら歩く山道には、栗や山野草などの小さな秋があちこちに。山頂までは片道30分と短い道のりだが、豊かな自然の恵みを見つけては眺めたり、拾ったりするのに大忙しだ。

「折角ならピクニックしませんか?」と真田さんが機転を利かせてくれた本日のランチは、真田家御用達のベーカリー<LDK>で購入。米麹の天然酵母と信州産の小麦を使用したパンと旬の食材を使ったデリを「毎日食べたい味」と真田さんは絶賛する。

ピクニックシートとハンカチは真田さんのテキスタイルブランドH/A/R/V/E/S/Tの新作。「山へつづく森、町のはずれにある森。森は、日々の暮らしと自然をつなげる場所」が新作のテーマ

本日のメニューは、店主さんとともに選んでくれたポークリエットとフムス、ピクルスやラペをカンパーニュやベーグルに挟んだ真田さんお手製サンドイッチ。豆から淹れたコーヒーと一緒にいただく。

「外で食べるごはんってなんでこんなに美味しいんでしょうね!」と呟く真田さんに一同、大きく頷く。

木陰でのピクニックで腹も満たされ、下山の途につく。忘れてはいけないのが、山道から舗装路に切り替わる手前で行うソールの交換だ。新作となる「mwanba」シリーズには、アクティブソールとリカバリーソールの2種類を付属。運動中は前者を、運動後は後者を使い分けることで、最適な足運びを叶える。

しばらく歩いて、「足裏にフィットする感触に驚きました。シューズと足の一体感が生まれて、必要以上に力を入れすぎることなく歩くことができます」と真田さんも頼もしさを感じている様子。

下山後は、「登山と温泉はセットです」との号令のもと通い慣れた<枇杷の湯>へ。ここは初代松本城主の湯殿として造営され、400年の歴史がある日帰り温泉施設だ。

「浅間温泉は熱湯が多いのですが、枇杷の湯はゆったりと浸かれるぬる湯です。地域の方々にも愛されていて、朝からいらっしゃる方も多いんですよ」

10枚綴りの回数券もすぐに使い切ってしまうと言う真田さん。すぐに「熱い!」と湯船から出てしまう息子さんと一緒に入ることが多いため「最近はあんまりゆっくりできていないんですが」と笑うが、それも振り返ればきっと愛しい日常の風景だ。

「枇杷の湯もそうですが、浅間温泉は地元の人や子連れに優しい施設がいくつもあるんです」と教えてくれたブックホテル「松本本箱」は、宿泊者以外も利用可能なブックストアを併設する(予約制/利用時間に規定あり)。

「町民は予約なしで気軽に入れるので、息子と一緒によくお邪魔しています。遊べるボールプールのある『こども本箱』も楽しいですし、私自身も作業に行き詰まるとアイディアソースを求めて『オトナ本箱』を徘徊しています(笑)。いろんな本を通じて、違う視点から見つめ直すヒントをもらうのは大事ですよね」

幅広い書籍を取り扱う中で、山に関する書籍をピックアップするコーナーも

山に登り、湯に浸かり、本に触れる。自然を愛する人も、文化を愛する人にもひらかれた浅間温泉には、まだまだ文化の香りが漂う店がある。紙もの雑貨を中心に扱い、多くのクリエイターとのコラボ作品を考案、販売する「手紙舎 文箱」は、「松本本箱」から歩いてすぐの距離にある。

「浅間温泉土産として、緑さんのポストカードやオリジナルハンカチやバッグなどを購入する方も多いんですよ」とにこやかに出迎えてくださったのは雑貨コーナーを担当する北村さん。

オリジナル柄にあしらわれているのは、長野県や松本市にちなんだモチーフたち。ライチョウやりんごなどの名物から温泉の桶、喫茶店の名物メニューまで、この土地を旅した人たちが楽しい思い出を振り返るきっかけになるイラストが数多く描かれている。

手紙社文箱とのオリジナルコラボバッグ

いろいろと話を訊くうちに、ふたりの話題は先ほど拾った御殿山の栗に。「今日中だったらきっとまだ残っていると思う」「仕事早く切り上げて拾いに行こうかな」「じゃあ晩御飯は栗ご飯だね」……。実りの秋を実感できる、豊かな土地に住んでいる人々の日常はいつだって季節に急かされている。

そもそも真田さんの人生の転換点となったのは、「生活と自然が地続きにある暮らしがしたい」という願望だった。シーズンごとにコレクションを発表し常にトレンドの先取りが求められるファッション業界に身を置く生活から抜け出し、「ひとつひとつを大事にするもの作り」をするため会社を辞め理想の暮らしを求めて北欧デンマークへと旅立った。

自分の人生を描きなおすための北欧留学だったが、奇しくも山への思いを一層深めるきっかけになる。起点になったのは、滞在中のスウェーデン北部でのロングトレイルだ。

「トレイル中、ゆったりと生きる山小屋を管理する方々と出会い、その生き様を『とてもいいな』と思ったんです。デザインを生業として生きていくと考え続けていましたが、それよりもまず山の中で暮らしたい気持ちがあふれてしまって」

急く気持ちを抑えることなく、帰国後すぐに穂高岳山荘に6ヶ月間住み込みで働いた。炊事、清掃、接客などを担当。手が空くとスケッチブック片手に近くの山に登り、絵を描いたり写真を撮ったりして過ごした。

「山は変わらずにずっとそこにあるのに同じ景色は1日もありません。朝焼けも夕焼けも、稜線の見え具合も全然違う。見る側の私の気分や気持ちによっても違う、それが私にとっての山の魅力なのかもしれません」

山小屋で過ごすうちに、これからどう生きていきたいかの指針も固まっていった。自分の好きな自然や山と、「仕事でなくても手を動かしていたい」と言うほど、もの作りに没頭するこの性分を繋げる仕事をしよう。この気持ちに共感してもらえる誰かに届けられる仕事をしよう。

「今、その時に感じた気持ちのままに活動ができていることをしみじみと幸せに感じます。私にとって山や自然を楽しむことと、もの作りは等しく大切なものですから」

浅間温泉に流れる時間は、都会とは少し違う。朝から湯に浸かり、季節の移ろいとともに野に咲く花を愛でたり、実りを有難く頂戴したりする。遠くに目を向ければ、アルプスの雄大な峰が見守ってくれている。

「ふと視線を上げた時に、初冠雪だな、今年は雪解けが早いなと、山の稜線を見て季節を感じられる生活にたどり着いてよかったなと本当に思います。もし日々の生活で悩んだり、息子に苛立ってしまったりしても、いつでも変わらずにある山のことや、山小屋で暮らす人たちのことを考えると、自分の悩みが不思議とちっぽけに感じられて、心にゆとりが生まれる気がします」

人は自然の一部である。そのことを山はいつでも静かにやさしく伝えてくれる。浅間温泉の暮らしが穏やかなのは、山を拠り所にする人々の心がいつでもその教えとともにあるからなのかもしれない。


【Spot List】

1.御殿山
長野県松本市浅間温泉

2. LDK
長野県松本市浅間温泉3-14-1 メゾン浅間

3. 枇杷の湯
長野県松本市浅間温泉3-26-1
TEL : 02-6346-1977

4. 松本本箱
長野県松本市浅間温泉3-13-1
TEL : 0570-001-810

5. 手紙社 文箱
長野県松本市浅間温泉1-30-6
TEL : 02-6387-2716


真田緑 Midori Sanada
1986年生まれ/多摩美術大学生産デザイン学科テキスタイルデザイン専攻卒業後、アパレルブランドでテキスタイルデザイナーとして6年間勤務し、パリコレクションなどのクリエイティブに携わる。2013年退職後に、1年間デンマークへ留学し、北欧デザインを学び、帰国後の2014年10月より本格的に自身のブランドH/A/R/V/E/S/T(「自然からの収穫で毎日に彩りを」をコンセプトにデザイナー自身が旅した自然の風景や出来事をインスピレーションとするテキスタイルブランド)を始める。またフリーランスデザイナーとして、アパレルブランドや企業へのテキスタイル・グラフィックデザインの仕事も行う。
http://www.midorisanada.com


rig FOOTWEAR
https://rigfootwear.com

text | Yuria Koizumi photography | Rui Kawase