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WALK WITH FRIENDS
AI HINO

見上げては石鎚山
語らっては人情

 

09/20/2024

うちらがやらないかん


六十番札所横峰寺の道中には、心強い同行者がいた。愛媛県に入ってから、何度となく見かけた緑色の表紙の中綴じ冊子。タイトルに『YON』と書かれたそれは、西条市の日野藍さんが2023年10月に創刊した、四国×アウトドアの自主制作雑誌だ。

『YON』の創刊号の特集は、石鎚山系の山小屋、しまなみ海道の自然と聖地の2本立て

「四国の4や伊予弁の『なにしよん?』から名づけました。四国に魅力があっても、残そうとしないと、いつかなかったことになってしまう。前にロンドンで日本のガイドブックを見たら、四国は1ページしかなくて愕然。誰もやらないから、うちらがやらないかんと思って立ち上げました」

香川県の写真家である宮脇慎太郎さんをはじめ、四国のクリエイターの力を結集した創刊号は、発売からわずか数ヶ月で完売した。オンラインで販売する他、書店やカフェにも出荷。新規取引先には、自ら足を運んでから営業するなど、誌面だけでなく流通にまで彼女の人情味がにじみ出る。

運営にも携わる「山と道」のバックパックを背負う 

遍路道を歩く日野さんは、アウトドア誌の編集長らしく足取り軽やかだった。車遍路をした母親から譲り受けた金剛杖を握り、半世紀前にお遍路さんだった祖母の納経帳を使用。西条市に生まれた彼女は、石鎚山もお遍路さんも、ずっと見上げてきたのだ。

「標高1,982mの石鎚山は西日本最高峰。運動が大の苦手だったので、大人になるまでその魅力を知りませんでした。全国ではあまり話題に上らない場所だからこそ伝えていきたいし、さまざまな事情でそこへ行けない人も読んで楽しめるようなものにしたい。お遍路もいつか特集したいなと思います」

仁王門から横峰寺の境内に入る

山から街に下りたら、日野さんに好きな場所を案内してもらおう。西条市の広範囲で湧き出る「うちぬき」の名水のように、いくらでも噴き出てくるに違いない。

西条市は水の都。水を汲みつつ歩こう


四国のアウトドア誌を支える場


水の都である西条市の中心部には、藩庁だった旧西条陣屋跡を取り囲むようにお堀がある。今は県立西条高校が建ち、同校の応援部だった日野さんにとって、隣接する土蔵造りの「愛媛民芸館」は憩いの場だった。

「地元の伊予絣や砥部焼が間近に見られます。昔はお茶を出していたので、2階で飲みながらひと息つくのが好きやったなあ」

愛媛民芸館は四国で唯一の民芸館

Uターン後、市役所勤めをしていた日野さんの胃袋を支えたのが「POGO CURRY」だ。3種のカレーからなる重層的なスパイスカレーは、かえしや油揚げを採用するなど、本格的でいて唯一無二の味がする。

肉厚の油揚げはPOGO CURRYのトッピング。益子焼や因州・中井窯など民芸の器を採用。「ばちばちに決めすぎずに外す。服のレイヤーと一緒っすね」と岡田さん

「店主の岡田季久さんはストリートカルチャーを通ってきた人で、地元のかっこいいお兄ちゃんって感じ。アウトドアショップ兼カフェの『crosspoint』の久保一平さんにしてもそう。彼ら上の世代には、フックアップしてもらってばかりですね」

同世代なら、一棟貸しの古民家宿「縁側のとき」を営む金光史さんがいる。瓶ヶ森を望む古民家と出合い、2023年に開業。奔走する同級生に、日野さんは言葉を漏らした。

 「住んどる街を楽しくしたいだけなんよね」

crosspointは石鎚山からほど近い。自然破壊への危機感や安全な自然遊びの重要性を説く
果樹栽培ひと筋だった金光さんによる縁側のとき



EHIME Guide

愛媛民芸館
愛媛県西条市明屋敷238-8
TEL:0897-56-2110

POGO CURRY
愛媛県西条市大町1760-2

crosspoint
愛媛県西条市中野甲1261-2
TEL:0897-58-6373

縁側のとき
愛媛県西条市丹原町関屋甲76-1



日野 藍 / Ai Hino
愛媛県松山市生まれ、西条市育ち。広告制作会社を経て、西条市役所で広報専門職員として勤務。独立後、2023年に四国のアウトドア誌『YON』を仲間と創刊し、編集長を務める。徳島を特集した第2号を9月に刊行予定。

text | Yosuke Uchida photography | Eriko Nemoto