自然と街を衣服がつなぐ
高知市でゼロデイをすごすなら、隣の香美市にも足を延ばすと決めていた。目当ては、夫婦が営む小さなアウトドアブランド。
かつて日本の作業着だったもんぺを改良した「モンペズボン」は、男女の別なくワンサイズで、前後ろもないから、ユーザーやシーンを問わずに穿きこなせる。上着の「ガバット」は肩まわりの縫い目がなく、腕の上げ下げにストレスがない。いずれもオンラインショップや卸先で買おうにも、即完売となってばかりだ。

「高知は自然があふれちゅうき。山も海も川も街から近い。アウトドアは非日常ではなく、生活の一部って感じかな」
香美市土佐山田町にある「一二」の店内で、高橋康太さん、京子さん夫妻が口を揃えた。四国山地が間近にそびえ、四万十川や仁淀川など日本を代表する清流が流れ、太平洋が高い白波を立てる。一年中、アウトドアウエアにも街着にも使える道具のような衣服は、この恵まれたフィールドが身近にあるから生まれたのだ。


「ホームマウンテンの剣山系は、もうどれほど行ったかわからない。何回行ってもいいき。全国の山を歩いたなかでも、三嶺と剣山の縦走路がいちばん好き」
康太さんの言葉に、京子さんもうなずいた。超軽量な装備だけで自然に溶け込むウルトラライトハイキングをはじめ、スキー、パックラフト、渓流釣りなどふたりのアウトドアアクティビティは多岐にわたる。とくに海釣りへご執心なのは京子さんのほうだ。
「最近だとアジやカサゴが釣れたかな。私は愛媛県の小さな島で生まれましたが、瀬戸内海と太平洋はまったく別物。魚も、波も、日差しも違うから、太平洋がこんなに楽しいなんて知らんかった」

歩いて、釣って、札所で参拝
生活に寄り添うアウトドアを体験すべく、高橋夫妻に身近なフィールドを案内してもらえることになった。種崎千松公園に車を停め、浦戸湾を海沿いにハイク。藩政時代に植えられた松林が広がり、キャンプ場にはテント泊をする外国人お遍路さんがいた。

「魚おるかな?」
釣り好きの京子さんは魚探しに余念がない。道が行き止まりになったと思ったら、対岸には渡船で行けるという。浦戸大橋が架かる前から、市民やお遍路さんの足を支えてきた。四国八十八ヶ所の道中でも唯一となる「海の遍路道」だ。

対岸に渡ったら、新川川沿いを歩き、「酔鯨酒造 SUIGEI STORE 長浜蔵」など老舗が並ぶ通りを過ぎて、長宗我部元親ゆかりの三十三番札所雪蹊寺に到着する。でも、その前に魚影を見かけたからには、釣り竿を振らずにはいられない。康太さんは言う。
「こうやって気負わずに自然で遊べるのが高知の醍醐味。『OYOT cyclery / hair』みたいな仲間もいますし、生活の一部としてアウトドアを楽しむ人が高知に増えていったら、ますます楽しい土地になっていくと思います」


KOCHI Guide
十二
高知県香美市土佐山田町2431-30
TEL:0887-52-8910
酔鯨酒造 SUIGEI STORE 長浜蔵
高知県高知市長浜566-1
TEL:088-821-8003
雪蹊寺
高知県高知市長浜857-3
TEL:088-837-2233
OYOT cyclery / hair
高知県香美市土佐山田町2431-30 一二の用品店内
高橋 康太、京子 / Kota, Kyoko Takahashi
康太さんが高知県、京子さんが愛媛県出身。2017年にガレージメーカー「一二」を設立。「モンペズボン」を中心に、旅と日常をボーダレスにつなぐ自由な道具を提案。アトリエを構える香美市で「一二の用品店」を営んでいる。