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ご飯をおいしく食べる〜やま森カフェが伝える「母の味」

地元で手に入る旬の食材を使い、心を込めて作られた料理をゆっくりと味わって食べる—毎日の食事は、私たちの元気の源であり、心持ち次第で何よりもぜいたくな時間にもなるだろう。そんな暮らしの中にある楽しみを改めて伝えてくれるのが […]

04/06/2012

地元で手に入る旬の食材を使い、心を込めて作られた料理をゆっくりと味わって食べる—毎日の食事は、私たちの元気の源であり、心持ち次第で何よりもぜいたくな時間にもなるだろう。そんな暮らしの中にある楽しみを改めて伝えてくれるのが、この春にオープンする「やま森カフェ」だ。
国立市谷保の甲州街道沿いに佇む、旧家の敷地を活用した地域コミュニティスペース「やぼろじ」。その一角にある古民家に、「お母さんの味」を楽しめるカフェが誕生した。運営を手掛けるのは、「母めしで社会を元気に」をコンセプトに掲げる株式会社やまもり。2月下旬からプレオープンという形で予約制の営業を続け、地元の人達を始めとした多くのお客さん達を迎え入れてきた。
「ここで食べて『また来てね』だけではなく、『こういう食事がいいよね』というメッセージを伝える場でありたい。」と話してくれたのは店長の大久保奈々さん。
「どんな食材を使っているのか、出汁はどうとっているのか、ご飯はどうやって炊くのか…お客さんからそういう質問をされるのが、私たちもすごく嬉しい。ここで出しているようなご飯をみんな自分でも作りたいんだと思う。」(大久保さん)
取材に訪れた日も、すぐ裏手にある畑から朝採ってきたばかりの菜花が調理され、つやのある豊かな緑とみずみずしい歯ごたえが私たちを楽しませてくれた。素朴な家庭料理でありながら、1品1品の料理に込められた丁寧さやこだわりもよく伝わってくる。こういう食事をしていると、いつもより少し料理に手をかけてみたり、食材選びに気を遣ってみたり…確かに自分でもおいしいものを作ってみたくなるのだ。
この「母めし」と、古民家の広間を活用したカフェスペースの雰囲気が実によくマッチしている。室内の木部は年月を経て落ち着いた風合いへと変わり、部屋のあちこちに飾られている調度品や家具を眺めているだけでも楽しい。目の前に広がる庭は常に表情を変え、季節の移ろいを感じながら、誰もがゆったりと食事を楽しむことができる。座卓と椅子・テーブル席、両方があるのも過ごしやすさのポイントだろう。
大久保さんがこんなエピソードを話してくれた。
「ふきのとうは山に行かなくても庭があれば出てくる。ある時、ここの庭に生えてきたふきのとうをふき味噌にして振る舞ったら、お客さんが『うちも昔は庭に(ふきのとうが)出てたのよ』と懐かしそうに話してくださったのが印象的だった。伝統だけが良いわけではないけれど、古き良きものを発掘して伝えていくことをこれからも続けていきたい。」
こうした「昔の良さを今の暮らしに伝えていく」という活動は、母体となるコミュニティスペース「やぼろじ」の目指す方向とも一致している。やぼろじ代表、WAKUWORKS一級建築士事務所の和久倫也さんは、カフェが毎日営業することで、やぼろじがより日常生活に根付いた場所になると期待を寄せている。
「イベントはどうしても非日常的な感じがあるけれど、こういうカフェが日常生活の中にあるというのはとてもいい。ご飯を食べるというのは人間の原点であり、コミュニケーションの原点でもある。ここが、地域の人達の拠点、街の中のゆるやかな居場所になればいいなと思う。このやま森カフェがあることで、普段仕事では出会えないような人達とのつながりも日々感じる事ができる。」
カフェスペースのすぐ横に事務所を構える和久さんや、裏手に工房を持つ地元の大工さん達も、やま森カフェのまかない飯を食べて日々仕事に励んでいる。忙しい中でもこんなに味わい深い食事ができるのは羨ましい限りだ。
もともと、 このやぼろじプロジェクトは和久さんと地域の人達との関わりから自然な流れで発展してきた。
「地域の人達と一緒に畑をやって、この土地があることが偶然分かり、オーナーさんとも知り合うことができた。荒れ果てていたこの家を見て、『うまく作り直したら面白くなるんじゃないか』と思い、取り組んでいるうちに様々なアイディアが浮かんできた。僕の地元がここ谷保であるというのも大きいと思う。東京の西側にある、山奥の田舎でも、都心でもない多摩地域。大きな庭や木陰、畑がすぐ近くにあって、身近な自然がほどほどに残っている。そんな郊外にずっと暮らしてきた中での体験が、僕の中に刷り込まれている。」(和久さん)
ガーデンパーティやレコード鑑賞会などのイベントを継続して行い、コミュニティの輪を広げてきたやぼろじ。今回新たに「やま森カフェ」ができたことで、より開かれた地域の拠点としてこれからも多くの人達に愛されていくに違いない。
「昔は、地元の大工さんが家を直してくれたり、すぐ近くで農家さんが野菜を育てていたり、顔の見えるコミュニケーションが主体だった。でも今は見えないことが多い。情報は凄く溢れていて、便利でもあるけれど、実際に自分達が何を欲しているのか、中身が見えないまま物事が進んでいってしまう。だから、身の回りのことを、自分で身をもって体感できる…そういう昔のシンプルな暮らしの良さを伝えていけたら。昔をただそのままトレースするのではなく、昔の良いところから学びながら、これからの新しい暮らし方をこのやぼろじで模索し続けていきたい。」(和久さん)
やま森カフェ店長の大久保さんも「庭仕事の手伝いに来るボランティアさん達が、ここでお茶をしてくれる時にすごく喜びを感じる。このカフェを色々な人が集う場所にしていきたい。」と話す。
四季折々の花が咲いたり、芽が出てきたり…日々変わっていく庭の様子を眺めながら、このやま森カフェで心のこもったおいしい料理をぜひ多くの人に楽しんでほしい。
やま森カフェ(2012年4月7日オープン)
http://www.moricafe.hahameshi.co.jp/
平日 11:30〜16:00 (11:30〜 ランチ / 14:00〜 カフェ)
土日祝 11:30〜20:00 (11:30〜 ランチ / 14:00〜 カフェ / 17:00〜 ディナー)
定休日:木曜日
(2012年4月時点) ※最新の営業時間やイベント情報などはオフィシャルサイトでご確認下さい。
やぼろじ
http://www.yabology.com/
アクセス:
東京都国立市谷保5119
JR南武線「谷保駅」北口より徒歩5分(甲州街道沿い)