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SOIL Nagatoyumoto

星空を抱く山間に、6階建てのホテルがきらきらとそびえる。音信川に架かる橋を渡り、暖簾をくぐると、中はさわやかな風が吹いていた。歴史ある温泉郷の風景を更新する、新しい旅の目的地について。

03/31/2025

再燃する温泉郷の新しい風


「おお、どこから来たんや? 六角堂のあったところに泊まっとるんか? 新しい人がよう来るのはええことや」

長門湯本に着いてすぐ、「恩湯」に浸かっていると老父に声をかけられた。近所に暮らす彼の声がうわずっていたのは神秘の湯のご利益か、それとも新たな場への歓迎の意か。この2軒隣にあるホテルが、かつてその名で親しまれていたらしい。

明治期に創業した「旅館 六角堂」は、この町を象徴する存在だった。音信川の畔、温泉の中心部という好立地。大浴場や宴席など、昭和期には行楽シーズンともなれば連日のようににぎわっていたが、後継者不在を理由に、2023年に惜しまれつつ閉館した。

それが2025年3月、「SOIL Nagatoyumoto」として装い新たに生まれ変わった。全24の客室はいずれもリバービュー。“間”をテーマに設計された空間は、窓の景色とつながるように境界があいまいで、たおやかな川や山に意識を重ねると、ついまどろんでしまう。

さらに複合施設として、薪窯ピザのカフェ・レストラン「TARU」やアクティビティセンター、サウナを併設する。特にアクティビティはプログラムが約15もある充実ぶり。それも深川萩訪問や塩づくり体験、林業士ツアーなど、長門湯本で当たり前にある“日常”を打ち出したものばかりだ。

日常……嗚呼、ずいぶん遠くに来たけれど、そんな小さな営みに触れたいから、こうして旅に出たんだった。最上階のサウナで蒸され、夜景を眼下に再びまどろみながら、恩湯での出会いを反芻する。確かな旅の感触。でも、たった一泊ではあまりに断片的。

明日は温泉郷をどうそぞろ歩きしようか。音信川を見下ろすと、水面が照り返していた。再び灯った町の象徴たる輝きを。

音信川の両岸に広がる長門湯本温泉街。地元の子どもたちが川辺で遊ぶ声に、この地の暮らしを感じる。
長門湯本温泉郷の人々の中心にある「恩湯」。SOIL nagatoyumoto宿泊者限定の早朝入浴プランも。
そぞろ歩きのお供には、「界 長門」に併設された「あけぼのカフェ」の自家製どら焼きを。山口県の伝統果実、ゆずきちのフレーバーがおすすめ。
山口県名物の瓦そばを食べるなら、Soil nagatoyumotoから川上へ向かった先にある「瓦そば柳屋」へ。地元の人も唸るひと皿に出会える。

SOIL Nagatoyumoto
老舗旅館を事業継承して開業した複合施設。株式会社山口フィナンシャルグループとの合弁事業として、東京の日本橋やしまなみ海道の瀬戸田などで“ソフトデベロッパー”として注目を集めるStapleが企画・運営を行う。客室はツインルームを中心に、スイートルームやドミトリータイプも完備。大浴場を廃止し、ゲストは恩湯に無料で入り放題とするなど、長門湯本の町と連携するように設計された。地域の豊かな自然環境に根ざした、「自然育」「食育」「湯育」の3つをテーマに掲げる。 
https://soilis.co/nagatoyumoto/ 

text | Yosuke Uchida photography | Evan Lin special thanks | Nagato Yumoto Onsen machi Co., Ltd.
Nagato City Tourism Policy Division