資本主義国であるかぎり、景気と建築は密接な関係がある。好況になれば開発が始まり建設ラッシュとなり、不況になれば停滞する。であるならば、2002年に通貨危機が起き、経済破綻したこの国の建築家たちはさぞかし大変だったことだろう。しかし、「だからこそ、生まれるアイデアがある」と力強く語るのは、建築チーム「a77」のガスタヴォ・ディエグエスとルーカス・ジラルディのふたりだ。
彼らがガイドするツアーは、深刻な危機からようやく抜けだし、復興の途上にあるブエノスアイレスを彼らなりの視点で捉えなおすもの。そのスタートとなった彼らのオフィスからして、「建築家のアトリエ」と聞いて想像するものとは大きく違っていた。かつてセメント工場だったウェアハウスを転用した巨大空間に並ぶのは、精緻なプレゼン用の建築模型ではなく、ガラクタともおもちゃともともつかぬ不思議なオブジェばかり。彼らが「パフォーマンス・アーキテクチャー」と呼ぶそれらの作品群は、「ただビルを建てるだけの存在から脱して、建築のありかたそのものを考えなおし、社会につながる建築」だという。
「危機以来、多くの人が新しい住まいかた、働きかたを模索しているから、建築もそうしたライフスタイルに合わせた発想の転換が求められている」。a77は建築家としてビルを建てる代わりに、そうしたアイデアそのものをアート作品として創造する。今年5月にはニューヨーク「MOMA PS1」の屋上に中古キャラバンを利用したアーティストのためのコロニーを提案した。いま、ブエノスアイレスの街にも、こうしたリサイクルやDIYの考えかたが広がってきているという。不景気はビル建設を減らすが、アイデアは増やす。彼らの試みは、まだまだ続きそうだ。
This story originally appeared in PAPERSKY’s ARGENTINA | ART Issue (no.43)
経済危機がもたらした「社会とつながる建築」
資本主義国であるかぎり、景気と建築は密接な関係がある。好況になれば開発が始まり建設ラッシュとなり、不況になれば停滞する。であるならば、2002年に通貨危機が起き、経済破綻したこの国の建築家たちはさぞかし大変だったことだろ […]
02/13/2014