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Dashi series 01

昆布だし

出汁は優れものだ。和食の土台をつくる旨味の源である出汁は、乾燥させただし昆布、鰹節、干し椎茸、いりこ(煮干し)などをほぼ素材のままの形で使って取るのが基本的なかたちだ。これから4回にわたって出汁をテーマとしたシリーズ記事をお届けし、4種の出汁について語ってみたい。さあ、出汁の世界に飛び込もう。

06/29/2022

風味豊かで繊細な出汁の味を生み出しているのは、グルタミン酸だ。魚介類、肉類や一部の野菜に豊富に含まれている物質である。出汁は通常、昆布か鰹節、もしくはその二つを合わせて取ることが多いが、干し椎茸やいりこから取ることもある。また、これら以外にも、グルタミン酸を豊富に含むものから出汁を取ることができる。

シリーズ1回目となる今回は、昆布だしと、昆布の一大産地である北海道について紹介しよう。

出汁はワインと同じく、収穫された時期と場所によって風味が異なるが、昆布だしも例外ではない。日本で収穫される昆布の95%以上が北海道産で、道内にある昆布の各名産地から、それぞれの条件に適した種類の昆布が出荷されている。

出汁に使われる昆布には大きく分けて4種類あり、グルタミン酸とその他アミノ酸の含有量により、微妙に味わいが異なる。道北産の「利尻昆布」は、味わいの上品さで知られている。北海道の最北端から出荷される「羅臼昆布」は幅広で薄い形状をしており、高級料理店でも使用されている昆布だ。南端で採取される「日高昆布」は色が濃くて柔らかく、すっきりとした味わい。そして、最南端から出荷される「真昆布」は澄みきった出汁が取れる昆布で、最も一般的に使用されているものだ。

作る料理の出汁にふさわしい昆布を選ぶためには、こうした産地の違いに加え、昆布育成法、等級、加工方法などの要素を考慮することが重要になる。それぞれの要素ひとつひとつによって、出汁の風味が微妙に変わってくるからだ。

自然の中で成長する天然昆布は、慎重に見守り続けた上で、2年以上かけ丁寧に育てられ、収穫する際にも高度な技術が必要とされるため、価格が最も高い昆布だ。養殖の昆布も同じ年数をかけて育成するが、天然昆布より生育環境を管理できるので、色や厚みを均一に保ちやすい。人工授精させた種苗は1年以内に成熟し、あらゆる種類の昆布の中で、シンプルな味わいになる。天然昆布はいちばん人気が高いが、それぞれが作り出したい味わいによって、どの昆布がよりふさわしいかは異なってくる。

昆布の等級は厚み、幅、重さすべてが理想的である一等から、味は良いが見た目が少し劣る昆布の四等までの段階に区分される。加工法については、昆布を包装して販売する前にどの程度のばしているか、どのくらいの長さに切断されているかを基準として区分されている。熟練の料理人や板前は、自分の料理の味を最大限に高める昆布はどれなのかを見極めることができ、多種多様な昆布の中から最も適切な昆布を選びぬく。

昆布の違いを見極められるようになるには、簡単な方法として、まず昆布を何種かそろえ、沸かした熱湯の中に一種類ずつ浸し、何の調味料も入れず順番に味わってみてほしい。味わううちに、だんだんと微妙な味の違いに気づけるようになるはずだ。そうなれば、あなたのこれまでの人生とはひと味違うものになっていくだろう。